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腐女子の悪役令嬢は復讐を果たせる?  作者: 一条由吏
第6章 悪役令嬢の戦い
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9. 善良令嬢とその愛

「あっ……違うの。」


 即座に否定されるが思わず涙が零れてしまった。また尽くしても裏切られるとは……。ハイエス一族の呪いを受けない彼女なら大丈夫…だ…と…思ったのに……。


「いいのよ。ここは後宮だもの。自分の幸せを掴む最後の砦だものね……援助を受ける条件がそれだったの?」


 私は最後の望みをかけて恐る恐る聞いてみる。


「それもあるけど……ごめんなさい。もう少し話を聞いて。」


 あるんだ……。涙腺がぶっ壊れてしまったごとく、止めようと思っても止まらなくなってしまった。メリーも何事かと乗り出してきている。


「……教えてもらった手技を陛下に使おうと……思うの……ふたりで……」


 万が一、ゴディバチョフが彼女に興味を持ってしまった場合や彼女に好きな男性が出来た場合のことを考えて、彼女にはレズり気味に手技を身体へ覚えこませている。料理の腕前とは違い私の弟子たちの中ではピカイチのモノ覚えの良さである。


 ふ……ふたり……って!!


 思わず、涙が引っ込んでしまった……


 メリーも違う意味で前のめりになっている……興奮しすぎだって!


「私は、伽を命じられたらそれで援助の条件が揃うの。行為の有無は、条件の中には入っていないのよ。だから、今夜の伽を命じて。私の居室に渡ってきて……行為はアレクサンドラとお願いします……」


 でも……その場合だと……世間的には陛下のお手つきとなってしまう……それが何年も続くようだったら……石女的な扱いを受ける可能性だってあるのに……。


「ティナはそれでいいの? 世間の目は厳しいのよ……」


「いいわよ。『勇者』様が幸せにならなくて、他の誰が幸せになるっていうのよ。もちろん、私も幸せになるわ。何年か後に私の好きな男性に下賜してくれればいいの……。なんか適当な理由をでっち上げてもいいし……その人へ褒美を与えるタイミングでもいい……か…ら………ダメ?」


 彼女にも好きな人が居るということだろう……。誰なんだろう……私がロシアーニア国の後宮に入るまでは密接に連絡を取り合っていたけど……ここ数ヶ月の間に彼女に好きな人ができたらしい……。


 陛下から下賜された側室となれば無碍な扱いもできない……世間的には石女と思われているとしても、全く手を出さずに放ったらかしなんていうこともないだろう……。


 彼女はこういう悪巧みが得意なのだ。若干世間とはズレているものの、これまで幾度と無く成功してきた……。


 しかも、彼女には彼女の一族のフィルターがあるのだ。側室として陛下から下賜されるなんて無碍な扱いをされれば……世間的にも一身に同情を集めるだろう……。


 裏で私が糸を操っているとか言われそうだけど……それこそ今更だ。その程度の悪評なんて屁でもない……。


「私からもお願い……メリー……そうしてあげて……。」


「でも……それだと……アレクが何か言われることになる。」


 メリーも同じ結論に辿りついたらしい。


「大丈夫よ。その時は私は幸せを謳歌しているはずだもの……そうでしょ?」


「もちろんだ……そうでなくては困る。アレクが私の子供を産み、名実共に、帝国の生母として君臨する……そういう条件ならば、そなたの望みを叶えてやる。それでいいか?」


「もちろんです。一番大好きなのはアレックス様ですから……」


 そう言いながら、ティナはこちらにウインクしてくる。


「もう……そんなことを言って……ワザとでしょ。あんな順番で言って……思わず泣いちゃったじゃない……変なところでイタズラをしないで頂戴よね。」


 私は、零れてしまった涙を拭いつつ、彼女に笑いかける。彼女は時折にそういった悪意ともつかないイタズラを仕掛けてくるのである。


「ゴメンなさい。アレくらいで泣くとは思わなくて……悪意じゃないのよ……愛よ。愛。」


 まあ確かに以前の私なら少しふくれっつらをしたくらいで泣くなんてことは無かっただろう。しかし、ここ数ヶ月で余りにもいろんなことがあった……。悪意と愛じゃ1文字違っても大きく違うのよ。全くもう……。


