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腐女子の悪役令嬢は復讐を果たせる?  作者: 一条由吏
第2章 溺れた皇太子
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6. 母のカミングアウト

「アレクサンドラの思考ね。まるで男ですって。以前、外国の踊り子が王宮に招かれたときの男たちの思考に似ているんだって。時折、ドロドロした思考が流れ込んできて、そのとき貴女の口角が少し上がるのが怖いそうよ。いったい、ハミルトン王子相手に何を想像していたの?」


 何を想像していたですって……決まっている。ハミルトン王子相手に耽美小説で好きだった攻めキャラにことば攻めをさせて真っ赤な顔になる姿や濃厚なキスシーンのあと恍惚とした表情を浮かべた姿だ。


 直接的な行為の妄想は耽美小説としての美学に反しているのでやってはいけない。


 ただし、何事にも例外がある。汚れ役キャラとか近親モノなどはそれにあたる。流石に人前ではしない。自分の部屋でコッソリと想像するのが楽しいのよね。ハミルトン王子はどちらかと言えば清純キャラだったから、そういう姿を想像するのが楽しかった。


 でもこれからは、例外の耳年増キャラに位置するべきかも。ドロドロとした思考が流れ込んでくることでその思考を上回る想像をして感覚が倍増していくタイプよね。相手は脂ぎった中年男、もちろんある程度の見た目は必要なのよね。


「33歳とは思えないハミルトン王子の美しさに思考がぶっ飛んでいただけなの。まさか、そんなふうに思われていたなんてショック!」


 あまりにも的確なたとえだったからショックを受けたのだけど、それはもちろん口にしない。しかし、口角が上がっていたか……修行が足らなかったみたい。もっと、ポーカーフェイスを勉強しないと。『腐女子』で有名な作家の話では、全く違う話題でお喋りしながらでも妄想を膨らませれるらしいのよね。


「それでどうするつもり? お父様にはバレているわよ。」


「大丈夫よ! あの人、子供好きだし。」


 そういう問題なのか? 離婚されるとは全く思っていないらしい。なんか聞くのもバカらしくなってきたじゃない。


「それに2度目だし……」


 突然、カミングアウトされた。母の話では魔王討伐の旅の間に、ある侯爵家の跡取り息子の子供を産んだのだという。男の子だったらしい。


 思わず顔が引きつる……耽美小説でもあった……はず…………そうそう、ネトラレ物で人気歌手の奥さんを妊娠させた男に公表すると脅されて関係を持ってしまう……なんてのが、あった……そうそう何処にでもある話なのよ……ははは。


「それって、ポルテト侯爵?」


 数ある侯爵家の中でハイエス伯爵家の近くに居たのは、ここしかない……


「よく知ってるわね。」


 知ってるもなにも、魔王討伐隊のロシアーニア国内での繋ぎ役じゃないの! 必要な資材の調達で随分と世話になったのよね。まあその分、向こうも潤っただろうけど……


 当主同士、ロシアーニア国を出るときはビジネスライクな関係だったのに帰ってきたときは友達付き合いをしていたのよね。一時期はポルテト侯爵家に入り浸るくらい……


 道理で魔王討伐隊が帰還したときにいろいろと手を尽くしてくださったはずだわ。特に荒野がハイエス伯爵の娘である私の領地になると決まったときにも何も異論が出なかったのは、そのことがあって根回ししてくださっていたせいなのでしょう。


 どうやら、子供好きなお父様は浮気相手の子供とか関係無く可愛がっていたのでしょうね。あの人は全くお人好しというか、母にベタ惚れというか……


 黒い噂のせいで母以外に女っけ無しというのがいけないのよ……


 お父様は意図せず動いたのでしょうけれど、相手にとっては脅されているも同然だったのでしょうね。お父様のあの無邪気な笑顔も邪悪な笑みに解釈される。どんな場合も勝手に解釈されるのがハイエス伯爵家の一族の呪いだから……


 つまり、母の浮気は結果的に私に利することになったということなの? 復讐する以前の話じゃない。これで母にどんな罰を与えても完全に私が一方的に悪いってことじゃないの。まあ、世間的には既に悪役なんだけどね。


 母の子供ということは私の弟ね。子供に罪が無いんだから、平和が戻ったら会いにいってみようかしら……。ダメダメ、それこそプレッシャー。今度は何を要求されるんだって戦々恐々とすることになってしまう。そっとしておくのが一番よね。


 向こうが勝手にしてくれたことはしてくれたこととしてありがたく受け取っておけばいいのよ。


     *


「なんてことを……」


 しまった!


 馬車を降りる前に私に叱られ意気消沈する母の顔を見られてしまった……完全に悪役よね私。どうせ悪役よ、悪役。


「罰を与えるなら、私にすればいいでしょう! 実の母上になんて仕打ちを……」


 まるで半殺しの目にあわせたかのように大騒ぎをされる……。まあ、いつもだけどね。


「そこまで仰るのでしたら、あとでゆっくりと罰を与えます。よろしいでしょうか?」


 ハミルトン王子のほうから、申し出があったのよね。さあて、どんな罰がいいかしら。でも駒不足なのよね。攻め駒が全く足りない……。それでも、いろいろと妄想していると思わず顔が綻んでしまう。


 ハミルトン王子に視線を向けると脂汗を流しているようね。いったいどんな凶悪な罰が待っていると思っているのだろうかしらね。

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