シグマ帝国物語(総合編)
その星は銀河系の中心部にあった・・・。今もある・・・。
銀河系を中心に影響力を持つシグマ帝国本星である。
今から約1億年前、シグマ帝国本星はワープ航法が可能な超高度文明に達した。
しかし順調に超高度文明を実現したわけではない。
中途半端な文明、概ね現在の地球文明程度の文明は2度滅んだ。
最初の文明は、地球で言えば古代ローマ時代から数世紀後にガリレオガリレイやレオナルドダビンチのような科学者が出、さらにワットのような蒸気機関、エジソンのような沢山の発明により、地球で言えば10世紀ぐらいの年代に、20世紀ぐらいの科学技術を持った文明が成立していた。
そこでは政治や社会体制は地球で言う10世紀ぐらいの成熟度であって、現在の地球に見られるアフリカの内戦状態が星全体を覆っていた。
日本における源平合戦や、戦国時代の覇権争いが、弓矢ではなく、機関銃や地雷を使って行われていたのである。
そのため、星全土の多くは地雷原と化し、安全に耕作できる土地は限られ、飢餓地獄が蔓延していた。
そしてついに核兵器が開発され、全星規模の大核戦争によって、最初の文明は地上からは事実上滅び、核の冬が襲った。
ほんの少数の科学者達は地下にもぐり、細々と科学技術を受け継いでいった。
やがて核の冬は過ぎ、地上では2回目の文明が一から歩みだした。
古代ローマ時代のような時代が再びやってきた。
地下にもぐった科学者達は、地上にキリストのような宗教者を送り込み、聖書が神によって書かれた言葉としてその教えを広めていった。
聖書には、正しい科学技術と反対のことを書き、正しい科学技術の芽は、魔術であるとして教会の権威をもって摘み取った。
ガリレオガリレイのような科学者は宗教裁判で弾圧し、それを見たレオナルドダビンチのような科学者に、自分のアイデアを世に出すことをためらわせた。
そのかいあって、兵器技術もそれ程発達せず、星全体が地雷原となることはなかった。
19世紀ぐらいになって、政治や社会体制が成熟してきたので、地下文明は、地上文明のワットのような蒸気機関やエジソンのような各種発明を弾圧しなくなった。
しかしながら中途半端に進んだ科学技術により、公害が発生し、環境は悪くなり、温暖化の影響で海水面が急に上昇し、海辺の都市を呑み込んだ。
最初の文明のような壊滅的な終焉ではないが、第2の文明は少し後退した。
第3の文明は、後退した第2文明の途中から始まり、第2文明での失敗をしないように、何とか文明を発展させ、環境や資源不足にも配慮した資源循環型社会を実現し、永続的に科学技術を発展させた。
そしてついに宇宙飛行が自在になる程度の超高度文明を達成した。
資源循環型社会を実現したとはいえ、宇宙資源を活用したほうがコスト的に安上がりな資源は宇宙に求める方向になっていった。
太陽系で言えば、タイタンのメタンの海から燃焼資源を取り出したりした。
太陽系内の資源を利用できる段階で、資源を気にしないで科学技術が発達していって、ついにワープ航法が可能な文明となり、別の太陽系の恐竜時代のような星の地下資源を採掘して更に科学技術を発展させた。
ワープ航法も素人でも行える程度に普及した頃、別の太陽系に古代ローマ時代のような星が幾つか発見され、自分達の歴史の反省から、未開星を導いていこうとした。
自分達の現実の歴史を参考に、かくあるべしと思われる歴史を聖書に書き、未開星にキリストのようなものを利用して、その歴史の予言のとおりとなるように導いた。
そうしてその未開星は3000年後、ワープ航法も可能な超高度文明に達した。
そしてその星は更に他の新たな未開星を導き、
その導かれた星もその3000年後、超高度文明に達した。
