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腐女子の悪役令嬢は復讐を果たせる?  作者: 一条由吏
第2章 溺れた皇太子
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1. 皇太子のご褒美

「ん…ふ……っ……」


 ダメっ。チュッと音を立てて唇が離される。


 主催者のユウヤはいなくなったが舞踏会は予定通りの時間に終わった。帝国側は引く条件としてハミルトン王子とオーチッド・アール・ハイエス……私の元婚約者と母を連れていくこととなった。


 もしユウヤに対する処罰が行われなかった場合に対する人質の意味合いなのだろう。


「ゴ、ゴメン。でも、軽いキスの約束だったでしょ。」


 キスの最中に舌を絡め取ろうとするメリー皇太子を思わず睨んでしまった。硬直はするが呼吸にまで影響を与えないためか、唇を離すときに音を立ててしまう。


 ちょっと下品だったかな。まあ耽美小説でよくあるシーンのように糸を引く状態にならなかっただけ、よかったわよね。


 もちろん、メリー皇太子は硬直して喋れない。耐性の無い一般人であるメリー皇太子相手だとこの場合……うーん……5分ほどこのままかな……


 私は離した唇をもう一度重ね、直ぐ離す。まるで小鳥が餌を啄むような具合なのでバードキスといわれているが、私は少女マンガのフレンチキスのイメージなのよね。本来は違う意味だそうだが……


 もう少しなら大丈夫かな。


 服の上からだが、指を滑らせる。何をされるかわかったのだろう。メリー皇太子の口から、甘ったるいため息が漏れる。


 おかしなところには決して触らない。そうマッサージサロンで教育を受けたせいもあるけど……人間はどこを触れても気持ち良くなれるのよね。


 一度それを経験すると今のように期待感だけで自分で過去の気持ちよかった経験を再生してゾクゾクっとするらしい。


 例えば、こうやって全く関係ないお腹辺りをタッチするだけで……


「あっ……」


 丁度、声帯の硬直が取れたみたい。皇族は多少耐性があるのかも……完全に硬直が解けるのは、あと2分といったところかしら。


 あとは普通にマッサージしてあげるね。私は彼の後ろに回りこみ肩を揉む。


「ひっ……」


 何を期待しているのよ……もう……。ゆっくり、ゆっくりと力を入れていく。相当凝ってますね、お客さん……まあ、戦争を仕掛けようとしている帝国側の使者を勤め上げたのだもの……仕方が無いわよね。これはもっと、ご褒美が必要かしら……


 私は再び前に回りこみ、その引き締まった身体を抱きしめる。私の胸が押しつぶされるくらいにぎゅっと……


 硬直が解けたのだろう……私が顔を上げるとそこには、穏やかな笑顔があった。まあ、触ろうか触らないでおこうか、迷っているらしい腕が所在なさげに宙に浮いているのだけれど……それは見なかったことにしてあげる。


「助けにきてくれて、ありがとう。」


 あのままだったら、後宮という名の牢獄に永遠に閉じ込められたはず……


「どういたしまして。」


 自分でお願いした方法とは違ったけど、最高の結果になった。でも、私には何も返してあげるものが無い。返品されるかもしれないけど、愛人でもなんでもしてあげる。短期間でも皇太子と愛欲の日々を送れば、一生それを糧に生きていける……もちろん、妄想も必要だけど……


「ご褒美……あれじゃあ、足りないよね。どうすればいい?」


 とにかく、相手の希望を聞かないとね。


「私の后になってください。」


 メリー皇太子は思いもかけない言葉を聞かせてくれる。


「あれって、本気なの? お芝居よね。私はハイエス伯爵の娘よ。無理でしょう……」


 帝国は長年友好国だったため、多くの親ロシアーニアの貴族がいる。今回、戦争を仕掛けるにしても相当の反対を押し切ったのだろう。


 その理由にハイエス伯爵家の人間が関わっていると知れたら、皇太子を前に代々のハイエス伯爵家にまつわる数々の悪い噂を披露してくれるに違いない。


 全部が全部嘘ならば、しらを切り通せばいいのだけど、私が関わっている部分に関しては真実である部分がほんの少しだけある。例えば、発狂した人間がいるとか、暗黒街に多くの手下を持っているとかなのよね。


 それが誘拐犯だったり、誘拐犯の手下たちだったするだけなのだが……


 誘拐犯がほぼ単独で行われたらしく。それ以上の追求はされず軽い罰しか受けなかった彼らだったが路頭に迷いそうになっていた。


 そこで領民の成り手がいなかったため、収入が減り続けていた伯爵領に誘うと一も二もなく了承してくれた。決して彼らのボスが発狂したことで脅して連れてきたわけではない。世間はどう思ったかしらないけれど……


 別に慈善事業などするつもりはなかった。彼らに、より悪い噂を広められたくなかっただけなのよね。お人好しの父に頼んだところ、僅かだが資金を出し、表の商売ができるように取り計らってくれた。


 もちろん、彼らは裏の世界の人間だ。表の商売で得た資金を元手に裏の商売に手を出し始めたらしい。表の商売の配当は伯爵領として掛け替えの無い収入のひとつになりつつあり、切捨てられない。その彼らが我が家に出入りすることで、裏の顔を持つ彼らを知っている人物から、より悪い噂を流されるという、はめになっている。


 最近は開き直って、魔王討伐の情報収集の際に彼らのネットワークを使わせて貰ったりしたから、自業自得な一面があるのだけれど……あんまりよね……

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