【ネタが出来た!天才少女と誘拐事件】
前回の続きです。
ようやく犯人の所まで書けました。
___急いで隣町に来た俺は、鷹田さんから貰った地図を頼りに
崎森雛の祖父母が住んでいた家に向かっていた。
公園の裏道は隣町への近道だったらしい。御蔭て随分と早く到着できた。
鷹田さんの情報によれば、祖父母の家はしばらく手入れがされていなかったが、
最近は庭先のゴミや雑草が取り払われたり玄関のドアが開いてたりしてたらしい。
「....この現状証拠から推測するに最近この家に住み始めた人がいる。
それも女性ではなく男性だね。庭先にあったのはソファーなどの粗大ゴミだ。
それを片付けることができるってことは力のある男性ってことだ。」
状況の整理をしている内に祖父母の家に着くことが出来た。
多分この家に崎森雛がいる。だが、おそらく危険な状態にあるだろう。
早く助けないとな。
家についているインターホンを押す。中で音が鳴っているのが聞こえる。
おかしいよな。祖父母が亡くなってしばらく経つのに電気が通っているなんてさ。
「すみませーん!少しお聞きしたいことがあるのですがーー!」
大声を出しているとドアが少し開き、中から男性の声が聞こえてきた。
「....どちら様ですか?」
隙間から見える男性は眼鏡を掛けたオタク風の中年という感じだった。
警戒を強め、ドアから死角になっている左手で警棒を構えておく。
理由はドアが少し開いた瞬間、瞳の端に光るものが見えた。
俺には見慣れている物、ナイフだ。
それもそこいらのホームセンターなどで売っている普通の十徳ナイフだ。
「すみません。最近隣町で行方不明者が出たという噂を聞きまして、
行方不明の少女がこちらで目撃されたと聞いて聞き込みをしているものです。」
「は、はぁ...。」
....行方不明者と聞いた時、男性の目が一瞬だが家の中に向いた。
これではっきりしたな。崎森雛はこの家にいる。この男性に監禁されている。
少し、切り込むか...。
「あ、そういえばぁ...この家って行方不明者の父親が住んでいたって
聞いて来たんですけど、貴方は一体どなたなんですか?」
「ッ!....ぼ、僕が崎森雛ちゃんの父親ですよ!
その僕がこの家に住んでいるのは当たり前です!」
「へぇ?私は崎森雛さんを探しているなんて言っていないですよ?
それに雛さんに父親はいません。この家に住んでいたのはその子の祖父母です。
父親ではありません。」
「ッ!?な、何を馬鹿な!?」
「早くドアを開けろ!そこに崎森雛がいるのは分かっている!大人しくしろ!!」
「......ぅ....ぅうぁぁぁぁーーーーッ!!!」
完全に逃げ道を失った男性は、ドアを乱暴に開き、叫び声を上げながら手に持った
ナイフで攻撃を仕掛けて来る。
「...これで正当防衛成立だな...。」
あらかじめドアの射程距離から出ておき、彼のナイフを警棒で弾く。
態勢を崩した男性の首を警棒で叩く。その衝撃で男性は気絶した。
「これで犯人は取り押さえた。早く崎森雛を助けないと。」
倒れた男性の両手をマフラー拘束し、他の人から見えない所に寝かせておく。
そして開け放たれたドアから家の中へ入る。
静まり返った家の中に俺の足音だけが響き渡る。
「...無事だといいんだが...。崎森雛!無事か!?居たら返事をしてくれッ!」
...返事がない。ただの屍のようだ...なんて言ってる場合じゃねぇ!
