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腐女子の悪役令嬢は復讐を果たせる?  作者: 一条由吏
第5章 残虐非道の悪役令嬢
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3. 悪役令嬢の情け

「そんな! 侯爵家の警備はどうなっているのよ。」


「それが……各貴族所有の兵力は半分以上共和国政府に供与することになったようです。そして侯爵家所有の倉庫に同時多発的に略奪行為が発生して、本家の警備が手薄になったタイミングを狙われたようです。」


「ユウヤめ。ガス抜きのためワザと暴動を誘発させたな! それで侯爵家の人たちは? 私の弟はどうなったの?」


 ユウヤの手に渡っていれば、まだ打つ手はあるはずだわ……


「それが……侯爵夫人に抱えられたまま、外に引きずり出されたところまでは確認できましたが……大集団に取り囲まれたまま、王宮前の広場の方向へ連れて行かれました。」


 1歳になったばかりの赤ん坊に危害を加えて何になるというの……


「とにかく、追うわ……メリー止めないでね。今回ばかりはついてきちゃダメよ。」


「…………あ…あぁ。だが無茶をするなよ。今掘っているトンネルが通り次第、突入するからな! 待ってろよ。」


 いくつかある裏の人間のためのトンネルを拡張して闇夜に紛れて帝国軍が突入するつもりだったの。できる限り一般人を巻き込まないようにするには、それしかなかったの。それなのに……それなのに……


     *


 私は王宮前の広場にほど近い。冒険者ギルドの一角に設置されている転移場所に『転移』魔法で移動する。


「だれだ! 勝手に使いやがっ」


 突入してすぐに『威嚇』スキルを使って周囲の人間を黙らせる。普通は事前に申請したうえで冒険者ギルドに相応の料金を払って使うのよ。だがそんな決まり事をいちいち守るわけにもいかない。


 そもそも戦争状態なのだ拒否されるに決まっている。魔王が出現する前は、超法規的組織だったが闇の生き物たちに大幅に冒険者たちを減らされており、各国の援助なく維持できないまでに弱体化している。だから、共和国政府の意向には無条件に従うのだろう……情けない話だ。


 そのまま冒険者ギルドを出ようと思ったが何かが耳をかすめた。


 うっ、うっ。


 誰かが口を押さえて泣いている声が聞こえる。声のする方向を目をむけ、『鑑定』スキルを使うとカウンターの裏に女性が1人いた。『威嚇』スキルを逃れたらしい。


「そこのカウンターにしゃがみ込んでいる女、出てこい。」


「ひゃっ!」


 見つかるとは思っていなかったのか悲鳴とも返事とも付かない声をあげて立ちあがった。


「いい子ね。出ておいで。」


 その娘はビクビクとしながら出てくる。


「さて。服を脱いでもらおうかな。」


「えっ。いったい何をするの。」


「うるさい! さっさと脱ぎな。それとも、この場でお漏らしをしたほうがいいかしら……」


 娘は震える手で上着を脱いでいくと、私よりも随分ボリュームのある胸が下着からはみ出そうになっている。羨ましいな。更にスカートに手を掛けると周囲で生唾を呑む音が響く。生死の境目かもしれないっていうのに『男の性』には逆らえないらしい。


「……待て、制服だけでいい。」


 何を考えたのか下着まで脱ごうとする娘を押しとどめる。露出狂かよ。


 私はバストが少し大きめの制服を受け取ると服の上から着る。この冒険者ギルドの制服は赤いベスト付きのブラウスが特徴で、凄く目立つので誰もが知っているのよね。


 そのまま、彼女の目を覗き込む。加減をして『威嚇』を使うと弱すぎたのか、しゃがみこんでしまった。


 わっ。


 思わず飛びのくと地面に湿ったものが広がっていく。


 おかしい。一般人でもお漏らしをするレベルじゃなかったはずだったよね……本当に私が恐くてお漏らしをしてしまったらしい……まあいいか……


 周囲の男たちは10分はこのままだから、襲われないうちに逃げ出せるだろう……


 私は髪を左右に三つ編みにして垂らすと冒険者ギルドの職員になりきって、『威嚇』スキルを常に発動しながら外に出て行く。


     *


『ウォーターボール』『ウォーターボール』『ウォーターボール』


「ほら。解散しなさい!!」


 私は魔法で集団に水を浴びせかけながら、声を張り上げる!


「なにをしやが」


 やはりこの制服は目立つわね。水を浴びた男がこちらを向いた瞬間硬直してしまう。


 ええい、面倒だわ。


『ウォーターハンマー』『ウォーターハンマー』『ウォーターハンマー』


 呪文を唱えると私の腕から水流が伸び、人々を吹っ飛ばしていく。石礫を飛ばすよりは怪我は酷くなくてすむはずよね。


『ウォーターハンマー』『ウォーターハンマー』


 さらに走りながら、呪文を唱えていくと人波が割れていった。


「おいなんだ! 冒険者ギルドがなんだ! たった一人の小娘だぞ。やっつけてしまえよ!」


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