かくして地球に対して、今から2000年前あたりから、それらどれかの超高度文明からの導きが始まった。
テレビ
ベータ星、シータ星、ガンマ星団の独立運動の映像が流れる。
ベータ星実況アナウンサー
「ベータ星では、シグマ帝国の支配がベータ星の伝統を踏みにじっているとして独立運動が起きています。ベータ星は100年前に星として統一を見、統一政府は大統領制共和制を敷いていたところです。
シグマ帝国は封建制に近い体制であり、この付近の星団を支配するのはハプス家であって、ベータ星を支配するのはその分家であるベータハプス家です。
今から50年前、シグマ帝国はベータハプス家をベータ星に設立することを画策しはじめました。ベータハプス家は、初代当主オンドレア・ハプス1世がハプス家の機甲師団を率いてベータ星に攻め入り、共和政府を乗っ取り、シグマ帝国の国家経営指導法に基づくベータ星国家経営指導官として、いわば破産管財人のような形でベータ星の支配を続けてきました。
それをシグマ帝国は20年前共和政府を完全に解体し、ベータハプス家当主を征ベータ大将軍に任じ、ベータ幕府を開かせ、老中、奉行等を置き、有力な企業家を各藩として再構築していきました。
地方政府ではなく、有力企業を各藩としたため、労働者の権利は完全に無視され、悲惨な生活を送らざるを得なくなった模様です。
労働者の反乱が各地で勃発し、それが今回の独立民主化運動に発展してきたものと思われます。」
シータ星実況アナウンサー
「シータ星では、シグマ帝国によって奴隷化されたシータ星人の独立運動が起きています。シータ星は星として統一を見ていませんでした。そこへシグマ帝国と結びついたシータ星の中では3番目程度に有力なバイセルン王国がシグマ帝国の高度先進軍事技術を利用して、強引に星としての統一をしました。
シータ星の住人全般はもとよりバイセルン王国の軍関係者の多くも、シグマ帝国の存在は知らず、一握りの軍事技術研究者が、最先端の軍事技術を開発したので、王国は世界統一したと思い込んでいたようです。
このバイセルン王は征服した国の国民を奴隷化し、悪政の限りを尽くしているようなので、バイセルン王国からの独立運動が起こりはじめました。その後、シグマ帝国の存在を知ったシータ星人は怒り心頭、独立運動が更に激化しました。」
ガンマ星団実況アナウンサー
「ガンマ星団では、200年前にガンマ星団帝国として13の太陽系の人類惑星として統一を見、約50の生存可能な惑星に植民地を開いた星団統一政府があったのです。
シグマ帝国との宇宙星間戦争に敗れた後は、植民地たる惑星のうち、資源の豊富な植民地は全てシグマ帝国の支配下となり、元々の星団構成惑星は、資源不足で時代が逆戻りし、中世風の生活を送らなければならない地域も存在する星が増えました。星団統一政府は崩壊し、今ではシグマ帝国の直轄領としてそれぞれの星に総督府が置かれ、植民地支配となっています。
元々宇宙星間戦争をする程度の文明がありましたが、今では13の惑星のパルチザンが密かに連絡しあって、各星の地上の各所でゲリラ戦を行っています。」
シグマ帝国皇帝
「いろんな星で反乱が起きているようだな。独立を求めている星がいっぱい出てきたな。
このままでは帝国の軍事力で抑えきれないぞ。宇宙星間戦争なら科学技術の差は歴然、シグマ帝国にかなう星などないが、ゲリラ戦となれば、それだけに対応する兵士の数が足りんだろう。」
シグマ帝国首相
「皇帝、いっそのことシグマ帝国の直接支配をやめましょうぞ。
独立したい星は独立を認めていきましょうぞ。」
シグマ帝国国防相
「星単位より細かい単位で独立国家を認めればよろしいのでは?」
シグマ帝国大蔵相
「シグマ帝国の財界を取りまとめて、皇帝はその総帥になられてはどうですか?
