第十二話 ドイツ対イギリス その4
はい、皆様。前回の話を続けさせています。
ドイツが秘密裏に空母六隻による機動部隊を設立していることにイギリスは長い間気づきませんでした。
しかし、開戦直前、イギリス沿岸にドイツ海軍士官の遺体が漂着したことで、イギリスは真相をつかみました。
そのドイツ海軍士官は手錠で自身の手首と書類鞄を繋いでおり、書類鞄は厳重に施錠されていました。
書類鞄の中には、ドイツ海軍の空母機動部隊とそれによる作戦計画の書類が入っていたのでした。
ドイツ海軍士官が身につけていた身分証明書からイギリス諜報部が調査すると、該当するドイツ海軍士官はドイツ海軍総司令部勤務で、機密書類を飛行機で輸送中に、洋上で飛行機が墜落したらしく行方不明となっていました。
ドイツ海軍の開戦後の作戦計画を幸運にも手にいれたイギリス上層部は色めき立ちました。
その作戦計画書の内容は次のようでした。
開戦直後に、イギリス海軍の重要な泊地であるスカパ・フローへの空母六隻による奇襲攻撃でした。
スカパ・フローに停泊しているイギリス海軍の軍艦を泊地内で撃沈してしまおうという計画でした。
例え戦艦であっても泊地に停泊している時に攻撃を受ければ無力です。
運が良ければ、一撃でイギリス海軍の主力艦を壊滅できる作戦でした。
ドイツ海軍の作戦を事前に知ることができたイギリス海軍は、罠を仕掛けることにしました。
スカパ・フローに囮として戦艦部隊を集結させ、ドイツ海軍を油断させるために、正規空母はすべて合衆国との船団護衛に派遣しました。
空母を船団護衛に派遣したのは、合衆国では国内世論が戦争への直接参加に反対の声が強く、合衆国からの物資はイギリスが自国の船で輸送して、自国で護衛しなければならなかったからという理由もありました。
合衆国製造の航空機を空母で運んだ方が効率が良いという理由もありました。
スカパ・フローでは、イギリス空軍が防空用の戦闘機と対艦攻撃用の爆撃機を多数集結させ、ドイツ海軍空母機動部隊による空襲を戦闘機で撃退した後、爆撃機で空母を攻撃する計画でした。
罠にドイツ海軍が嵌まれば、イギリス空軍の方が功績が大きくなる作戦でしたが、ドイツ海軍の空母六隻の艦載機の数に対抗するためには、イギリス空軍が主力になるのが当然と判断されました。
そして、開戦となり、ドイツ空母機動部隊がスカパ・フローを奇襲する予定日時が近づくと、スカパ・フローに展開する部隊の緊張は高まっていきました。
しかし、予定日時を過ぎてもスカパ・フロー近海にドイツ空母機動部隊はあらわれませんでした。
ドイツ空母機動部隊はまったく別な場所にいたのでした。
時間になりました。
次回も、よろしくお願いいたします。
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