第十九話 日本対合衆国 その4
それでは、続きを話します。
日本では陸海軍合同航空隊の設立により、陸海軍の人材交流は活発になり、陸軍と海軍の垣根は低くなりました。
そして、日本海軍の新型戦艦「大和型」をどのような戦艦とするかの議論に陸軍も加わることになりました。
なぜなら、「大和型」を海軍が最初構想していたように艦隊決戦のためだけの戦艦として建造することはできなくなったからです。
合同航空隊により陸海軍の交流が活発になると、陸海軍の共同作戦の研究も活発に行われるようになりました。
遠隔地への渡洋進行作戦を想定した場合、普段からの陸海軍の協力が必要になるからです。
日本の勢力範囲から遠隔地に強襲上陸作戦をする場合には、上陸部隊として海軍陸戦隊と陸軍師団が密接に協力することになりました。
上陸支援として艦砲射撃と航空攻撃が必要となります。
航空攻撃は海軍の空母機動部隊を投入するとして、その護衛のための戦艦も必要となります。
しかし、空母機動部隊に随伴できる高速戦艦は金剛型戦艦四隻しかありませんでした。
金剛型は艦齢が長く近代化改装しているものの船体は経年劣化しており、現役でいられる期間が短いことは明らかでした。
大和型は当初の計画では最高速力二十七ノットの中速戦艦でした。
主砲が四十六センチ砲なのは戦艦との砲撃戦でも地上への艦砲射撃でも高性能でしたが、速力は空母機動部隊と随伴するのは不安がありました。
それで、速力三十ノットとすることになりましたが、それだと燃料の消費量が大きくなるので航続距離が短くなるとの意見もありました。
しかし、遠隔地への渡洋進行作戦をするということは多数の補給艦も同行することになるので、艦隊と同行可能で洋上補給可能な高速給油艦を建造すればよいということになりました。
それにより、それまで軽視されていた補給艦にも予算が向けられるようになり、給油艦の他にも高速の給糧艦も多数建造されるようになりました。
さて、大和型の主砲は計画通り四十六センチ砲として建造されることになりましたが、それを公表するか秘匿するかが議論されました。
公表することで合衆国に対する「抑止力」として機能することを期待する考えと、秘匿することで四十センチ砲戦艦しかない合衆国海軍に対する「戦場における奇襲効果」を期待する考えがありました。
総合戦略研究所での研究結果により、公表することになりました。
その理由は大和型に対抗するための四十六センチ砲戦艦を合衆国に建造させることで、合衆国に負担をかけることが目的でした。
その詳細については次回にお話します。
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