1. 皇帝がライバル
…………………………………………………………………………えっと……何か気が遠くなったわ。
それで何処の承認を取らず駆けつけてくれたってわけ……?
そこまで想われて嬉しがればいいの?
気の多い女だと思われていたと悲しめばいいの?
リオーネ……だよね。そんなことを言ったのは……発破をかけてくれたのよね……きっと……
「おい! アレクサンドラ!! 大丈夫か!!!」
私のことを揺さぶるのは誰?
ああ……ゴディバチョフじゃないの……
「何、ボケてるんだよ。おーい……各国での魔王討伐の祝勝会で、お前……プロポーズされていたじゃないか……」
あんなの全部冗談だって……えっ……違うの?
「……もしかして……ゴディバが……メリーに教え……たの?」
「まずかったか? ユウヤのあの悔しそうな顔をみる度……スッとしたんだが…………まずかったようだな…………すまん…………ゴメンって、ゴ」
「お前か!!!」
あ、マズい! 思いっきり睨みつけてしまった。
ゴディバチョフは耐性があるから発狂はしないだろうけど……お漏らしコースかな……どちらにしても30分間はこのままよね……
「……これが、あの有名な『威嚇』ですか……すばらしい……」
ドトーリー宰相がゴディバの身体を撫で回す。この男って……まさか……いかんいかん、ついつい男同士が引っ付いていると『腐女子』フィルターを通してしまうのよね……
爺さんは好きじゃないけど、下克上モノは好物なの……ゴディバ受け、ドトーリー攻めで想像する……うーん……いいわぁ……
「これはどれくらい持つのですか?」
ドトーリー宰相は平然と質問をしてくる……
「そうね30分くらいかな……でもさっきみたいに私の目を覗き込まないかぎり……ここまで長い時間硬直することは無いわ……」
ゴディバって良くやるのよね。平然と近付いてきて……これで何回目くらいだろ……数え切れないくらいよね……
どうだろう……この男にゴディバを任せて、他の部屋に皆で移動すれば……下克上攻め……してくれないかなぁ……
*
「おう……久々の『威嚇』は効くな……全く身動きができないのがなんとも……」
そういえばゴディバってM男の気があるのよね……拘束されて悦んでいるなんて……もしかして、真性なのかしら……
「ごめんなさい……」
「いいってことよ……弟よ。ライバルを蹴落とすのも大事だが、アレクサンドラ嬢の心を掴むことがもっと大事なんだぞ。こうやって、偶には怒りを発散させてやるというのもひとつの手だぞ……命がけだが……」
うわっ……確信犯か……ワザとやったのか……しかも命の危険性まで分かった上で何度も『威嚇』を受けてきたの?
これは、真性M男だわ……
でも確かに『威嚇』があるせいで怒りをぶつける相手に事欠く……最近は悪感情を直接ぶつけてくる奴らも少ないのよね……その分、影で噂されて思いっきり拡大されていってしまう……
「本当のライバルは、兄だったのか……」
「「それは無い!!」」
思わずゴディバチョフと声を揃えてしまった。
全く何を考えているのよ……こんな自ら奴隷になりたがるM男を夫にしたら、プレイまで要求してくるようになるでしょ……そうなったら、プレイの最中に殺すところまで行き着いてしまうかもしれないじゃない……そんなのイヤよ……
でも……奴隷なら……何をしてもいいはずよね……それこそ、皇帝の権力を使って……本当の奴隷を買って男同士でプレイをさせて見学することもできるはずだわ……それって、いいかも……
酒池肉林も思いのままよね……綺麗な男同士限定だけど……
「怖いことを言うなよ。アレクサンドラを嫁にしたら……毎日……ベッドでは拘束だ……ついでに鞭をつけてくれないかなぁ……」
おいおい、願望が口から漏れているぞ……それでいいのか皇帝……
「コホン……それでですな……できれば、あなた方の結婚の承認の根回しを行うために今回の侵攻の成功はハイエス伯爵家の方々の尽力の賜物というふうにですなぁ……まあいいですわい。そのときは強行採決します……」
ドトーリー宰相は希望を口にするがメリーの思いに負けたのか、前言を翻す……私はそっちの方が……元々居場所はなかったが……僅かにあったロシアーニア国での居場所は侵攻が成功しようと失敗しようと無くなったも同然なのよね……
その後は当然、居場所を帝国に求めるしか無いっていうのに……メリー……本当に私のことを愛しているのかなあ……先のこともちゃんと考えてくれるほうが嬉しいのよ……