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腐女子の悪役令嬢は復讐を果たせる?  作者: 一条由吏
第1章 寝取られた悪役令嬢
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プロローグ

 ハァハァハァ。もう走れない。


 現実の男に夢を見たのがバカだったわ。


 県庁所在地にある御城跡の公園が有名なハッテン場という情報をネットから拾った私は、夜中に車を走らせ覗きに行ったのが間違いだった。


 まさか男の娘と間違われるなんて!


 しかも美しさのカケラも無いデブやハゲのおっさんが襲い掛かってくるなんて!!


 まだ、40歳過ぎでもスラリとしたイケメンなら、男の娘のフリをして、差し出しても良かった。それこそ、妄想の中で男の娘になりきることもできる。でも、あんなおっさんたちじゃ無理!!!


「ようやく見つけたぞ。こんなシチュエーションを待っていたのだろう? 好き者だよなあ。お前も。」


 こんなところへ出入りする男の娘は、そんな願望を持っているのか。襲われそうになって逃げ出し男たちの欲望をそそる。


 誘い受の極致! 勉強になるな。


 そんなことを心のメモ帳に記憶している場合じゃない。さて、どうしたらいいのか。身包み剥がされて、女性だと分かれば止めてくれるかな。


 イヤイヤだめだ。性転換後もこういった場所に出入りしているTSも居ると聞いたことがある。これ幸いとそういった趣向を持った人にイタダかれてしまう。


 処女だから性転換後の拡張に失敗した人という設定で実地訓練をするしか無いかも!


 これだけの男たちを相手にすれば、今後の同人誌にリアリティーあふれる作品を書けるだろうか。


 それともマッサージサロンで鍛え上げたテクニックを駆使して、この場を乗り切ろうか。


 いやそれでは、こちらが誘ったことになってしまう。それでは賠償金も請求できなければ、男たちを社会から抹殺することもできなくなる。


 男の検事にイヤラシイ質問に答えることも、たいした問題じゃない。脳内でS男とM男のやりとりに変換すればいいのだ。


「もう諦めたか。でも抵抗はするんだろう? できれば顔に跡はつけないでくれよ。明日も仕事があるんだからよ。」


 大人しくなった私を目の前のおっさんたちが勝手に解釈する。なるほど男の娘もリアリティーを求めているのね。多少抵抗したほうが良いのかしら。


 目の前の男に羽交い絞めされる。


 うわっ、鳥肌立った!


 やっぱり嫌!!


 初めては、カモフラージュ要員として男夫婦の子供を産むために身体を提供するのがいいの!!!


 私は目一杯抵抗をする。股間を蹴り上げようとするがガードされてしまった。


「面倒だな。少し気絶してもらおうか。」


 あまりにも強い抵抗を示す私に業を煮やしたのか、目の前の男が私の首に手を掛ける。男の力で男の首をしばらく絞めると気絶するというのは都市伝説とばかり思っていたけど本当だったのね。


 私は薄れる意識の中で心のメモ帳に記憶するのだった。



     ◆



 悪夢の硬直がとれ、ようやくベッドから起き上がることができる。


「なんで前世の夢って殺されるところばかりなのかしら。耽美小説の舞台とか耽美小説のアニメとか夢見てもいいと思うのだけど……」


 ここはロシアーニア国の後宮。私、アレクサンドラ・アール・ハイエスはもうすぐ、ロシアーニア王家の一員になる。


 黒い噂の絶えないハイエス伯爵家令嬢として生まれ変わったときには、先に続くであろうバッドエンドに怯えていた……。


 別に悪人ヅラって訳では無い。鏡を覗いてもこの世界では、ごく平均的な顔。母親似の小顔に父親似の色白さ。自分で言うのもなんだけど、そこそこ美人の部類に入るかな。


 でもなぜか、穏やかに笑っていても高笑いしているように聞こえ、さめざめと涙を見せても嘘泣きしているように見えてしまう。そして睨むと硬直して暫く動けなくなる。この一族には人の感性を錯覚させてしまう何かがあるらしい……。


 きっと祖先の誰かが善人ヅラの裏であくどいことをして呪いを掛けられたのかもしれない。


 黒い噂があるというだけで公然と侮辱的言動を向けてくる奴らさえいる始末である。幼いときには感情を制御できず、全力で睨み返してしまい相手を発狂させてしまったことさえあった。


 人々は『心折の微笑』などという、ありがたくもない称号を与えてくれた。


 語るも涙、語らぬも涙。バッドエンド回避のため、ひたすら王国を思い、民を思う生活を続けてきた。


     *


 魔王出現が大きかった。異世界である現代日本からの召喚者の一人であるショウコさんが転生者であることを理由に仲間に引き入れてくださったのだ。


 転生者特有の『勇者』という称号と幾つかのスキルを持つことを教えてくれた。転生の際に現代日本の神と会いスキルを与えられたはずなのだがその部分の記憶は欠落している。


 その中に『威嚇』というスキルがある。これは相手に恐怖心を植え付けるスキルで魔王討伐の戦いのため、酷使しつづけたためか最後には魔王直属の部下である四天王にさえも効力を発揮した。


 おかしいと思っていたのだ。常に黒い噂が流れているハイエス伯爵家だが、その内情は火の車。代々共同で事業を起こす相手にも恵まれず、ただ与えられた領地を守ることだけに専念していたのだが、私の母が浪費家でその領地も切り売りする始末だった。


 この睨みつけることで相手を硬直させる能力は、私だけだったのだ。おそらく、前世で殺されたことに起因しているのだろう。もしかすると、そう神に願ったのかもしれない……。


 こんな能力が一族にあれば、没落寸前の状態には陥らなかったであろう。


 今は魔王討伐で得た私の資産でなんとか伯爵家を支えているのが現状だ。


 そのショウコさんも現代日本に王宮筆頭魔術師ラスの『送還』魔法で帰ってしまった。もう一人の召喚者ユウヤは、幼き王女との婚姻が決定し、次代の王となるべく研鑽に励んでいるらしい。


 そして、私も王族の一人であるハミルトン王子と婚約したのだが……。


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