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VS.主人公!(旧)  作者: 阿漣
Ver.1.02 プレイヤー
24/252

22.新入部員集合


 前回の最後に描写しました充の所有職ですが「戦士」から「武芸者」に変更しました。

 当初は杖術使いなどの名称がしっくりせず、とりあえず暫定的に戦士にしていましたが読んだ方から若干の違和感が、というお話もありましたので上記の変更となりました。

 確かにこっちのがしっくり来る感じはしますね。


 それでは引き続きお楽しみ下さい。



 チャイムが鳴りホームルームが始まる。


 教室の窓から正門のほうを見ると遅刻してきた人たちがチラホラおり、一生懸命走ってきている者もいれば、もう諦めてのんびり歩いてきている者もいた。

 月曜日の朝は誰だって気が緩みがちだから仕方ないのかもしれない。

 もう結構な昔のことなので、オレは知らないが現在のように週休二日になる前は土曜日も授業があったらしい。あるときから週休二日に切り替わり連休になったため、さらに気が緩みがちになり週明けの月曜日に休み気分が抜けなくなる学生が増えたとか増えていないとか。

 ちなみに現在も土曜日授業の高校もあるが生憎うちの学校は週休二日なのである。


 しかしそんな休み気分は今のオレとは縁遠い。

 なにせ土曜、日曜共に盛大に体を酷使していたのである。昨日まででも十分に酷かった筋肉痛が今日はさらに強烈さを増していた。

 具体的には階段を上り下りするときに手すりを使わないとキツいくらいに。戦闘のせいもあったが正直山の登り降りが地味に効いていたということかな。

 これを毎週+毎日続けてる運動部って凄いなぁと思う。


 しかし本当に色々なことがあった一週間だった……。

 月曜日と火曜日はまだなんともなかったけど、水曜日からがハンパなかった…。


 5月8日(水):オンラインゲーム部に入った。夜頑張ってランニング始めたら、鬼と遭遇。よくわからない攻撃で死んだ。エッセに会って助けてもらった。

 5月9日(木):学校休んだ。実はこの世界はゲームで、出雲とエッセに色々教えてもらった。

 5月10日(金):装備を整えた。月音生徒会長を助けたら伊達副生徒会長に目をつけられた。

 5月11日(土):戦い方をちょっと習う。武器を買い直した。

 5月12日(日):初めての狩り。ちょっとだけレベルがあがった。


 うん、すげぇ密度だわ。

 この密度が毎週続いたら一年終わる頃には何がどうなるかわからないくらいの。


 とはいえ先のことも考えないといけないんだよなぁ、と考える。

 正直6月早々になれば中間テストもあることだし学校のほうに時間を取られるだろう。幸いオンラインゲーム部ということで部活動はそんなに負担にはならないわけだし、せめて5月についてはしっかり計画を立てて効率よくレベルアップするべきだ。


 ホームルームが無事に終わり1時限目が始まった。教科書を準備して適当に授業を受けつつ、さらに今後のことを考える。


 まずはレベルアップ計画だ。

 当面赤砂山で戦うのはいいとして、問題は頻度だ。本来なら毎日行くのがいいんだろうけれど、それはさすがに交通費(なんと片道190円、往復で380円もかかる。毎日いくとそれだけで月々の小遣いが吹っ飛ぶ計算である)と時間の問題で難しい。

 結論としては土日の両方で行くか、日曜日だけにするか、という問題だ。

 土日で行くことのメリットは単純にレベルアップのチャンスが2倍になる点、日曜日だけのメリットは出雲の同行が見込めるので安全度が高い点だ。

 どっちにしようかな…。


【レベルアップは急いだほうがよいと思うぞ?

 何せただでさえ出遅れておるのじゃからな。それに目をつけられた伊達とやらに、いつ見つかるかもわからん。せめて自衛の力は身につけておけ】


 それもそうだ。

 一人だと危険とはいっても、羅腕童子やら伊達副生徒会長に比べれば安全もいいところだ。では土日は狩場ということで何か予定がない限りは埋めておくとしよう。

 まぁ、月音先輩みたいな美人とのデート!とかだったら絶賛予定いれちゃうけど!


【そんな予定はまずないじゃろうから、安心せよ】


 ……いや、デートとか言ってみたかっただけなんです、ゴメンなさい。

 ん…?

 でも冷静に考えると、エッセは時間制限はあるものの実体化できるわけだし、実は四六時中彼女とデートしてると考えることもできるわけか。

 そう考えるとちょっとドキドキするなぁ。

 エッセも負けず劣らず美人なわけですし?


【……な、なにを気色の悪いことを言うておるんじゃ!

