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VS.主人公!(旧)  作者: 阿漣
Ver.4.01 近づく夏と恋模様
209/252

207.ウマウマな話

 色々あった日曜日が終わり、また再び穏やかな一週間が始まる。

 だが、そんな平穏も月曜日早々に終わりを告げることとなった。


「……というわけで! ミッキーは海でどないな水着を履くんや?」

「いきなりだな、ジョー!? つーか、どういうわけだよ!?」


 具体的にはこんなやり取りで。

 昼休みの教室。

 それぞれ弁当や購買部で買ってきた食べ物などで食事を摂っている。


「いややなぁ~、ノリが悪い男はモテモテロード驀進でけへんで」

「そもそも昼飯喰ってるときにいきなり横からかけられた第一声がそれな段階で、ノリとか以前の問題だろ」


 ちなみに今日の昼メシはヤキソバパンである。

 炭水化物に炭水化物というわけのわからなさから入学当初は敬遠していたメニューではあるが、食べてみると中々イケる。

 冷静になってみれば同じ小麦から出来ており、大きなただのパンを食べているのと同じとも言えるわけだし、別に健康に悪いわけでもないんだから気にしないことにした。

 ファーストフード店で売っているクリームコロッケバーガーとかも同じことなわけだし?

 うむ、美味し。


「さ、さすがミッキー……そのマイペースさを崩すにはさらなるサプライズが必要なようや」

「いや、要らんってば。で、結局何が言いたいわけ?」

「ほれ、週末海に行くわけやんか? ミッキーはどないな水着を用意してるんか気になってな?」

「…男の水着気にしてどうするんだよ」


 そーいう趣味はないぞ、と続けると珍しくジョーからツッコミのチョップを受けた。


「ごふ!? いきなり何すんだよ! 危うく鼻からヤキソバ吹くところだったろ!」

「ミッキーがわからず屋やからやないかッ!! こっちかてそないな趣味はあらへん! あらへんけども、海やぞ! 海! おまけに今回は月音先輩を初めとして可愛い女の子がぎょーさん来るというメインディッシュ付きなんやぞ!!? なぁ理解しとる? ホンマに?

 そこで水着のタイプが被らんようにあらかじめ打ち合わせしとくくらいの気配りはないのか!?」


 凄い勢いで力説されて、思わずたじろいてしまう。


「そ、そりゃ悪かった……」

「おまけに海やさかい、水着で居るキュートガールは他にもおる。まかり間違えばそこであばんちゅ~る的な何かもあるかもしれへんのに………ふ、ミッキーはまだまだ子供やな」


 むぐぐ……。

 なぜか言い返せない。

 しかし水着かぁ。


「まぁ去年出雲たちと市民プール行ったときに買ったやつがあるから、それを使えば…」


 …って。、あれ?


【おぬし、実家からそのへんの荷物を持ち出せていないのではないか?】


 そういえばそーだった……。

 新しいのを買うしかないか。


「去年のをそのまんま使うやて!? かー! これやから童貞ボーイは困るねん。女の子たちは頑張って海に行く日のために水着を用意して、こっちを虜にするための努力をしてるに違わへんはずやっちゅーのに、それに対してミッキーときたら……!!」


 ちょ、おま…ッ…なんでそこまで言われなきゃいけないの!? 

 

【確かに。充に乙女心を分かれということのほうが無理難題じゃしな】


 エッセまでぇぇぇぇぇぇ。


 確かにジョーの推測通り、女性陣はわざわざ水着を用意してくれるみたいだけども。


「わかったって……新しいの用意しとくよ」

「素直でよろしい。せっかくやし一緒に行くか。

 こう、ちゃんと方向性が被らへんやつを選ばんといかんし」

「……男同士で水着選びに行くのってどうなんだろう…………」

「はっはっは、嫌やったら彼女見つけるしかないな!……なんや、自分で言うとって哀しなってきおった」


 なんという自爆。


「……という、ミッキーをおちょくるための冗談はさておき」

「今までの流れ全否定かよ!?」

「今日オンラインゲーム部で緊急連絡があるみたいやで。部室来れる奴はちょっとだけでも構わへんさかい顔出して欲しいっちゅう話やけど、聞いとる?」

「ん。メール来てたしな」


 何やら夏休みに関するお知らせらしい。

 先週は体バキバキで顔は出したものの、ロクに部活に参加してなかったしなぁ。

 前に入ったときの「自分がレベルアップしたらなぜかゲーム内の自キャラもレベルアップしてた事件」については、結局わからないままだったし、久しぶりにオンラインゲームに突入してそのへんを検証してみてもよいかもしれない。


「せやったら一度オンラインゲーム部のほうに顔出してから、買い物やな」

「あいよ」


 サクっと今日の放課後の予定が決まったところで、さっきからどうしても気になってたことを聞いてみることにした。


「ジョー、お前何喰ってんの? それ」

「ああ、これか? イナゴのトマト煮まん、略してイナまん!やな」


 …………それは果たして美味いのだろうか。


 残念ながらそれを聞く勇気までは湧いて来なかった。



 □ ■ □



 さて、放課後である。

 昼休みに約束した通り、ジョーと二人で部室へと足を運んだ。


「ちわー」


 ジョーが部室の引き戸を開けるのに続いて室内に入る。

 ケーブルがごちゃっとしたヴァーチャルリアリティ用のマシン2台と、それ以外のパソコン端末。申し訳程度に1セットだけ置かれた長テーブルには、おそらく誰か先輩によるものだろうと思われる手書きの攻略メモが散らばっている。

