第十七話 日本対合衆国 その2
はい、前回の続きを話させていただきます。
合衆国陸軍には急降下爆撃機を重視する派閥、合衆国海軍には空母を重視する派閥があることは前回最後に話しました。
その他に合衆国陸軍には戦略爆撃機を重視する派閥もありました。
しかし、この派閥は合衆国では主流にはなりませんでした。
戦略爆撃とは敵国の工業地帯や都市部を爆撃することで、敵国の国力その物を低下させることで戦争に勝利する手段です。
しかし、合衆国の第一の仮想敵国は南部連合国です。
合衆国から見れば南部連合国は本来は自分の領土であり、いずれ再併合するのが当然と考えられていました。
南部連合国に対して戦略爆撃をすることは、「本来の合衆国領土」を傷つけることであると、政治家や一般市民で考える人も多かったのです。
これに便乗したのが合衆国陸軍の急降下爆撃を重視する派閥でした。
急降下爆撃重視派は「急降下爆撃ならば戦略爆撃と違い軍事施設だけを狙ってピンポイント爆撃ができます」と強力にアピールしたのです。
それに対して合衆国海軍の空母重視派も協力しました。
もともと合衆国海軍空母航空隊では、敵艦隊の空母の飛行甲板を破壊して空母の機能を失わせるために急降下爆撃を重視しており、このアピールに協力することは自身にも有利になると考えたのでした。
陸軍航空隊の戦略爆撃機重視派は、陸軍から指揮が独立した陸軍戦略航空軍の設立を考えており、最終的には独立した「空軍」となることを考えていました。
しかし、陸軍の主流派であり大多数を占める歩兵部隊や戦車部隊はそれに反対していました。
陸軍航空隊が陸軍の指揮下にあれば近接航空支援が戦場で必要になれば、それを「命令」するだけで済みました。
しかし、陸軍航空隊が独立した空軍となれば、近接航空支援が戦場で必要な場合は、空軍に「要請」するということになり、空軍が独自の戦略判断でそれを断るということもありえるようになるのです。
陸軍の主流派は陸軍航空隊が独立した空軍になることに反対し、海軍もそれに同調しました。
海軍が同調した理由は、陸軍航空隊が独立した空軍となると、陸軍と海軍で意見が対立した場合、空軍が陸軍の味方になる可能性が高いので、1対2で不利になるのを避けようとしたのでした。
結局、合衆国では空軍は設立されず。
陸軍と海軍がそれぞれ航空隊を保有しました。
爆撃機については双発爆撃機で充分とされたので、四発爆撃機は計画のみで開発されませんでした。
この合衆国の航空戦力についての動きは、日本の航空戦力についても影響を与えました。
それについては次回に話します。
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