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腐女子の悪役令嬢は復讐を果たせる?  作者: 一条由吏
第3章 恋する乙女の悪役令嬢
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プロローグ

「ただいま戻りました。」


 ロシアーニア国側の通用門を通り、領内に入るとすぐのところにある『砦』に入る。帝国とロシアーニ国の仲が悪かった昔、国境線がこの門の上に引かれ、帝国が守るための頑強な『砦』が建てられたのだという。


 もちろん、反対側の帝国側の門の近くにも、同じような理由のロシアーニア国が建てた『砦』があるのだが国力の違いか、もう朽ち果てている。


 この『砦』を名ばかりの自治政府の屋敷としたのだけど、まさかいきなりロシアーニア国と帝国の戦争状態に突入してしまうとは……


 『砦』のてっぺんにある執務室に入ると執務机の横にある自分の机に座っていたお父様が立ち上がって出迎えてくれる。


「おかえりなさい。大変だったね。」


 私はお父様の笑顔を見た途端、駆け出して抱きつく。


「お父様っ、お父様!!」


 ようやく帰り着き、安心した途端、涙が止まらなくなっていた。


「アレクサンドラや。すまなかった。あんな節操の無い男だったとは! お父さんは恥ずかしいよ。」


 母が誘惑したとは夢にも思っていないらしい。


 当のハミルトン王子は、途中帝国側のこの『砦』の責任者という男に引き渡してきた。おそらく『砦』の一区画に軟禁状態になるのだろうと思う。


 ようやく涙が止まり、お父様から離れようとしたとき、気を抜いた拍子に足に力が入らなくなっていたみたいで踏ん張りがきかず後ろに倒れてしまう。


「「アレクサンドラ!」」


 背中をぶつけると目をふさぐ……ところへガッシリと抱き留めてくれる人がいた。メリー皇太子である。


「あっ、ごめんなさい!」


「ハイエス伯、お嬢様はお疲れのご様子。今日のところはこの辺りにして休ませて差し上げたらどうでしょう。」


 メリー皇太子が優しい言葉を掛けてくれる。ほんの15分位前までイイ声で鳴いていたとは思えない。やっぱり、男の人はタフね。


「でも報告しなきゃいけないことが沢山……」


 何から報告すればいい?


「それは、私から報告するから……もちろん求婚のこともね。」


「その通りだ、お前は休みなさい。お前に皇太子が求婚したいということは事前に聞いている。お前さえ良ければ後で結果を2人揃って聞かせてくれないか?」


「でも、お母様のことは……」


 なるべく、お父様が傷つかないようにオブラートにつつむように報告しないと……


「……リオーネから聞いているよ。あいつにも困ったものだ……」


 そうよね。報告しないわけがないわよね、でも子供のことは知らないはず……なんて言っていいか。でも早く報告しないと……他の誰かから伝わってからでは遅すぎる。


「なんだ、子供が出来たのか?」


 私の様子から悟ってしまったらしい。なんてこと! 過去にもあったのだから私の様子がおかしければわかってしまうに違いない。


「そうか。あいつもまだまだ若いな。大丈夫だよ……。お前が心配する事じゃないんだ。」


 あれっ、反応が鈍い。心配で心配で眠れなかったのにどういうことなんだろう……


「貴族社会ではよくあることなんだ。いちいち騒いだりしないものなんだよ……」


 そうか。日本人の尺度で計っていたけど、昔のイギリスやフランスで同じようなことがあったと耽美小説で読んだことがあるじゃない。たしか、あのストーリーでは養子に出されるんじゃなかったかな……


「子供は……どうなるの?」


 あの耽美小説では知らない間に養子に出されていて、それを知った姉が迎えに行ったときにはもう……。そんなの嫌よ。あのときは好きな作家の小説だったけど、思わず壁に投げつけてしまったくらいショックだった……


「大丈夫だよ……。うちで引き取ることになるよ。本当は男の子が産まれれば嫡男のいないほうが引き取ることが暗黙の了解になっているんだが、相手は王族だ。特殊な状況でなければ血統の問題から引き取らないことが多いものなんだよ。」


 良かった! 良かった!! 誰も引き取らないなんて言われたら、家を出てひとりでも育て上げるつもりだった……


「お母様は、お咎め無し?」


「平民出身のあいつは子供を産んだあと、離縁されるはずなんだが……知ってのとおり、ワシには後添えが望めないからのう。あいつしかいないんだ……」


「そう……」


 かわいそうな、お父様。なんとかして差し上げられるといいんだけど……まさか趣味に走って男の子をあてがうわけにはいかない。そういう弾ならあるのだけど、後添えになってくれるような女性なんて……


 ユウヤの側室は若すぎるからなあ……


 そうそう。リオーネのご褒美よね。


「今回よく働いてくれたリオーネにハミルトン王子をあげてもいいかな?」


 私は恐る恐るお父様に問いかけてみる。


「そ……それは……状況が許せばなんとかするよ。とりあえずは養女だね。もちろん、いいともさ。リオーネさえ了承してくればね。」


 そうだった。うちの黒い噂のせいで縁を結びたい人間がいないんだっけ。これで安心だ。安心したら眠くなってきちゃった……部屋までもどらなくちゃ……ん……ね……む……い…………

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