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腐女子の悪役令嬢は復讐を果たせる?  作者: 一条由吏
第6章 悪役令嬢の戦い
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4. 皇帝代行の嫉妬

 成婚の儀の式典の最中はハラハラしどうしだった。


「ご結婚おめでとうございます。『勇者』さま。と、皇帝メリー。」


 私の立場は皇帝代行の妻でしかないはずなのだが、それは帝国内だけの常識であり、お祝いに詰め掛けてくださった世界各国の代表にとっては『勇者』とその伴侶という立場で見ていることは明らかのようである。


 始めはいつメリーが怒り出すかとハラハラしていたのだが、そんな挨拶のされかたでも嬉しかったらしく笑顔でいてくれてホッとした。だが、周囲をとりまく帝国貴族の方々の視線が痛い。


「ありがとう。エルフの里の長。」


「ありがとうございます。」


 それでもまずはメリーがその挨拶に礼を述べ、その後に私が言葉を添える。


「我が国へ『勇者』さまをお迎えしたかったが今一歩遅かったようだ。皇帝メリーの行動力には頭が下がります。次の機会があれば見習おうを思いますので覚えておいてください。」


 結局、リオーネが裏社会を通して出したヘルプは、各国で議論を重ねている最中に終わってしまったらしい。だが最後の一言にメリーの笑顔にヒビが入る。


 それはそうだろう。『勇者』をないがしろにすれば奪いにくるぞ。と、脅しているようなものだから……。しかも、相手が長の随行員としてついてきた美形のエルフだから性質が悪い。


 もちろん、彼も魔王討伐の際に散々イイ声で鳴かせてあげた……じゃなくてエルフの里で便宜を図ってもらうために仲良くなった男性だ。


 当時はエルフの長の一族の中でも分家筋にあたる家の次男だったのだが、魔王討伐の仲間のひとりだった次期長が亡くなったあと、エルフの長の一族の中で頭角を現してきたらしく、次期長候補のひとりらしい。


 こうして、長の随行員として国の代表として出てくるということは、かなりの有力候補なのだろう。


 私が魔王討伐の際に便宜を図ってもらうために仲良くなった男性は、そこそこの地位には居て、その国の政治に関わることはできるが、影響力を行使できる立場にはいない男性ばかりだったはずなのだが、なぜか皆、頭角を現し各国、国王の随行員としてやってきている。


 中には、国王としてきている男性も居て驚く。しかも、鈍感な私でも分かるくらい、私に対して熱いまなざしを注いでくるのである。


 流石に直接的な口説き文句は口にしないが、その国の綺麗な場所に連れて行ってくれたり、美味しいものを食べに行ったりした思い出話や連れていきたい場所の話で盛り上がっていると、繋いでいるメリーの掌が汗ばんでくるのが分かるのである。


 そういうときは腕を胸に抱きこんで密着度を上げたりして仲良さをアッピールするのだが、相手の私へのまなざしがさらに熱を帯びてくる。


 もうここまでくれば、どうどう巡りである。このときほど、各国の国王との挨拶の持ち時間があって助かった。と、思ったことは無かった。


     *


「兄が言っていたことは、大げさでも無かったんだな……。」


 各国、国王との挨拶が半分過ぎたところで休憩に入った。別室で休んでいるとしみじみとそう言われてしまった。


「大丈夫よ。私はもう貴方のモノなんだから……。大事にしてね。」


 そう言って、私はキスを強請る。


「……ん……む…ぅ………」


 いつもより時間が長い。しかも、抱き締める力がいつもより強い。強く抱き締めていないと何処かに行ってしまうと思っているようだ。


「メリーもそうだけれど、皆。随分と出世したわねえ。」


「それはそうだ。皆、そう成るべく努力したからさ。『勇者』を娶ろうと思ったら、生半可な地位では出来ないと思ったんだ。私は知らないが、各国でプロポーズしてきた連中を軽くあしらったんだろう? 皆、王族であることだけでは不十分だと思ったのさ。」


「メリーもそうだったの?」


「ん。だから、ショウコ様の動向を君から教えてもらった裏社会の繋ぎで調べてもらったりした。兄は意外とシャイなんだ。あんなに愛してやまないショウコ様のことを隠密を使って調べさせたりはしなかったらしいのだ。」


「そうだったの……。」


「そうなんだ。元々兄から可愛がって頂いたけど、それは何人か居る弟のひとりとして……ショウコ様が振られた理由を調べ上げ報告したときには随分と感謝されたんだよ。だから、私がこの地位にいられるのも、君のお陰というわけさ。情けないだろ……。」


「大丈夫。そんなに卑下しないで……情報を制するものは全てを制するの。実際に私は、そうやって戦ってきたの。そこにちゃんと気付けたのだから、見込みがあるわよ。ね……隠密さん……。」


 私は視線を上げて、そこに居るであろう隠密に挨拶をする。


「うちのリオウを受け入れてくれてありがとう。でも、キスや色事の最中は遠慮して欲しいかな……。私は見られてする趣味は無いの、シテいる最中に何かがあったら、この人のことは全力で私が守るから、席をはずしてくれると嬉しいな……」


「お……ま…え…たち、全部見ていたのか?」


 メリーは全然気付いていなかったようだ。

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