 そのうち一番上になっていた一枚をぴらっと捲ってみると、“黄金卿ゴールディオンの遺産迷宮”というところの地図のようだった。

 うげげ、1回目50レベルのPTで行ったのに途中で全滅してるのか、こりゃオレには当分縁がないところだろうな。

 興味を無くして紙を戻すと、先輩方も部室へと入ってきた。


「や」

「ミッキー! 今日も元気しとるぅ?」


 勿論咲弥と水鈴ちゃんもだ。

 結果10分もしないうちに部長を含めほとんどの部員が集合した。

 部長はその様子を確認して、


「よし、揃ったな」


 こほん、と一息入れてから真面目な口調で話し始める。


「みんなに集まってもらったのは他でもない。夏休み中の部活動についてだ。

 例年オンラインゲーム部は夏合宿を行っている」


 え? そうなの?

 合宿なんて運動部だけのものかと思ってたよ。


「はい、充くん、顔に出さない。確かにオンラインゲーム部は備品が持ち運びできるようなものではないから、合宿と聞いて驚くのも無理はないけど。

 だから合宿といってもそんなに大袈裟なものじゃない。例年、学校の敷地内にある宿泊所に泊まり込み出来るメンバーだけで泊まり込んで、オンラインゲームをやり倒そう!というだけの話だよ」


 なんという究極のインドア合宿…。


「合宿所自体は運動部の予約の方が優先だったから、例年ちょっとズレて夏休みの終わりがけになってたんだけども……今年は違うんだ。

 なんと! 今回は特別に外で合宿を出来ることになりました! はい、拍手!」


 ぱち…ぱち……ぱち……。

 部長の勢いとは裏腹に、起こったのはまばらな拍手。

 部長……ちゃんと事前に根回ししておかないと、いきなりその場で拍手求められても戸惑う人結構いるんですよ~?


「あれ? もっと反応あると思ったんだけどなぁ」

「外で合宿言うんは結構ですけども、具体的にはどないするんですか? そもそもヴァーチャルの装置なんか重いし配線難しいから持ち運びでけへんやないですか」

「そこは心配無用! 今回の会場はなんとあのクラウディアホテル! しかも一週間泊まり込みで、尚且つ催事場を借り切って、部員人数分のヴァーチャル装置が設置されるという大盤振る舞いだからね!」


 え、なに、それ凄い。

 このヴァーチャル装置ってOBの好意で設置されてるけど、本来はン千万するはずのものでしょ? それが部員の数だけとかあり得ないでしょ。

 それ以前にクラウディアホテルって半年前に中心部に出来た外資系の高級ホテルですよね? そこの部屋と催事場を一週間ってどんだけ金かかってんの!?

 ツッコミどころが余りに多すぎて頭が真っ白になるが、それはどうやらオレだけではなかったようだ。横を盗み見るとジョーはおろか、咲弥や水鈴ちゃんまで絶句している様子。


「心配無用。なんと今年は巨大なスポンサーがついているわけだから!

 今まで内密にしていたけども実はこのヴァーチャルの装置を用意してくれているOBというのが、開発スタッフの一員でね。

 今まではβテスターということで便宜を図ってくれていたんだけど、その話をメイン開発者のフレデリック・オールディントン氏にしたところ、是非一度みんなと交流したい、そして実際体験しているところを見たいと言い出したそうなんだ。

 だから今回の合宿の費用や準備はみんな向こう持ち。こんないい話はなかなかないよね! 日時はこっちね。そんなわけで参加できる人はこっちに名前と性別書くように。表記はローマ字でね」


 確かにいい話です、うん。

 でもいい話過ぎて逆に怖くないですか、それ!?

 高級ホテルに泊まれて、ヴァーチャルでオンラインゲームし放題。

 普通に考えてまず在り得ない。


【なら、参加せんでおくのかの?】


 ……い、いや、でもせっかく主人公プレイヤー枠奪ったんだし、よく考えたらこんな美味しい話のひとつやふたつくらいはあってもいいんじゃないかなぁと思ったり思わなかったり。


【まぁよかろう。あのゲームについては、わらわもちと確認したいことがあったしの】


 部長から渡された紙を見る。

 上半分に合宿の日時や場所などが記されてあり、切り取り線を隔てた下半分に参加不参加、性別のチェック欄、名前の記名欄があった。


「8月5日から11日までかぁ…」


 別段そこに用事があるわけでもないし、参加するのに無理はない。

 参加ということで各項目チェックして部長に渡す。

 渡している紙を見ているとどうやらジョーを始めとして咲弥や水鈴ちゃんも参加らしい。上級生も1人、2人の用事がある人を除けばほぼ全員。


「楽しみやなぁ、ミッキー」

「ああ、同感」


 わくわくしているオレたちに、部長が最後に一言投げかけた。


「ちなみにオールディントン氏は世界的な企業の重役なので、当日は警護の人も来ると思う。ゴツいアメリカ人SP的な人だったりするかもしれないが怖がらないように」


 ………え゛?

 もうなんか、楽しみなんだけど嫌な予感しかしないのはなんでだろうか。




 …とはいえ今それを気にしても仕方ないので諦めて帰路に就く。

 あ、ちゃんと水着も買いましたよ?




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