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腐女子の悪役令嬢は復讐を果たせる?  作者: 一条由吏
第6章 悪役令嬢の戦い
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7. 悪役令嬢VS悪役令嬢

 宰相ドトーリーの話では連合国家である帝国の貴族は、保守と革新という2つの派閥に分かれているという。


 建国当初から居る生粋の帝国貴族と古くからの連合国と密接に繋がっているのが保守派、魔王討伐で疲弊しきった国に無利息の資金供与と引き換えに連合国家の一部になった国と密接に繋がっているのが革新派という構造になっているらしい。


 特に革新派に繋がる国々は人族以外の国が多く、ほとんどの貴族たちは繋がりを持とうとしなかったことから、連合国家に引き入れる際に多大な協力をした商人たちが新興貴族として成り上がったものが多い。


 その大部分が平民出身であったことから保守派貴族からは蔑んだ存在と一段低い存在と見られているらしい。しかし、帝国への貢献度という点では納税その他で圧倒的に革新派貴族のほうが高いことから、徐々に優遇されつつある状況なのだということだった。


 しかし、後宮においては、これとは全く違った構図が出来上がってしまったのである。


「しまった。まさか、こんなふうになってしまうとは思わなかったのじゃ。」


 宰相が苦心してバランスを整えたはずの後宮……まさか、ここでもハイエス一族への呪いの影響がでてしまうとは……。そう、ロシアーニア国に近い親ロシアーニア系貴族と私への忠誠を誓う国に近い親『勇者』系貴族に……。


 親ロシアーニア貴族には生粋の帝国貴族が多く。全ての侯爵家とその子飼いの伯爵家であり、親『勇者』系貴族は一部の伯爵家と多くの男爵家という、圧倒的な家格の違う組み合わせになってしまっている。


 だが、元々の保守・革新派の力関係から、メリーに付けられた側室のうち、8名が親『勇者』系貴族から出された側室であとの2名が親ロシアーニア系貴族から出された側室となったのである。


 しかも親ロシアーニア系貴族出身の側室の一人が、ビクトル・ド・ティアスザンナ嬢だったのである。


     *


 もうひとりの親ロシアーニア系貴族の公爵令嬢リリアン・ローマイアが挨拶に来た。


「アレクサンドラ公においてはご機嫌麗しく。」


 言葉は丁寧だが、蔑み妬んでいるのがモロ分かる視線だ。


「リリアン様。丁寧なご挨拶痛み入ります。」


 たった一言挨拶を交わしただけで相手は立ち上がった。もう一緒の空気を吸うのも嫌らしい。左右に4人ずつ分かれた親『勇者』派の側室には言葉も掛けないつもりらしい。彼女に取っては挨拶する価値もないということなのかもしれない。


 まあ、私を除く8人の側室たちの視線が痛かったのかもしれないが……


「それでは失礼します。」


 そのときだった。


「あれっ。少し早かったかな。」


 王宮の執務室から帰ってきたメリーと鉢合わせしてしまう。


「陛下、私、リリ「あっ。アレクに挨拶が済んだんだろう。もう帰っていいよ。」」


 リリアンがその場に座り頭を下げて挨拶をしようとするのをメリーが止める。


「あのっ。私……」


「だから、私はアレクに逢いにきたんだ。用は無いから帰ってください。」


 言葉は優しいが言っていることは辛辣だ。確かに陛下が渡られているときには、何者も邪魔できないことになっている。


 だけど初対面の相手にここまで言うか?


 メリーにしては珍しいこともあるものね。


 リリアンはすごすごとその場から立ち上がる。


「ごめんなさい。遅くなりました。」


 そのときにティアが入ってくる。


「陛下がお渡りになられています。下がって下がって……」


 リリアンがティアを睨みつけて注意する。


「待って、ティアスザンナ様は私が招待しました。下がる必要はありません!」


 私はキッパリと言い放つ。親『勇者』側の側室たちと挨拶の終わった私は、最後の仕上げとばかりにティアを含む9人の側室たちを陛下への面通しさせることにしたのよね。


 リリアンは何処かで動向を探っていたのだろう。その直前に挨拶がしたいとスケジュールをねじ込んできたのだった。


 もう既に、10人の側室たちが後宮入りして1ヶ月が経とうというのにメリーは私の居室にしかやってこないのである。


「はい……。」


 リリアンは形だけ頭を下げ、こちらを睨みつけるようにして出て行った。


 彼女だけ除け者にしたのには訳がある。私は10人全員と面通しさせるつもりだったのだけど、宰相から待ったが掛かったのである。


 その理由は、第1に彼女に後宮内の対抗勢力として居続けてもらい。これ以上、保守派の側室を入れないため。第2にこのところ、ローマイア公爵がメリーが立案した革新派が優遇される予算案をことごとく潰しているそうで……予算案を潰す=リリアンが蔑ろにされる……という方程式を組んでおきたかったそうである……。


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