 いくら褒めても、わらわはおぬしの緊急事態以外では実体化したりはせん! そこのところを勘違いするでないぞッ!】


 …うわぁ、ゴメン、もうツンデレにしか聞こえません、それ。

 まさかリアルで聞ける日が来るとは…。

 思わずにやけそうになるのを我慢する。だって教室で授業中にいきなりにやけるとか不審過ぎるし。

 

 さて、話を戻そう。

 そうなるとあと4日は赤砂山にいける計算になるか。出雲に確認してもらったところ、1日で杖術のスキルと武芸者マーシャルアーティスト(なんでマーシャルアーティストなのかと思ったけども、調べてみると武術に英語をあてたのがマーシャルアーツらしいので、杖術とか武術やってる人はみんなこのカテゴリになるんだろう)があがっていたので、RPGのお約束的にレベルが上がるごとにどんどん上がりづらくなるとはいえ4日もあれば4レベルくらいにはなれるんではなかろうか。 

 よし、乳切棒の使用に必要な能力と技能を満たすことができるということもあり、4レベルを5月の目標とする。

 あとは費用的なものか。

 前回の狩りで得ることが出来たのは黒の風切り羽が10本。これは1本あたり5Pなので合計50P。蜘蛛火を倒してドロップした蜘蛛の糸が1つで20P。しめて70P分である。

 日本円にして2万円ほど。序盤の稼ぎでこれなんだから、さすが主人公プレイヤーの稼ぎ方は最高だ、やめられない。

 出雲への借金が最初の490Pにプラスして、乳切棒を買い直した50P、さらに河童の軟膏を2つ買い足したので合計560Pある。

 そのため狩りで得た70Pのうち60P分は出雲に渡した。これで借金がキリよく500Pになったわけだ。残りが10Pで河童の軟膏1つ分しかないが、伊達副生徒会長に食らった一撃のときと、昨日の狩りで1つずつ使ったものの、まだ2つはあるので補充はそこまで切羽詰まってないし安心だ。


【この調子でいくなら借金も問題なく返済できそうじゃの】


 だねぇ。 

 とはいえ、これまたRPGの定番で技量があがればすぐに次の装備を欲しくなるだろうし、あまり無駄遣いはできなそうだけども。

 1回の狩りで70P。蜘蛛の糸はドロップ確率が50%くらいのようなので計算しづらいのだけど、単純に考えれば4回分の狩りで280P稼げる計算になる。狩りを重ねてステータスが上がれば敵を倒す効率もよくなるだろうし、300Pを目標にするとしよう。

 で、そのうち50Pは薬代(河童さんに感謝?)として250Pを出雲に返却。

 計算上はなんと半分以上借金が返済できてしまうのでした。


 とりあえず5月の目標はそんなところか。

 生徒手帳で6月の予定をちらちらと見てみる。

 ふむ、中間テストが6月の前半にあって、その直前1週間がテスト休みになるのか。逆にいえばこの期間に無理に詰め込まないでいいようにしておけば、部活も休みになるし出雲に色々習うとか出来そうだな。

 5月の平日は簡単なトレーニングだけにしておいて学業に集中することにしよう。正直いつもテスト前になってから必死こいて勉強して間に合わせているオレですが、割と切実に命がかかっているので直前でなくてもきっと頑張れる!!……はず。


 今日の予定を立てているうちに無事に一日が終わる。

 放課後になったのでさっさと帰ろうと鞄の中に教科書を詰めていると、背後から関西弁の声がかけられる。


「今日はオンラインゲーム部の新入部員の顔あわせやろ。何帰ろうとしとるん?」


 あれ? ジョーってこんな声だっけ?

 振り向くと、そこにはそこそこ背の高い女の子が一人。おそらく165センチくらいだろうか? 肩口からすこし下くらいまでの髪を三つ編みにした結構勝気そうな感じの子だ。

 制服から1年生であることはわかるのだが見覚えがない。


「え…?」

「なんや、丸塚やんか。ミッキー、もう物忘れが入ったん?」


 いやいや、待て待て。

 ジョーは男だったはずだ。

 そんな実は女だった的な展開がまかり通るような女顔でもなかったはずだ!?


「ま、ええわ。はよ行こや」


 ぐぃぐぃ腕を引っ張られる。

 呆気に取られたままのオレは為す術もなく引きずられるように続く。出来たのは鞄を忘れないように持っていくことくらいだ。

 ただでさえ体中筋肉痛だというのに、無理矢理引っ張られて不自然に歩くとますます痛みが強くなる。だが抗議しようにも頭の中は軽くパニックを起こしていた。


 これは一体どういうことだ?

 まさかこれが出雲の言う世界の修整、というやつなのだろうか。何かオレが色々とおかしなことをしたから、学校のほうに歪みが出ているとか!