まずはシグマ銀行の総裁になられて、各市中銀行に影響をつけて、そこから財界を支配しましょう。
独立を認めつつ、独立した星の財界を味方につけましょう。
独立した星には、高福祉低負担の世論を高めて、公共事業も乱発させて、借金漬けにした上でシグマ銀行からどんどん融資しましょう。」
シグマ帝国皇帝
「融資したお金が返ってこなかったら銀行を中心とする経済社会が破綻するではないか。
言っていることがよく分からんが・・・。」
シグマ帝国大蔵相
「つまりこうです。
高福祉低負担や公共事業の乱発で各星の政府は赤字になります。
でもその高福祉や公共事業のお金は、どちらにせよ民間企業に流れます。そのお金の流れ先である民間企業すなわち財界とつるめば、そこからシグマ銀行を中心とする銀行にお金が集まります。
預金者は預けているお金の全てを直ぐに下ろしに来るはずがないですから、お金を各星の政府に貸すのです。
各星の国民はどうせわがままですから、世論に任せておけば、大借金国家があらゆる星で生まれます。
最初のうちは、普通にお金を貸すのです。
そのうち返せなくなります。借金を返すために借金しなければならなくなります。
借金を返すための借金をする段階で、シグマ銀行の影響下にある企業に有利な政策を採るように各星政府に要求するのです。
いいなりにならなければ、借り換えのための借金は断るのです。
断ると国家財政が回らなくなりますから断りませんよ、どの星の政府も・・・」
シグマ帝国皇帝
「まずはベータ星、シータ星、ガンマ星団から手を引こう。」
ベータ星独立協議の会場
シグマ帝国大使
「独立は認める。しかし、シグマ帝国の各企業の経済活動は、今までどおり保障していただきたい。経済活動が妨げられれば軍事行動に出ることも考えている。軍事行動に出るほうがデメリットが大きいと思える程度に経済活動の自由を保障していただきたい。」
ベータ星代表
「勿論だ。」
シグマ帝国大使
「では、大筋で合意だな。あとは事務レベル協議に委ねよう。」
ベータ星代表
「同意。」
ベータ星代表団同士の会話
副代表
「なぜ、早々に独立を認めてくれたんだろう?何か裏があるんだろうか?」
代表
「私もうまくいってかえって不安だ。大使はああ言ったがシグマ帝国としては知らないなどと後で全部ひっくり返されるんだろうか?」
事務レベル協議の結果報告の部屋
ベータ星代表
「事務レベル協議の結果概略は?」
ベータ星事務レベル高官
「特に問題はありません。民間企業活動に関係する法体系はシグマ帝国の法体系と合わせることにはなりましたが、これは想定内でしたでしょう?」
ベータ星代表
「そうだな、経済活動は宇宙統一ルールでないと、我々の側もやりにくいからな。」
シータ星独立協議の会場
シグマ帝国大使
「独立は認める。しかし、シグマ帝国の各企業の経済活動は、今までどおり保障していただきたい。経済活動が妨げられれば軍事行動に出ることも考えている。軍事行動に出るほうがデメリットが大きいと思える程度に経済活動の自由を保障していただきたい。」
シータ星代表
「勿論だ。」
シグマ帝国大使
「では、大筋で合意だな。あとは事務レベル協議に委ねよう。」
シータ星代表
「同意。」
シータ星代表団同士の会話
副代表
「なぜ、早々に独立を認めてくれたんだろう?何か裏があるんだろうか?」
代表
「私もうまくいってかえって不安だ。大使はああ言ったがシグマ帝国としては知らないなどと後で全部ひっくり返されるんだろうか?」
事務レベル協議の結果報告の部屋
シータ星代表
「事務レベル協議の結果概略は?」
シータ星事務レベル高官
「特に問題はありません。民間企業活動に関係する法体系はシグマ帝国の法体系と合わせることにはなりましたが、これは想定内でしたでしょう?」
シータ星代表
「そうだな、経済活動は宇宙統一ルールでないと、我々の側もやりにくいからな。」
ガンマ星団独立協議の会場
シグマ帝国大使
