表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
腐女子の悪役令嬢は復讐を果たせる?  作者: 一条由吏
第5章 残虐非道の悪役令嬢
40/59

1. 恐怖の悪役令嬢

 さらに奥に控えていた3つの辺境伯軍は事前の情報通り、投降してきたので半分を荒野で死んでいるロシアーニア国軍の死体処理を行わせ、もう半分をバラバラに解体して帝国軍に合流させたみたい。


 王都までの各貴族の領地では家に閉じこもっているのかそれとも何処かへ逃げ出したのか、ひとっこひとりいない状態だった。


 各家々を回ると爺婆以外は誰もいないという報告をうけたのよね。仕方が無いのでその爺婆を集めてもらう。


「いったいどういうことですか? 他の皆さんは何処に行かれたのですか?」


 まさか本当に時間稼ぎのために全国民を犠牲にするつもりで集めているというのだろうか……


 私はなるべく怖がらせないように近くにいた爺さんに優しく問いかけた。


 ぺっ。いきなり、唾を顔に吐きかけられる。


「裏切り者に教えてやる筋合いは無い!」


 ハンカチで顔を拭き周囲の帝国軍の騎士たちが立ち上がりかけるのを押しとどめていると、いつのまにか前に回り込んでいたメリーが爺さんをぶっ叩いた……


 やりすぎだっつーの。


「じゃあ、恐怖体験にご招待しましょうね……」


 私が顔を覗き込むと爺さんは顔を背ける。それを何度か繰り返す。


 私は何度目かのため息をつくと傍にいたエルタロンに頭を押さえつけるようにお願いする。


 再び、覗き込むと今度は爺さんが目を閉じてしまう。


「けっ、お前さんの弱点なんか既にお見通しじゃわい。」


「そう……せっかく、優しく聞いてあげているのにその好意を無にするわけね……いいわ、それじゃあ、少し痛い目にあってもらいましょうか……あらあら、お爺さん。爪が伸びているじゃない……私が切って差し上げましょうね。」


「ギャー!!」


 私はおもむろに取り出したペンチで左手の人差し指の爪をひっぺがえすと爺さんが酷い声で鳴いてくれた……やっぱりメリーの方がイイ声だわね……


「これでも喋らないのかしら。そう、それでは仕方無いわね……」


 爺さんが首を振るのを見届けると立て続けに中指、薬指、小指の順でペンチでひっぺがえす。最後には爺さんは声をあげることも出来ないくらいになっている……


「さて皆さんは喋ってくれますよね……それとも無理矢理、目を開けさせて私の勇者たる奇跡を味わって狂ってみる? ほら喋りたくなってきたでしょう。しゃべりたい方は手を上げて……ほら、そこのお兄さん。いい子ねえ。」


 私は他の爺婆に目一杯優しい笑顔で問いかける。こういうときに表情を作らなくていいって楽ね。一族の呪いフィルターを通せば、悪辣な笑みを浮かべているように見えるのよね……


「皆は王都に向かったぞ。」「ユウヤ様は国民に主権を明け渡すそうだ。」「ロシアーニア共和国にするんだとか……」「国民が国会議員を選ぶんだそうだぞ。」


 ひとりが喋り始めると皆は一斉にしゃべり出した。


 要約すると貴族や裕福な商人が立候補してそれに対して選挙を行うらしい。そして国会議員の投票で立候補した大統領候補の信任を行うようだ。なるほど立候補者は決まっているわけね……誰が当選しても、立候補したユウヤが大統領になる手はずのようね……


 そうすれば、自分たちの国という意識が芽生えるから、より多くの無駄に抵抗する者たちばかりになるというわけだ。ユウヤめ、考えたな。


 私は、そこにいた爺婆から全ての情報を引き出すと、左手の指を右手で押さえてしゃがみ込んでいる爺さんに声を掛ける。


「もういいわよラス、ご苦労さま。『治癒』魔法は自分で掛けるわよね。」


「うんにゃ、アレクサンドラ様にお願いしたい。私では『再生』魔法までできない。」


 ラスには悪いが『勇者』には経験値によって得るスキルポイントなるもの見えていて、職業としての『剣士』と『魔術師』のレベルを交互に上げていった結果、『魔術師』はラスよりも上のレベルまで上がっているのよね……


 経験値は強い敵を倒した際の貢献度によって割り振られるらしく。『威嚇』スキルによる貢献度は広範囲かつ重要性も高いらしく直接相手を倒した人間よりも多く割り振られるみたい……まあ、無防備の敵を殺した場合としっかりと戦って殺した場合が同じ経験値なわけないわよね……


 ラスの指の爪が根元で一文字に切れている。もちろん、ひっぺがえす際に簡単に取れるようにしてある……そこから、元の長さを思い出しながら、『再生』魔法を唱えるとほぼ元通りの長さまで伸びてくる。本物の爪切りで切り揃えてあげるだけでできあがりというわけ……


「やっぱり、若い娘さんに手を握ってもらうと若返るな。」


 ラスが爺さんみたいなことを言ってくる。ああ83歳は立派な爺さんか……


 手くらい幾らでの握ってあげるわよ。たとえ根元で爪を斬ってあったとはいえ、爪をひっぺがえすときの痛みなんて想像を絶するものがある……本当は、こんなことをやらせたくなかったのだけど、一度ユウヤ側についた罰とラスが自ら願い出てきたからなのよね……


 実は尋問は若い騎士たちに任せていたのだけど、その中の1人の爺さんがいきなり尋問の途中で自殺を図ったのである……幸いにも近くに私やラスがいたから、命だけは助け、猿轡を噛ませて転がしてあるが……あやうく一般人を殺してしまうところだったのよね……


 周囲の爺婆たちは当然、騙されたと怒りの表情を向けてくるが無視無視。危害を加えられなかっただけ、マシでしょ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