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腐女子の悪役令嬢は復讐を果たせる?  作者: 一条由吏
第6章 悪役令嬢の戦い
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プロローグ

「どうしたら、いいんだ。なあ、どうしたら……。」


 目を覚ました私を待っていたのは、メリーの焦った表情だった。


「まあまあ。落ち着いてちょうだい。ね。」


 震えるメリーを優しく抱え込み。頭を撫でてあげる。起きたそうそう厄介ごとらしい。ゆっくりとこれまでの出来事を癒す暇もないらしい。まあ、獣王のクスリを使った反動とはいえ7日も寝込んでいた私が悪いんでしょうけど……。


「ん…ふ……っ……」


 チュッと音を立てて唇が離される。長い間キスをしていたせいか、ようやく冷静さを取り戻したらしい。久しぶりのキスの激しかったこと激しかったこと……。


「何があったというの? 詳しく話して頂戴。」


 メリーの話では、例の手紙で皇帝に報告した翌日、ゴディバチョフ皇帝が帝国の筆頭魔術師と宰相を伴いロシアーニア国に『転移』魔法でやってきた。


 そして、リオーネとハミルトン王子から全ての顛末を聞きだした彼は、ハミルトン王子を除いた王族全てをアラーシア国へ転封という名の人質に取り、移動させたのだという。


 私がハミルトン王子に罰を与えるというのを覚えていてくれたのね。


「それで? なにか問題があったの?」


「それが……宰相を通して、全権を私に移譲した兄は、召喚の間からショウコさんの待つ異世界に行ってしまったのだ。」


 なるほど……。リオーネたちは、ユウヤが『送還』魔法で異世界に行ったという顛末しか聞かされていなかったから……ゴディバチョフはショウコさんに身を案じたのね。ユウヤが8歳の身体になったということは私しか知らないことだもの。


 しかも、リオーネたちは用済みの『送還』魔法に関する全ての情報をゴディバチョフに渡したらしい。見返りに向こうに行ったユウヤを殺してくれるように依頼したということだった。


 全くどいつもこいつも自分勝手なんだから、ゴディバチョフは全てを私たちに押し付けて、ショウコさんへの愛に走ったということかしら……。


 ドSのショウコさんのことだから、あっさりと振るかもしれないってのに……まったく男っていう動物には適わないな。まあ、振られてもドMのゴディバチョフのことだから、それさえも快感かもしれないけど……。


 分かっているのかしら、ゴディバチョフったら……向こうに行けば、無職無国籍のお荷物になるというのに……ショウコさんのことだから、冷たい振りをしても最低限の生活の面倒を見てしまうことになるだろうに……。


 最後の最後に厄介ごとを2つも押し付けてしまった。ショウコさんの幸せを守るってあんなに誓ったはずなのに結局、守れなかった。


 ごめんなさい。ショウコさん!


 私は心の中で謝る。


 さて、私は私の幸せを守ることから、はじめようかしら……。


     *


「立場は全くかわらないんじゃから、もう皇妃でいいんじゃないかのう。」


「いいえ。止めてください。私は皇帝代行の妻で十分ですから……。」


 私と宰相ドトーリー殿の間で話し合いをしているのは、私の立場だ。メリーの立場は、既にゴディバチョフと宰相の間で皇帝代行と決められており、10年以上ゴディバチョフが戻らなければ自動的に皇帝になることが決まっている。


 だが、その10年間、メリーの愛を独占できるかどうかの瀬戸際なのだ。ここは絶対に引けない。


 皇帝代行の妻ならば、メリーが幾人か側室を取るだけで済むが、皇妃を名乗るとなるとあの100人ものゴディバチョフの側室候補と対等に渡り合っていかなくてはいけないのだ。


 もちろん、その中には、あのビクトル・ド・ティアスザンナも居る。そんな相手にどう戦っていけばいいっていうの?


「わかりましたのじゃ。そんなに言うのなら、ここは引き下がりましょう。だが、側室に入れる方々はこちらで決めさせて頂きます。」


「あのう。ビクトル・ド・ティアスザンナ嬢は……?」


 私は恐る恐る聞いてみる。


「もちろん入りますのじゃ。貴女が皇妃でも皇帝代行の妻でもこれは決定事項なので是が非でも通させて頂きます。と、いうことでお邪魔いたしましたな。これで失礼致します。」


 あっという間に物事が決まっていってしまう。そこに私の意志もメリーの意思も介在しないらしい。取れることならティアと連携を取り物事を進めたいところだが……


     *


「えっ。どういうことなんですか?」


 ここで驚いているのはリオーネだ。今までひた隠しに隠し続けてきた甲斐があったというものである。


 ロシアーニア国はハイエス朝として私の親王政治体制が発足することに決定したのだ。『黒い噂の付き纏う伯爵家』から『残酷非道の王家』に出世したことになる。その初代女王は、もちろんリオーネだ。


 直接、私と血が繋がらないこそ国民が支持できる唯一の道だ。もちろん、その伴侶となるハミルトン元王子の影響も大きい。


 もちろん、帝国の傀儡政治には違いないが……私という世界で唯一になってしまった『勇者』の後ろ盾が無視できないものとなっていることから、それなりの独立が勝ち取れると楽観視している。


 なにしろ、下手をして召喚の間を維持できなくなれば、ゴディバチョフが帰ってくるところを失ってしまうのである。


「リオーネは何でもヤルと言ってくれたよね。だから、お願い! 私を手伝って!!」


 リオーネは抗議をしようとしたのだろう。口をパクパクとさせるばかりで声にならない様子だ。


「ズルイです。お嬢様。断れないことを分かっていて……。」


 それを言うのが精一杯の様子で、私は溜飲を下げる。『暗殺者』じゃないリオーネを永久に失ってしまったのだ。これくらいの報復をしても構わないだろう……。


「リオウには悪いけど……私専属の隠密とロシアーニア国での隠密の構築をお願い。もちろん、リオーネは協力してあげてね。」


「喜んで!」


 そういうことなら得意だと言わんばかりだが、それは女王としてであって侍女として根回しすることじゃ無いんだけど解っているのかな。まあ、そこのところはリオウがフォローするだろう。

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