「独立は認める。しかし、シグマ帝国の各企業の経済活動は、今までどおり保障していただきたい。経済活動が妨げられれば軍事行動に出ることも考えている。軍事行動に出るほうがデメリットが大きいと思える程度に経済活動の自由を保障していただきたい。」
ガンマ星団代表
「勿論だ。」
シグマ帝国大使
「では、大筋で合意だな。あとは事務レベル協議に委ねよう。」
ガンマ星団代表
「同意。」
ガンマ星団代表団同士の会話
副代表
「なぜ、早々に独立を認めてくれたんだろう?何か裏があるんだろうか?」
代表
「私もうまくいってかえって不安だ。大使はああ言ったがシグマ帝国としては知らないなどと後で全部ひっくり返されるんだろうか?」
事務レベル協議の結果報告の部屋
ガンマ星団代表
「事務レベル協議の結果概略は?」
ガンマ星団事務レベル高官
「特に問題はありません。民間企業活動に関係する法体系はシグマ帝国の法体系と合わせることにはなりましたが、これは想定内でしたでしょう?」
ガンマ星団代表
「そうだな、経済活動は宇宙統一ルールでないと、我々の側もやりにくいからな。」
かくして、ベータ星、シータ星、ガンマ星団は、シグマ帝国から独立し、シグマ帝国と対等な立場でクロム連邦を設立した。
ベータ星、シータ星、ガンマ星団以外にも大小30あまりの星や星団国家が独立していった。ただ、シグマ帝国は優越的な軍事力経済力を背景に、資源豊富な殖民星は手放さなかった。
資源豊富な星を独占していたシグマ帝国であったが、資源を高く売りつけるようなことはせず、採掘経費に適正な利潤を上乗せする程度の値段で、独立した星や星団国家に供給した。
そのような中、デルタ星が、シグマ帝国企業に重税を課した。
デルタ星テレビ国会中継
オンドレア議員(シグマ帝国企業重税法案提出者)
「企業はその体力に応じて、納税をすべきです。個人が累進課税なのに、法人すなわち企業は累進課税になっていない。これでは、強い企業は更に強く、弱い企業は更に弱くなっていくでしょう。国家の恩恵は企業規模が大きくなるほどだけでなく、利益を上げている企業に多くの恩恵が生じているのです。
例えば、銀行が債権を取り立てるに際して、訴訟を起こすとします。その訴訟で銀行が主張したある理論が判決で認められたとします。そうすると、他の類似案件を抱えている大銀行は、その判例で確立した理論を用いて他の類似案件を有利に展開することができます。一つの訴訟の努力が十いや百の訴訟に利用できるのです。
それに対して、中小企業や一般市民はどうでしょう。その訴えられた一つの訴訟で、自らの主張する理論が認められたとしても、他に訴訟を抱える規模ではないので、その努力はその一つの訴訟でしか恩恵を受けないでしょう。
知的財産権の保護にも国家の経費が掛かっています。地道な物づくりで利益を確保するには、その物を引き渡すのと引き換えにお金を貰うという形で、国家のお世話にならなくても利益が確保できる余地があります。しかし主として大企業が持っている知的財産権は、国家装置による保護がなければ利益が確保できません。」
クソッタレ議員(法案反対者・シグマ帝国企業の息が掛かった議員)
「知的財産権や債権回収は、地道な物づくりよりも、国家装置の保護がなければ利益に繋がらないという面はありましょう。しかし地道な物づくりは社会にはその物分の利益を与えていないことが多いでしょう。これに対して知的財産権は、知的財産権者の私益だけでなく、社会全体に利益を与える影響力があります。国家装置の保護が地道な物づくりより必要だとしても、その経費は社会への貢献という形で返しているのであります。」
テレビ中継終わり
テレビ局アナウンサー
「このような議論がなされた後、採決が行われ法案は可決しました。」
シグマ帝国皇帝
「デルタ星はケシカラン!資源の価格を倍にしてやれ!」
シグマ帝国経済産業大臣
「そのように画策いたします。」
シグマ帝国経済産業省資源局長からシグマ石油社長へ(電話)
「シグマ石油さん。デルタ星への原油の供給についてですが、価格を倍にしてやってはもらえないですかね。これは皇帝のご意向です。」
シグマ石油社長
「わかりました。」
