第十三話 ドイツ対イギリス その5
前回の話の続きをさせていただきます。
ドイツ海軍機動部隊はどこにいたのか?
それは、合衆国本土とイギリス本土を結ぶ大西洋上の海上交通線でした。
ドイツ海軍機動部隊は通商破壊を本当の作戦目的としていたのでした。
では、スカパ・フロー奇襲の機密文書を持っていたドイツ海軍士官は何者だったのか?
もちろん、ドイツ情報部による偽装工作でした。
病死して身寄りの無い遺体を手に入れると、ドイツ海軍士官としての偽の軍籍と経歴を用意したのでした。
そして、偽の機密文書を持った遺体を乗せた飛行機をイギリス本土近海でわざと墜落させパイロットは脱出し待機していた潜水艦に回収され、遺体はイギリス本土に漂着するようにしたのでした。
この偽装工作については戦後数十年が経過してから真相が明らかにされ、偽装工作に使われた遺体の人物に対してはドイツ政府から公式に表彰されています。
さて、ドイツ海軍機動部隊を指揮していたのはレーダー提督でした。
レーダー提督が旗艦とする「グラーフ・ツェッペリン」以下六隻の空母は、日本への「航空機運搬船」としてバラバラに出港、大西洋上のある地点で合流、やはりバラバラに出港していた護衛のための「シャルンホルスト」級巡洋戦艦二隻・駆逐艦数隻も合流しました。
レーダー提督は表向き一度退役したことにしたので事実上の降格人事でしたが、日本海軍で研鑽を積んだ空母機動部隊を指揮できることで不満はなかったと言われています。
レーダー提督の目標は合衆国本土からイギリス本土を航行している輸送船団でした。
合衆国からもたらされた物資は豊富で複数の船団をイギリスは組んでいました。
船団一つにつき一隻の正規空母が護衛としてついていました。
後には船団護衛を専門とする護衛空母が多数建造されることになるのですが、この頃にはまだありませんでした。
つまりドイツ海軍はイギリス海軍に対して空母の数が六対一の戦いを繰り返すことができるようになったのです。
ドイツ海軍空母機動部隊の初陣は一方的でした。
空母六隻の艦載機が一斉に襲いかかり、もともと搭載数が少ないイギリス空母の戦闘機は一蹴され、日本海軍の物をドイツでライセンス生産された航空魚雷により、イギリス海軍は第二次世界大戦で初めて空母を喪失した海軍となりました。
空母による護衛を失ったイギリス船団は次の空襲に備えて船団の水上艦のあるだけの対空砲・機銃を空に向けましたが、いつまで経っても次の空襲はありませんでした。
次のドイツ海軍による襲撃は海中から来ました。
デーニッツ提督が指揮するドイツ海軍潜水艦艦隊。いわゆるUボートの群れによる襲撃でした。
では、この続きは次回にいたします。
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