表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

プロローグ

「お父さん、これなぁに?」

少年の父親が仕事帰りの土産と言って少年に渡したものは、ペンダント。

「これは、ペンダントだよ。だけどただのペンダントじゃない」

父親はしゃがみ少年の目線と位置を合わせた。整えられた髭、澄んだ目、少年に向けて微笑んだ父親はタバコのニオイを纏っている。

「これは・・・このペンダントは、すごい力を持っているんだよ」

「すごい・・・力?」

”すごい力?”このペンダントに? どういう意味なのだろう?

到底理解はできなかった。

「理解はできないだろうけど、いつかはわかるさ。」

父親は少年の頭を撫でた。そして人差し指を少年の目の前で立てた。

「水都、一つ約束だ。このペンダントを必ず自分の周りに置く事。そうすれば、”すごい力”っていうのが何なのか分かる。どうだい守れるかい?」

「うん。わかった」

少年はその”すごい力”が何なのか興味が湧き、すぐに承諾してしまった。

「よし」と父親が言い、立ち上がる。

「さて水都、またお父さんは仕事に行かなくちゃならない。お母さんの話はちゃんと聞くんだぞ?」

「うん。わかった」

父親はここ最近、家に帰ってはまた仕事へ戻るということが多くなった。

ドアを開けた瞬間、父親は「あっ」と声を発した。

「水都、そのペンダントのデザインは模様じゃなく文字だ。何の文字か分るかな?」

少年はペンダントを手に取り、輪に吊り下がった部分に目をやる。

「ううん。わからない・・・・・・丸に・・・線が刺さってる・・・」

「それは、”ファイ”って言うんだよ」

「ファイ?何それ?」

「まあ、わからないのも無理はない。なんせ高校くらいから知る記号だからね」

「また帰ったら、教えてあげるよ」

「うん」

少年は返事をし、父親を見送った。


しかし、父親は七年経っても家に帰ることはなかった。どこに行ったかもわからず、父親名義で家にお金は送られてくるが、どこから送っているのかは分からなかった。

十六歳の高校生になった少年は、いまだにペンダントを持ち続けている。


そのペンダントが”すごい力”を少年の前で見せたことは一度もない・・・。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