 どうなのさ、エッセ。


【…………】


 しかし答えはない。

 でも、答えられないというよりも沈黙している、という感じだ。

 一体どういうことだ…でも確かに腕を引っ張っているジョーは女性だ。腕を引っ張られてるときにあたる感触とか、男にはないものだ。見た目よりも結構あるなぁ、とか思ってしまった。


 つまるところエッセが答えないのはそういうことなのだろう。

 すまない、ジョー。だけどお前が女性になってもオレは変わらない友情を誓うからな。


「おぉ、来おったか。元気そうやないか」


 そう思っていた時期がオレにもありました、的な展開。

 そんなことはなかったぜ!

 女の子に引っ張られて引きずり込まれたオンラインゲーム部には、いつもと変わらぬジョーの姿。

 あっれぇぇぇ?


【……くっ、くくく、ははははッ】


 エッセがついに我慢できなくなったという感じで笑い出す。


「ん? どないしてん? ああ、そか。まだ紹介してんかったな。

 そっちのがうちの妹の水鈴みすずや。4月生まれの俺と、3月生まれの妹やから同じ学年っちゅう不思議な感じになっとるけど」


 ああ、道理で面影があったわけだ。

 そして春に子供生まれてから11ヶ月で次の子とか、ご両親頑張っちゃったんですね。

 ……と、そういう問題じゃない。さてはエッセ、気づいてたな?


【くく…っ、当たり前じゃろう。

 そちらの女子は丸塚以外名乗っておらんのだから、血縁者の可能性が最も高いというだけの話におぬしときたら……ふふふ、面白すぎて何も言えなんだわ】


 うぐぐ…。


「丈兄ぃ、わたしのこと紹介してへんかったんか? てっきりもう言うてるもんやと思て引っ張ってきてもうたやないか」

「すまんすまん、驚かせたろか思て」

「あー、ゴメンなぁ? わたし、丸塚水鈴や。丈兄ぃの言うてる通り、年は違うねんけど学年は一緒やからちょっと違和感あるかもしれんけど、仲良う頼むわ」


 すまなそうに自己紹介をしてから握手を求められた。

 悪い子ではなさそうなので握手を返しながら、


「あー、うん、ちょっと吃驚したけど大丈夫。三木充です」


 こちらも自己紹介を返す。


「オンラインゲーム部にいるってことは、ジョーが言ってた新入生の女の子がひとりいる、って言ってたのが水鈴ちゃんのことだったんだね」

「へ?」

「え?」


 うわ、なんか吃驚された。

 まずいこと言ったか?


「あー、すまん。水鈴のことは女の子とか思てなかったからついひとりて…ごぶぅっ!?」

「あは、イヤやわ、丈兄ぃ」


 今すっげぇ速度でビンタした。

 黒羽鴉の攻撃よりも倍は早かったんではないか。


「えと…つまり新入生のオレとジョー以外の2人は、実は両方とも女の子だったってこと?」

「そう! それや! さすがミッキー! 理解がはやい! ミッキーばんざーい!」

「うん、水鈴ちゃん、そのアホちょっと黙らせて」

「了解や」

「げふぅっ!?」


 笑顔で言うと水鈴ちゃんのツッコミがジョーに炸裂した。

 さすがにエッセや月音先輩ほど凄い美人ではないが、ころころと表情が変わって愛嬌がある可愛い女の子だ。これを女の子じゃないとか、もっと叩かれていいと思うぞ、ジョー。


「お、おかしい…。ミッキーは俺の味方やと思っとったのに…」

「普通、野郎と可愛い女の子だったら、女の子のほうを味方するだろ」

「い、いややわぁ、可愛いやなんて~」


 うぉ、怖っ。

 咄嗟に避けたからいいけど、今ツッコミがオレの顔があった位置を掠めたぞ。

 どうやらこれが水鈴ちゃん流の照れ隠しらしい。

 おそるべし。


 そんな感じでダベっているうちに部室には徐々に人が増え始めた。

 部長、副部長、先輩…。

 このへんの影の薄さは相変わらずである。多分オレと同じ一般NPCなんだろうな…重要NPCには見えないし。そう思うと何か切なくなってきた。


 そして残るひとりの新入生も入ってきた。


 眼鏡をかけた女の子。コンパクトなショートボブベースで、唇のラインから下にかけて毛先に段がついているため縦長のシルエットの髪型だ。身長はこちらも水鈴ちゃんと同じく160センチちょっと。目鼻立ちもハッキリしており結構可愛い。

 室内を見回してオレを見たその一瞬だけ目を細めたように見えたのだが、気のせいだろうか。


「初めまして。天小園あまこぞの 咲弥さくやです」


 あまり感情を感じさせない平坦な口調でそう告げた。



 三木 充。

 丸塚 丈一。

 丸塚 水鈴。

 天小園 咲弥。


 以上。

 今年のオンラインゲーム部に入部した新入部員である。




 今回も最後までお読み頂きありがとうございました。


 更新する元気にもなりますので、ご意見ご感想などございましたら是非お送り下さい。よろしくお願いいたします。


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