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腐女子の悪役令嬢は復讐を果たせる?  作者: 一条由吏
第2章 溺れた皇太子
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5. 元婚約者の能力

「ちょっと待ってよ。私が生まれる前の話よね。」


 王宮で働いていたなんて聞いたことがない。ま、まさか……


「ええそうよ。23・4年くらい前だったかしら。」


 ああ良かった。私自身が王子の子供だったら、随分話が変わってくるものね。


 でも、ハミルトン王子が今年33歳だったはず。ということは……


「ええええっ、10歳の男の子としたの?」


 なんて羨ましい。ハミルトン王子が10歳だなんて、想像するだけで鼻血が出そうだわ……


「そうね。成人する5年前だから、そんなところよ。」


 母は平然と言い放つ。母に取っては10歳の男の子でも15歳の成人したばかりの男でも大差ないらしい。私なら、あんなことやこんなことをしてみたいのに……


 でも母が言うにはよくあることだったらしい。そういうときは常に男性側がリードする必要があった。まさか娼婦を抱かせるわけにもいかないので、若くて綺麗な侍女を選んで相手をさせていたらしい。


 侍女によっては心底光栄に思い、身体を無償で差し出す人も多かったらしい。母はお手当が目当てだったようだけど……


「そのあと、すぐにお父様と結婚しているよね。まさか、付き合っている最中に?」


 それだったら、お父様が可哀想すぎる。


「ううん。そんなことないわよ。ただ・・・・・・」


「ただ?」


「王子のほうが私に夢中になったみたいで毎晩夜伽に呼ばれるようになってしまったの。」


 ああ初めての相手は特別だというからね。母のアレの具合が良かっただけかもしれないけど……


「それは拙いわね。」


 そんなに何度も呼んだら一部の人間しか知らない、秘密裏に行われていたことの次第がバレてしまうもの。まさか、平民の母をそのまま側室にするわけにもいかないだろうし……


「それで泣く泣く、辞めさせられてしまったの……」


 もうヤダ……このひと。なんでこう飛ぶのかしら……


「話が飛びすぎです!」


「ええと……そうそう、王子の側室にも愛人にもさせてあげられないからって、貴族に下賜されることになって……一番条件の良かった貴女のお父様に嫁いできたの。絵姿で見た、あの人は可愛かったし、伯爵夫人になれるから。」


 お父様も若かっただろうし十分な地位もあったのだけど、なんと言ってもハイエス伯爵家だ。誰も進んで縁を結ぼうとはしない。平民でさえも伯爵夫人というブランドが一族の悪い噂に負けるのよね。


 母は天然だから結婚したのだろう。


「あの人、貴女が怖いんですって! 出来れば顔も見せたくないって!! 何をしたの?」


 ハミルトン王子に『威嚇』を使ったことなんてもちろん無い。『威嚇』を使ってイロイロいたずらしてみたいなんて妄想をしたことはあるけど……


 それにハイエス伯爵家の黒い噂も平気みたいだった。向こうから申し込んできたのは母に会いたい一心だったのかもしれないけれど……


「何もしてない。だって、会ったのって婚約式が初めてだったのよ……」


 見ているだけで十分に妄想できたから……。イイ声を聞くのも結婚してからで十分だと思っていたし……


「これから言うことは絶対内緒よ……」


 突然、母が真剣な目つきで小声になる。この人がこんな表情をするところなんて見たことが無い……。いったい何……。私は頷くしかできなかった。


「あのね。あのひとね…………」


 もうじれったいな。言うって決めたのなら言ってよ……。そう思うけど私は待つしか選択できない。何かを言って気を変えられたら……。あとで気になって仕方がなくなってしまう。このひと、そういうところがあるから気をつけないと……


「僅かだけど……」


 母は言い澱む。余程のことなのだろうか? でも、じらすだけじらしておいてガッカリするようなことを言うひとだからなあ……


「精神感応能力があるみたいなの……」


 ……………………………………………………っと、気が遠くなりそうだった。精神感応って人の心を読めるってこと? だったら、私の妄想も……ダダ漏れ?


「ど……どんな?……ふうに?」


 とてもじゃないけど動揺が隠せない……。この世界は剣と魔法の世界だけど、心が読めるなんて魔法は聞いたことが無い……。スキルなのだろうか? 王子も転生者なの?


 母が言い澱むのも分かる……。そんなことがバレたりしたら……王子は施政者となる人間だ……そんな国に住みたいなんて言うひとはいないに違いない。ひとが住まなくなれば国として成り立たない。


「どうも接触型らしいの。私に夢中になったのも流れてこんでくる思考がシンプルなのだそうよ。私は単純な人間かってーの、失礼しちゃうよね。」


 それは私の聞きたいことじゃない。


「どんなふうに流れ込んでくるの?」


「例えばユウヤ様は、握手をしたときに何重もの欲望が重なり合ったようなドロドロした泥水のような思考ですって……」


 ふう。どうやら、抽象的なものらしい……


「わ、わたしは……?」 

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