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腐女子の悪役令嬢は復讐を果たせる?  作者: 一条由吏
第4章 皇太子の戦い
33/59

3. 悪役令嬢と善良令嬢

「あのう。盛り上がっているのはかまわんのじゃが……。わしが言いたいのは側室じゃ、正妻は好きに選んだらええ。だから、さっさと選んで……それとも、わしの好みで揃えてよかったら、そうするんじゃが……どうじゃろ。」


「好み…って、まさか……お前のところの奥さんとか娘たちのような奴じゃないだろうな……」


「大当たりですわい……。ほら可愛いじゃろ……」


 ドトーリー宰相は懐から一家の絵姿を取り出してみせる。サインを見ると画家は……写実主義で有名な人物だ……このくらいの大きさの絵でも大きな家が1軒建てられるだけの値段がつくと聞いたことがある……


 その絵姿にはデプっとした女性とぽちゃっとしたお嬢さんたちが描かれていた。


「分かった、わかった、選ぶからそれだけは勘弁してくれ……アレクサンドラ、手伝ってくれ……対象はショウコに似ている女性だ……」


 ははーん。側室にショウコさんに似た女性を並べれば、いかに自分がショウコさんを欲しているか分かるという寸法か……しかも、私が選んだのなら、ショウコさんもイヤとは言わないと思っているな……女心はそんなもんじゃないんだけどなあ……


 だが、それくらいなら仕方が無いか……側室たちには失礼だが、ショウコさんの思い出の中で生きることになるのだから……


 机の上から1冊身上書を取り、開ける。


「おーっと、そちらは既に決定済みのほうじゃ……」


 そう言ってドトーリーが取り上げようとするが、私は慌ててそれを避ける。


「ちょっと待てや! どういうことだ!! 俺に選択権は無いのか?」


「ええ、キプロス公爵家並び5大侯爵家の総意ですから、断れない物件です……」


「まさか、あの仲の悪い侯爵家の総意だと……そんなのを側室に迎えて一度でも部屋に訪れたら、どんな難癖つけられるか、分かったものじゃないぞ………だが……断れんな……気をつけよう……」


「ダメ! この娘だけはダメよ!!」


 こんなところで……ビクトル・ド・ティアスザンナの名前が出てくるなんて……


「知っているのか?」


 ティアは親友だ。今までで唯一、初めから一族のフィルターから逃れた女性だ……だか、それには訳があったの……


 ビクトル男爵家はハイエス伯爵家と正反対の呪いを受けた一族だった。彼らは至って普通の人たちなのだが、ハイエス伯爵家とは反対に常に心清らかに見える呪いが掛けられているらしい……


 悪事というほどではないが少しでも利潤の高い商売に手を染めようならば人から諌められる。キライな人の悪口を言っても褒めているように聞こえ、下手に泣いていれば周囲の人間が悪事を働いたと誤解される……そんな羨ましい……いや、酷い呪いを掛けられているのよね


 その一族の男は、押しが強ければ好きな女性と結婚できるのだけど、女の子が適齢期なると必ず周囲の人がとびっきりの男性を紹介してくれるらしい……そしてその男性もさらに……どんどんと良い物件を紹介してくれるらしい……最後には必ず、皇族に辿りつくのだそうだ……


 好きな男性が居ても必ず、自分は相応しくないとフラれるのだそう……まあ私の場合、脂汗を流しながら逃げようとするのだけど……


 だがこの呪いにも抜け穴があって、紹介された男性のほうが惚れぬいている女性が居る場合は呪いが効かないらしい……恋は盲目…というやつらしい……


 メリーやゴディバチョフもそうだが、帝国の皇族は恋愛願望が強く、一人の女性に夢中になることが多い……そのため、ビクトル男爵家の女性は後宮のなかで手付かずのまま、ひっそりと一生を送ることが多いという……


「ええまあね……」


 親友などと言ったら、ティアにあらぬ誤解を与えてしまうから、知り合い程度にしておこう。


「ビクトル男爵家の娘だろう……聞いたことがある……女神のように美しく、どんな人々にも労わりの心をを持つほど清らかで、か弱そうな外見とは裏腹に芯が強いのに、どこか儚げだと噂に聞いた……わけの分からない女性だね……へえ、アレクサンドラと……か……」


 ええ、どうせ似合わないわよ……2人で街中を歩いているだけで、彼女を諌めようとする輩の多かったこと多かったこと……普通の人なら、私の目の届かないところで諌めるのに……彼女の場合は、目の前で行うだけでなく、無理矢理連れ去ろうとするのである……


 まあ、全て『威嚇』で撃退したけどね……


 ティアは、その境遇でも必死に生きていたはずなのに、呪いには勝てなかったらしい……


「ダメよ。ティアだけはダメ。」


「では……その娘は、代わりに皇太子の側室となりますがよろしかったですかな……」


 うっ……そんな……どう頑張っても、ティアでは私に勝ち目が無いじゃない……たとえ私が正妻に納まったとしても……あの快楽に慣れてしまえば、彼女のほうがいいと気付く……そうなれば、形ばかりの正妻となってしまう……


「わかりました。彼女はゴディバチョフの側室ということで……」


 そうよ。私が『威嚇』を使ってでもティアにゴディバチョフを抱かせてしまえばいいんだわ……そうするしかない……

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