「オイ!居ねぇのか!?返事しろッ!」
やばい、推理外したか?外したのか俺!?いや、焦るな。絶対此処に居る。
あの男の言い方からして、一番生活感のある部屋にいるはずだ。
「この家の構造からして、人がもっとも生活しやすい部屋は....。」
玄関から見て左手にある居間。そこはこの家の中で一番陽の光が入る場所にある。
案の定、居間の入り口には厳重に南京錠で鍵がかけられていた。
「この程度なら壊せるな....せーのっ!」
警棒で南京錠の所を思いっ切り叩く。
それを数回くり返すと、南京錠は壊れて床に転がる。
急いで襖を開け、中を確認する。
そこには、ロープで両手を柱に固定され猿轡をされている少女、崎森雛が居た。
「崎森雛!オイ!聞こえるか!?...意識がない。顔色も悪いし、まさか...!」
急いで彼女の傍に駆け寄り、まず生きているかを確認する。
心臓は動いているし、呼吸も異常はない。だが、顔色が悪い。
原因は多分、栄養失調だろう。
この部屋には何もない。唯一あるものと言えばテーブルの上の鍵と
電気ヒーターくらいだ。
食べ物類が見当たらない。おそらく3日間何も食べていないのだろう。
先ほどちらりと見えた厨房にはカップラーメンのゴミが散乱していた。
箸の数からして全てあの男が食べたものなのだろう。
その他のゴミも見当たらなかった、彼女は何も食べていないのは明らかだ。
早く救急車と警察を呼ぶべきだろう。
「...とりあえず、ロープは外しておこう。可哀想だ。」
ロープを外した手首にはロープの痛々しい紫色の痕がくっきりと残っていた。
「....ッ!犯罪ってのは、どうしてこんな痛々しい痕を残すんだろうな...!」
...本当に、犯罪ってのは許せないんだよ!何時だって、傷を残すんだ。
心にも体にも、一生消えない傷をさ!だから俺は!
....熱くなり過ぎた、落ち着こう...。
「...警察に連絡しよう。」
___その日、横張高校行方不明者事件は解決を迎えた。
犯人の男『中幡俊作』は不法侵入と窃盗、未成年者略取・誘拐の罪で逮捕された。
判決は1カ月後になるらしい。
それから俺は警察の方で色々と説明をして、
やっとのことで家路に着けたのは空が茜色に染まり始めた頃だった。
「....まぁ、一日で解決できたから良かったかな。
とりま、プリンでも買って帰りますか。」
そういえば、何味のプリンを買えばいいのかを聞いていなかったな。
茜里に何プリンを買えばいいのか電話をかけようと携帯を取り出した時、
あちらから着信が来た。
『メルト 溶けてしまいs』
ピッ
「はいは~い、どうした?茜里。」
『ん?その感じじゃ事件解決したの?』
「あぁ、今さっき警察の事情聴取が終わったところさ。」
『な~んだ、案外速かったね。』
「ま、俺にかかれば簡単な事件だったのさ。」
『流石は茂だね。』
「おうよ。そうだ、今から帰るんだけど、プリン何味がいい?」
『ん~...今日は普通のがいいかなぁ。』
「分かった。カスタードな。」
『うん。お願い。』
「あぁ、じゃあな。」
と、通話を切ろうとしたとき、茜里がこういった。
『あ!ねぇ茂!』
「ん?何さ。」
『茂さぁ、今朝小説のネタで悩んでたでしょ?』
「あぁ、まぁ、悩んではいたな。」
『だったらさ!今回の事件を題材に書いてみれば?』
「....事件を?」
『うん!それならネタに困ったりはしないでしょ?』
茜里の言うことはもっともだ。自分で見て、聞いて、触ったものなら
ネタとして最高だ。
だが...
「...それは難しいんだ。」
『どうして?それが一番楽じゃない?』
「情報漏洩はマズイ。それにプライバシーの侵害にもなってしまう。」
これは事件だ。警察沙汰のものをネットに流すなんて犯罪になるかもしれない。
それはもの凄く面倒だ。
『...そっかぁ、なら仕方ないか。...でもさぁ....。』
「ん?」
『それを元手にして全く新しいものを書いちゃえば問題はないよね?』
「ッ!」
....そうか、自分の世界での解釈でこの事件を語れば全く別の作品に仕上がるかも。
全くの盲点だった。
「そうか、それならいけるかも!」
『でしょう!?じゃ、早速帰ったら書き始めよう!』
「応!夕飯の材料も買っておくよ!」
『うん!今日は徹夜だね!』
「...頑張ります!」
こうして、霧本茂の探偵兼小説家への物語はその第一歩を踏み出した。
次回もお楽しみに。