シグマ帝国経済産業省資源局長からシグママテリアル社長へ(電話)
「シグママテリアルさん。デルタ星への金属類の供給についてですが、価格を倍にしてやってはもらえないですかね。これは皇帝のご意向です。」
シグママテリアル社長
「わかりました。」
かくして、デルタ星への資源供給価格は倍になり、デルタ星は不景気になった。
税収は上がらず、やむなく国債を乱発し始めた。
ベータ星、シータ星、ガンマ星団などクロム連邦各国では、シグマ帝国の息の掛かった国会議員が公共事業の乱発と高福祉の実現に動いた。
ベータ星テレビ国会中継
テスター議員(高福祉法案提出者)
「ベータ星の福祉はなっていない。シグマ帝国を見習ってきちんと福祉を充実させるべきである。」
ランチャー議員(高福祉法案反対者)
「シグマ帝国は、資源の豊富な星を独占しているから高福祉が実現できるんだ。うちの星でシグマ帝国と同じことをやったら財政は破綻するのが目に見えている。」
このような議論があった後、国会議員の総選挙があり、高福祉法案反対派の多くの議員が落選し、次の国会で高福祉法案は成立した。
これらの星では、高福祉を支えるため、増税議論が活発化した。
ベータ星テレビ国会中継
アンナ議員(シグマ帝国企業重税法案提出者)
「企業はその体力に応じて、納税をすべきです。個人が累進課税なのに、法人すなわち企業は累進課税になっていない。これでは、強い企業は更に強く、弱い企業は更に弱くなっていくでしょう。国家の恩恵は企業規模が大きくなるほどだけでなく、利益を上げている企業に多くの恩恵が生じているのです。」
ソレナ議員(増税法案反対派)
「デルタ星の例があるから、大企業狙い撃ち増税法案はやめといたほうがいい。」
チャンドラ議員(増税法案反対者・シグマ帝国企業の息が掛かった議員)
「国債を発行したらいいじゃないか。」
かくして、ベータ星、シータ星、ガンマ星団などクロム連邦各国では、国債を乱発しはじめた。
それから20年の月日が流れた。
シータ星では、国債の消化ができなくなりはじめていた。
この機にシグマ銀行シータ星総括支店長は、国債の引き受けを申し出た。
シータ星財務長官はその申し出を受けた。
シグマ銀行シータ星総括支店長
「国債の引き受け手がないのであれば、シグマ銀行が国債の引き受け手になる用意がありますが、そのためには、当行を支えているシグマグループの各企業が、シータ星において、自由で活発な経済活動を行えていることが前提です。シグマ銀行への預金者でもあり融資先でもある主要取引先が苦境に陥ると、シグマ銀行自体の経営にも少なからざる影響がでます。
デルタ星政府のようなシグマグループを狙い撃ちするような増税がなされたら、その先は国債の引き受けを継続するとこができなくなります。
シータ星財務長官
「デルタ星のようなことは、もはやどの星の政府もやらないはず。シータ星政府もそのつもりである。高福祉実現賛成と増税反対の国民がいる以上、国債を発行しつづけなければ、選挙を闘えない。」
かくして、シータ星は借金まみれの状態のまま、お金は回り続けることになった。
国債借り換えに必要な資金はシグマ銀行が出した。
その反面、政府に対してシグマグループに有利な政策をとるように圧力をかけた。
シグマグループ企業と政府との協議の場・・・
シグマ電機のシータ星子会社、シータシグマ電機社長
シグマ自動車のシータ星子会社、シータシグマ自動車社長
シグマ建設のシータ星子会社、シータシグマ建設社長
「労働者の賃金が高くなりすぎているから、特区を作ってそのエリアの工場労働者の賃金は抑制すような法律を制定してもらいたい。」
シータ星労働長官
「それは国民の理解が得られない。すくなくとも、シグマグループ企業にだけそのような例外を設けることはできない。」
シグマ銀行シータ星総括支店長
「それではこの先国債を引き受けることは中止しましょうか?シグマグループ企業にだけ賃金を抑制する制度にしないと、他の企業の賃金も抑制すれば、シグマグループの利益にならないのでそのあたりも配慮願いたい。」
