Story2-3
ロストヴァ「戦闘機の乗り心地はどうだった?あんまりいいもんじゃないでしょ?」
カチューシャ「どうしてそのことを知っているのですか?」
ロストヴァ「まあ、とりあえず椅子に掛けて。紅茶もアプリコットジャムもあるわよお気に召さないならミルクティーでもいいわよ?」
とりあえず私は椅子に腰掛けることにしました。紅茶もアプリコットジャムを使いながら飲むのが私の中の常識だったのでそのままで構わないと言いました。
カチューシャ「それで、なぜ私が戦闘機に乗っていたことを知っているのですか?」
ロストヴァ「とても簡単な事。あなたがこの世界に来る時は正規ルートを通っては来ないから当然服装も向こうの世界の服がそのまま表れる。まあ炎の洞窟を通ってくるんじゃ裸同然で入ってこなきゃならないから相当恥ずかしいって聞いたことがあるわね。」
カチューシャ「なぜ正規ルートで私は入らなくて済むのですか?」
ロストヴァ「そもそも正規ルートと呼ばれるもの自体が一般的な人間が入ってくる代表的なルートというだけなのよ。死肉を食すグールの寝床を抜けたり、夢のクリスタライザーでヒプノス監視のもとでの通行、それこそ幾千もの方法があるわ。その中でも私の監視のもとでの通行は一番自由度が高いわ。だって面白ければなんでも許可をするのだから。」
カチューシャ「ということは、私の方法はかなりの例外措置なのですね?」
ロストヴァ「その通りね。ただ、どんなルートも問題点が1つはあるわね。私の場合はこの場所からでしか移動拠点がないということ。このあたりには人家も何もないから。」
カチューシャ「どうしてないのですか?」
ロストヴァ「そもそも人間がいないようなところを考えて作ったからよ。簡単に人間と神様が会えたらまずいでしょ?それこそ日本の神社の初詣みたいなことになりかねないのよ?」
カチューシャ「ということは、ここは神様のいる土地なのですか?」
ロストヴァ「そういうこと。レン高原の遥か北に位置し、凍てつく荒野のカダスの山頂に位置する縞瑪瑙の城。過去ここに来た者は3人ほどしかいないわ。あ、神様に会おうと思っているのなら今はダメよ?全員どこかに出かけちゃっているから。」
カチューシャ「そこになぜ私は来れたのですか?それと・・・あなたは?」
ロストヴァ「私がエカチェリーナ・ロストヴァであることは知っているのだから・・・父と母の事だけでいいわね。父はいろいろなところを飛び回っている外交官みたいなことをしているわね。母は・・・いまだにどこにいるかわからないわね。それと、ここがもともと父の管理していた土地で、私がそれを譲り受けただけっていうだけね。」
カチューシャ「外交官・・・ですか?」
ロストヴァ「まあ政治にも科学にも魔術にも精通しているから、外交官とは少しだけ違うわね。」
カチューシャ「はあ。」
ロストヴァ「あ、このことは秘密よ。誰かに話されたら厄介なことになるわ。」
カチューシャ「・・・わかりました。2人だけの秘密ですね?」
ロストヴァ「そういうこと。で、こっからが本題なんだけど・・・あなたに見せたあの光景、もしその光景に出くわしたら一目散に逃げることを薦めるわ。」
カチューシャ「なぜですか?」
ロストヴァ「彼女がEMPを使うと思っているからよ。EMP・・・Electro Magnetic Pulse、通称電磁パルスと言われるものね。」
カチューシャ「それ、聞いたことがあります。確か高高度で核爆弾を起爆させるとおこるものだとか。」
ロストヴァ「その通り。範囲はとても広いとしか言えないわね。範囲内の衛星は全滅、電子機器はほとんどがダウンすることになるわね。それに伴った落下物も相当量になるはずよ。それこそ鉄の暴風ね。」
カチューシャ「ということは・・・。」
ロストヴァ「可能な限り逃げることが最良ね。どうしようもなくなったら・・・その時教えるわ。」
そんな話をしていると再び瞼が重くなってきました。
ロストヴァ「そろそろ起床時間みたいね。それじゃあ、また夜のお茶会で。」
カチューシャ「あ、はい。また夜のお茶会・・・で。」
瞼をそのまま閉じて、再び開けるとそこはミッドウェイ島基地のベットの上でした。