「貴女たちも、お願い……今の話は内緒で……陛下が彼女を指名したって……喧伝してあげてくれるかな……。」


 私は周囲に居た、親『勇者』系の側室たちに頭を下げる。


 これで保守派から一定理解が得られるに違いない。親ロシアーニア系貴族たちは、こぞって噂してくれるだろうし、溜飲を下げるだろう。それで空気抜きになれば十分だ。


「わたくしも……」


 親『勇者』系の側室が恐る恐るなにかを言いかける。


「ダメよ。貴女たちはダメ。貴女たちは、メリーの子供を産むことに協力して頂戴。もちろん、子供が産まれなかったときは、同じように下賜してもらえばいいけど……。」


 メリーなら妊娠中や生理中は我慢してくれる。と、思うけれど……陛下をそういう意味で我慢させるなんていう後宮なら後宮の意味がないわよね。そのくらいのことは、初めから覚悟できているもの……。


 この世界の妊娠中に行為が可能かどうかわからないし、生理中なら行為が可能だろうし、手技を使えば欲望を満足させられる。と、思ってはいるけど……、私の生理って重いのよね。


 下手をすると動けなくなってしまうくらい……ショウコさんが『知識』スキルでピルや鎮痛剤を生成してくれなかったら、完全に足手まといだったわ。


「違うんです。わたくしは……わたくしたちは……ご挨拶のときにも申し上げましたが『勇者』さまに一生添い遂げるつもりでここに来ました。アレクサンドラ様が手伝ってほしいのなら、喜んでお手伝いをさせて頂きます。だから、下賜なんて言わないでください。侍女的な扱いで構わないので一生お傍に置いてください……」


 うんうん。確かに聞いたけどさ……そんなこと本気で考えているとは……思わないじゃん……。


「なんか……アレクの側室みたいだね……」


 メリーが、ぼそりと呟く。


「ごめんなさい。勘違いしてしまいましたわ。それで何を仰りたいの?」


 なんか身の置き所が無い……早く話を終わらせたい……。思わず早口で捲くし立ててしまう……。


「その……手技を……わたくしたちにも……教えて頂けないでしょうか?」


 思わずズッコケそうになってしまう。でも、それを彼女たちに教えてしまったら……私の存在価値が……。


「それって……どういう意味?」


「それが無くては、アレクサンドラ様の代わりは勤まらないと思うんです。」


 フザケでいるような内容だが顔は真剣そのものだ。


「代わりって……そこまで深刻に考えなくっても……ねえ。メリー無くても大丈夫…よ…ね?」


 隣のメリーの顔色が優れない……ま、まさか……。


「たぶん……無理。」


 無情にもメリーに首を振られてしまう。なんてこと……今までメリーに仕込んだことが裏目に出てしまっている。メリーにとっては、手技は行為の一部みたい……それが無くてはできないくらいとは……。


「……わかりました。今夜の伽は講習会にしましょう。ティナも手伝ってね……。」


 思い切って親『勇者』系側室たちに向かって言う。側室たちの顔色が明るくなって……そして赤くなっていく……。


 まあ、それは分かるんだけどさ。メリーの顔色も明るくなって……そして瞳が潤んでくるってどういうことよ……。


 きっと、想像しているんだろうな。


 そこらじゅうから延びる20本の手で触られている自分を……。

さあ最後はお待ちかねのあのコーナー……エピローグですね。

R18無でどこまで描写できるか怪しいけれど(笑)


軽めで短めでもいいから挑戦してみます。


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