シータ星財務長官、労働長官
「それは困る。何とかシグマグループ企業の賃金を下げることのできるように考えましょう。」
シータ星閣僚懇談会の場。
シータ星労働長官
「シグマグループ企業にだけ賃金を抑制する制度にしないと、他の企業の賃金も抑制すれば、シグマグループの利益にならないというのが一番のネックだなあ。」
シータ星防衛長官
「シータ星防衛軍には沢山の兵士が居るが、平時には全ての兵士が必要というわけではない。警察にも機動隊があるが同じような事情であろう。その兵士の給料を払うだけでも政府としては大変だから、防衛軍とシグマグループと共同で特別な派遣会社を設立して、兵士の給料の一部を政府が負担することで、シグマグループの実質支払い賃金を抑制するようにしてはどうか?」
シータ星財務長官
「しかし、防衛軍が兵士の給料を節約するために民間企業と共同で派遣会社を設立する場合に、シグマグループと必然的に組む理屈は困難ではないか?競争入札して他の企業の参入も予定しないといけないのではないか?」
シータ星防衛長官
「平時に必ずしも必要でない兵士数は多少あると思うが、日頃から訓練をしなければならない。そのタテマエを前面に押し出して、シグマグループ以外の企業が防衛軍とは派遣会社を設立することを辞退させる方向に持っていき、もし辞退しなければ、訓練の回数を増やして結局派遣事業から撤退するようにもっていき、シグマグループが応じた場合は、訓練の回数を減らせばよいのではないか?派遣する兵士の質も派遣会社を設立する相手方に応じて調整すれば、結局シグマグループだけが残るであろう。」
かくして、シグマグループは優良な防衛軍兵士を安く使って利益を上げ、他の企業は衰退していった。
シグマ銀行シータ星総括支店長とシータシグマ建設社長の会話
シータシグマ建設社長
「公共事業を当社が優先的に受注できるようにできないものか?」
シグマ銀行シータ星総括支店長
「競争入札だから制度的には無理だが、いまやシータ星政府は完全な財源不足。
シータ星政府ではなく、シグマグループが公共事業の事業主体になれば、実質的にシグマ建設さんはじめシグマグループが事業を受注できるはず。」
シータシグマ建設社長
「どんな風にするんですか?」
シグマ銀行シータ星総括支店長
「公共事業には絶対額が必要。今の政府には、国民が要求する事業を賄える財源はない。そこで、外郭団体を事業主体とさせて、シグマ銀行が指定する企業に受注させることを条件に事業主体に融資を行うことにする。
条件を呑まなければ事業そのものができない。
オンブズマンが文句を言ってきても、国民に対して『じゃあ事業そのものを止めますか?』と問いかければよいではないか?」
かくして、公共事業は乱発され、オンブズマンが文句を言っても、事業そのものを願う地元住民によって不適切な業者選定問題は不問に付された。
ますます、シータ星の財政状況は悪化した。
しかし相変わらずお金は回り続けた。
シグマグループのいいなりの政府ではあったが、シグマグループそのものが政府が成り立たない無茶苦茶なことは要求しなかった。
そして、シグマ銀行及びその影響下の金融機関はあらゆる方面に融資していた結果、シグマグループの横暴を非難すれば貸しはがしにあうので、誰もシグマグループの横暴を非難できなかった。
そんな中、これではシグマ帝国に支配されているのと同じではないかと主張するオオイズミ議員らのグループが国会で勢力を伸ばしてきた。
あからさまにシグマグループの非難ができない国民も、秘密投票制度は確立していたので、オオイズミ議員を大統領に選んだ。
オオイズミ大統領は、構造改革に取り組んだが、次の年からシグマ銀行が国債の引き受けを止めたので、お金が回らなくなってシータ星政府は機能不全となり、大混乱に陥った。
ベータ星、ガンマ星団などクロム連邦各国では、デルタ星、シータ星の失敗を教訓にシグマグループによる実質支配を受け容れることを選択した。
シータ星も大統領が変わり、シグマグループによる実質支配を受け容れることを選択した。