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第十二話 神の冠が俺を選んだ理由
それは、突然現れた。
「うお!」
俺の目の前に何かが飛来してきた。
「ガルルゥ……」
それは獣だ。肉を求める犬だ。四足で起き上がったその獣は2つある頭をぶつけながら唸り声を上げた。
「くそ!こんな時に野獣が!」
「なんなんだよ!こいつ!バケモンじゃねぇか!」
「ああ、その通りだ!」
千夜さんは化物に攻撃を仕掛けた。
あんな奴、この世に存在したってのか!信じられない!
「くそ!なんだこいつ!」
「陸!神の冠を操れ!お前の想いのままに!」
「神の冠……」
今の俺に、神の冠は力を貸してくれるのだろうか。いや、信じろ。神の冠は俺を選んだのだから。
「はぁ!」
千夜さんが獣に押し倒された。その瞬間、身体が熱くなるのを感じた。
「うわぁぁぁっぁぁぁぁ!」
左手から炎が噴出してゆく。
だが――
「ガオォォ!」
獣が雄叫びを上げたのと同時、炎が消えた。
「え?」
「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
獣の2つの頭が同時に噛み付いてきた。