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腐女子の悪役令嬢は復讐を果たせる?  作者: 一条由吏
第1章 寝取られた悪役令嬢
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7. 母とその結果

「あら久しぶりね。元気だった? ご要望通り、連れてきたわよ。仕立て屋さん。下町のお店でよかったのよね……」


 母と顔を合わせて喋るのは、本当に久しぶりである。リオーネがいないため、頻繁に手紙をやりとりして、必要な物を持ってきてもらったり、父に伝言を頼んだりしているけど顔は合わせないようにしていた。流石に1ヶ月も経ったからか、母に憤ったりしなくてすむみたい。


 今までは後宮まで荷物を母が持ってきて、後宮の侍女が居室に運び込んでいたのである。母はそのままゲストハウスへ泊まって行くのが習慣になっている。


 もう覗きに行ったりはしない。その日は王子と連絡がつかないから、よろしくやっているのだろう。


 もちろんワザとそうしているのである。何故なら、早く『婚約破棄』を言い渡されたいからである。こんな蛇の生殺しのような状況は勘弁してほしい。


 今日、連れてきてもらった仕立て屋さんは、ハイエス伯爵家の本性を知る数少ない人物。


 『婚約破棄』を言い渡されたあと、この国を出るにあたって、どうしても挨拶をしておきたかったから……。


 実際には、そんな細かいことは言えないので顔を見るだけなのであるが……出来ればついて来て欲しいって、そう言えればいいのだけれど……


 この店の開店資金を出したのは私なのである。幼いころ、彼の養父を発狂させてしまったお詫びのつもりなのだ。


 まあ、彼の養父が私を誘拐したのだから自業自得といえば、そうなんだけど……彼には罪がないのだから。と、いうよりは黒い噂と同じように養父が誘拐犯だからって理由で放置するなんて出来なかっただけなのである。


 決して彼の幼さが残った顔つきが『ショタ心』を擽ったわけでは……


「お父様は?」


「あのひとはねえ、紡績工場に行ってるわ。あんな碌々お金にならないところに行くよりも領地経営に汗を流してくれればいいのに……」


 この世界には蒸気機関に似た魔力機関という機械があり、魔力を動力源にできる。魔王討伐で有り余るほどの魔力を得た私はそれを利用して、紡績業を始めたのである。既に手回しの機織りの機械が開発されており、それに動力源をつけただけである。


 魔王討伐の報酬として、帝国とロシアーニアから頂いたのがこの土地だ。両国の狭間に位置し、荒野だったため、争いのタネにもなっていない。母には言ってないが名義は私の物で帝国にもロシアーニアにも税金を払わなくていいことになっている。


 軍隊が無いので独立国とは言いがたいが自治権は握っていることになっている。


 機織りの機械は高速で動かすと壊れてしまうので、ゆっくりと比較的高価なレース編みを作っている。余った動力で地下から伏流水をくみ出し、荒野に流している。うっすらだが緑が芽をだしているので10年後くらいには、草原になっているかもしれない。


 レース編みの紡績工場は、なんとか採算は取れているが伯爵家の黒い噂が邪魔で販売ルートを開拓出来ないのが痛い……。


 そこでこの舞踏会を利用して外国へ販路を拡大しようと思っている。ユウヤの側室たちの家族も招待されているようなので好都合なのよね。


 スタンダードな下地に何通りものデザインのレース編みを彼の助手たちが手縫いで縫い付けていく。最後にはガラスビーズを取り付ける。人の感性を錯覚させる一族なのだガラスビーズが悪どいことをして儲けた宝石に見えるに違いない。


 さらにレース編みも高級品に見られれば、注文が殺到するだろう。大抵の女性は『お得』に目がないのだから……


     *


 舞踏会前日、ドレスは出来上がってきた。周囲の評判も上々。きっと贅を極めた逸品にみえていることだろう。だが送られて来ると思っていたメリー皇子からの手紙が来ない。そろそろ、イケメンの求婚者の名前くらい送られてきそうなものなんだけど……


「えっ、なんて言いました?」


「聞こえなかったか。お前の母親が妊娠した。誰の子供かは、わかっているのだろう?」


 ユウヤは嫌な笑みを浮かべる。よっぽどユウヤのほうが悪に見えると思うのだが周囲の反応をみるとそれをネタにこっちが脅すだろうと思われているようだった。


 母とハミルトン王子が手を繋いで目の前にいるというのに、コイツは何を聞いているのだろう……


「えっと、父ですか?」


 一応、ボケてみる。このあとの要求などミエミエだ。明日の舞踏会で私の妊娠が発表され、ユウヤが企画した舞踏会が盛り上がり成功裏に終わる。そして母が産んだ後は私が育てなくてはならないのだろう。


 弟を私が育てることに関しては問題ないが、妊産婦の格好をさせられるのは勘弁してほしい。なによりも、計画が狂ってしまう。流石に経産婦に求婚者は現れないだろう。


 断れば、王子を誑し込んだ一族として処刑が待っていると脅してくるに決まっている。断れないようになっている。


「バカだろう。お前。」


 バカ呼ばわりは無いと思うんだけど……。知らないフリをするしか無いじゃないか。切り抜けられないだろうけど……


「すまない。何と言ってお詫びすればいいか。」


 突然、ハミルトン王子が声をあげる。詫びるつもりがあるなら黙ってくれればいいのに……。目の前で肯定されてしまっては知らないフリができないじゃない。


「なんだ。反応が薄いな。もっと反応しろよ。泣き喚いたりしないのか? 詰め寄ったりしないのか? お母さんを殴ったりしないのか? つまらんぞ。つまらん。」


 何を期待しているんだこの男は、これは娯楽じゃねーって……。ユウヤは無理やり、了承を取っていくとあっさりと解放してくれた。

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