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ONE/Start is the destiny.
8/12

第八話 哀しみを消す方法なんてものはない

 ようやく退院した俺は、凛と一緒に住む家にいた。

 いや、今となっては、住んでいた、という言葉が相応しいか。

 親の写真なんてものはない。俺が燃やした。クソ親父なんて昔から喧嘩ばっかりだったしいし。

 らしいというのは、俺が覚えていないということだ。

「この力は、一体なんなんだ?」

 俺は自分の手を見つめた。ごく普通の手だ。大好きなバスケをして、好きな人と手を繋いできた手だ。それが、いきなり水を射出しやがった。

「……水か」

 俺は洗面台の前へ来た。

 なんとなく、右手を鏡に向けてかざした。すると……。

 どこからか現れたのか全く検討がつかない。水が、鏡から吹き上げてきた。

「どうなってる」

 さらに手を適当に振る。ゆっくりと。

 手の動きに合わせて、水が動いた。空中で。

 水が宙で舞っているのだ。全く持って、信じ難い行為だった。

「知りたいか、その力が」

「なっ!」

 急に、後ろから声が響いた。反射的に俺は後ろに振り返った。

 男がいる。凛をさらった大男ではない。ましてや性別は男ではない。

 長身の女性だった。長い髪を後ろでポニーテール風に一束ねしている。洗面台があるここは明かりが薄いため、少しくらいが女性の姿ははっきりと認識できる。肌の白さからして、温帯地域の人間だろうか?

「誰だよ、あんた?」

「名を名乗るほどでもない、今はまだな」

「この力を知ってるのか?」

 俺は聞く。俺の後ろでは、水が舞っているだろう。

 長身の女が、不適に笑うのが見えた。

「お前のその力がなんなのか知りたかったら、私についてくることだ」

 そう言うと、女は後ろを向いて、走り出した。

「おい、ちょっと待てよ!」

 当然、俺は女を追いかけた。家を出て、女は裏山の方角に向かっていた。

 裏山に、なんかあるのか?

 行ってみないと分からないな。

「くそ!予想以上に速い!」

 あの女、どうなってやがる!

 いちいち考えていてもしょうがない。

 俺は知らなくちゃいけない。この力のこと。凛をさらった大男のこと。そして、凛を救う方法を。

 今の俺じゃ、あの男には勝てないだろう。だけど、強くなれば、きっと勝てる!

 今は、そう信じるしかない。

「どうした?遅いな!」

 そう言いながら、女は空高くジャンプした。

「なっ!」

 あれはジャンプなのか?いきなり、住宅地の屋根よりもさらに上を跳んだではないか!

 そのまま女は屋根に着地して、屋根から屋根へと飛び移った。

「ちくしょ!」

 俺もジャンプした。

 ―――え?

 俺は、宙に浮いていた。いや、違う。あの女のように、高くジャンプしてるんだ!

 そして、俺は屋根に着地した。

「なんなんだよ、この力……」

 絶句することもままならないまま、女を追うことしか出来なかった。

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