表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
腐女子の悪役令嬢は復讐を果たせる?  作者: 一条由吏
第5章 残虐非道の悪役令嬢
43/59

4. 獣王の秘薬

 私の目の前に見たくなかった光景が広がっていた。


 人々は恍惚とした表情で、その光景に魅入っていた。


 侯爵と侯爵夫人と私の弟は磔にされ火を放たれていた。


 『鑑定』スキルを使うまでもなく。事切れたあとだった。


 私の中で何かが崩れ落ちる音がする。あんなに強靭な理性の紐が千切れ飛ぶ音がする。


 この音を最後に聞いたのはいつだっただろう。そう、あれは魔王討伐で仲間のエルフの次期長だった男が目の前でなぶり殺しをされたときだった。


 不味い。こんなところでスキルを暴走してはダメだ。暴走直後は無防備になってしまう。せめてユウヤの目の届かない場所に……


「ああぁ! あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ…………」


 だめなのに……だめなのに……


 全ての力を使い果たした私はそのまま地面に倒れこむ……シ…ョ…ウ…コ…さ…ん……た…す…け…




     *




「……な…ん…で?」


 目を覚ますと王都の門の外のテントの中。メリーの腕に抱かれていた。


「うん。ラスが君のスキル暴走に気付いてね。終わった瞬間に『転移』魔法で連れてきてくれたんだよ。」


 ショウコさんの膝の上で目を覚ますことが多かったのは、もしかして……


「今回も間に合ってよかった。まあ周囲に武器を持っていない一般人ばかりだったから、誰も殺さずに済んだ。ですが、皆廃人でしょうな。」


 相手が鍛え上げられた魔族の兵士たちでさえも半分が廃人となり、もう半分がノイローゼで戦線に復帰できなくなった、と言われていた。


 一般人がこれを受けたら、ひとたまりもなかったに違いない。しかも私を視界に入れている入れていないに関わらず、約半径5キロメートル以内の生き物がすべて影響を受けるらしい。


「……ありがとうラス。」


 私は起き上がり頭をさげる。


「アレク……撤退させようか? 兄さんの個人的感情で君が傷付くのを見ていられないんだ!」


 メリーから思いもかけない言葉が飛び出す。


「何を言い出すのメリー。そんなことが本当にできると思っているの? それに今が攻めるには絶好の機会じゃない!」


 それにショウコさんを召喚されてしまうのを手を拱いてみていることなんて出来ない。彼女には多くの恩を受けているのだ。それなのにほとんど何も返せてない。それなのに……彼女が不幸になる……そんなこと許せるはずが無い。


 どんなに無駄なあがきでもやってみないことには、何も始まらない。


「でも、アレク……そんな身体で……なあ、もういいよ。君は十分戦ったよ。」


 私はふらつく身体を無理やり立たせる。そうスキルの暴走のあとはいつもこんなふうだ。今回はまだマシなほうかも、いつもだったら3日は寝込んだはず……今回は数時間寝込んだに過ぎない。


「大丈夫よ。私にはまだコレがあるもの。」


 『箱』から獣王に貰ったクスリを取り出し、一気にあおる。よし、これでいい。これで当分持つはずだ。


 このクスリは獣王が戦いの最後の最後に使うものらしく、およそ半日身体が動くようになるという話だった。その代わり、反動がキツイとか。思考がハイになるとか。弊害もあるらしいのだが……


 今、使わずしていつ使うの?


「そ、それは……」


 しまった。ワオンがいたのだった。


 お願い喋らないで!


「何か知っているのか? 獣王の孫ワオン。」


 メリーが険しい顔でワオンのほうへ詰め寄り掴みかかる。


 おおっ!


 愛の告白か。っていうシーンに見えるわ。獣王の場合、クスリを使うと只の戦闘狂だったけど……私の場合、『腐女子』の方向にハイになるのね。テンション上がりすぎて、願望が声に出そうで恐い……。


「どこかで……そうだ……エルフの里特製ポーションだ。間違いない! そうに違いない。」


 ワオンが目配せしてくる。獣王国極秘のクスリだから、黙っていてほしいのよね。うんうん、わかってますって。


「言ってもきかなさそうだね。仕方が無い……行くとするか……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