第九話 俺の周りはいつしか少年漫画のような奴ばっか
「ついたぞ、少年」
「ハァ……ハァ……」
俺は息を整えて辺りを見回した。ここは、裏山だ。
「この力のことを教えてくれ!」
「まあ、そうあせるな。順番に説明してやるから!」
途端、女が俺にナイフを投げつけてきた。
「うわ、何すんだ、あぶねぇだろ!」
ギリギリ避けることが出来たが、次は避ける自信があるとは言いがたい。
「お前の力を引き出してやる」
女が飛び込んでくる。
「くっ」
俺はジャンプすることで、女の突撃を避ける。
………やっぱり、ジャンプ力が尋常じゃない!力のおかげか。
「よぉし!行くぜ女!」
正直出来るかわからないが、やってみるしかない。
自分を信じるしかないか……。
「うおおお!」
右手を突き出す。すると、俺の掌からは勢い良く水が噴射した。
「やるじゃないか!」
後ろにステップした女はナイフを投げる。
「くっ!」
左手で水を噴き上げてナイフの動きを鈍らせる。
「俺の勝ちだ!」
両手で女に向かって水を発射させる。
「ふん、まだまだ甘い」
「っ!」
気がつくと、女は俺の後ろにいた。
女は俺の背中を蹴り飛ばした。俺は勢いよく地面に叩きつけれた。
女は勝ち誇ったような笑みを浮べて地面に着地した。俺にそっと歩み寄る。
「お前の力は、《神の冠》と呼ばれる」
「神の・・・冠?」
俺の言葉に女が頷く。
俺は起き上がってその場に胡坐をかいた。
「《神の冠》は、何万年も前から存在した能力だ。初代継承者はこの力を世界の平和と秩序のために使った。初代継承者が死んだら誰かに能力が継承される」
「この力は、生まれた時から持っていたのか?」
俺の質問に女が頷く。
「《神の冠》を受け継いだ者は森羅万象を支配できるといわれている。簡単に説明すると、お前は最強だということだ」
「俺が・・・・・・最強」
最強。なんか嬉しい言葉だな。
「この世界には、お前のような力を継承した者がたくさんいる。水を支配する《神の聖杯》。炎を支配する、《神の篝火》。他にも様々ある。そんな力を全て所有するのが、《神の冠》だ」
女は俺に向かって手を差し伸べた。
「私は、《神の冠》の継承者を育成、教育する家系の者だ。名を、仙蔵千夜という。よろしくな」
女は満面の笑みを浮べる。どこか、自身に満ち足りている。
仙蔵千夜。この女が俺を鍛え上げてくれるのか・・・・・・鍛え上げてくれるのなら、俺はもっと強くなれる。そうしたら、凛を救い出せる・・・・・・!
「よろしくな、千夜さん」
俺は千夜さんの手を握った。
握り返してくれた。