第一話 とある兄妹の日常
この小説は、主人公視点、ヒロイン視点、第三者視点で描かれています。もしかしたら、たまにややこしくなるやもしれません。
「あなたの名前は何ですか?」
何だろう……。僕の名前……一体なんだったっけ。
「あなたは自分の名前を愛していますか?」
さあな。僕にも分からない。
「私の名前を覚えていますか?」
ああ、覚えているさ。君の名は―。
○
「おはよう!朝だよ!」
なぜだろう。朝からいかにもライトのベルにありそうなシーンがおきようとしている。
そう、妹に起こされるという……ギャルゲーの世界のシーンが発生する寸前。
だが俺はそんな妹に起こされるようなやわな中学生ではない!
「今日は私の抱きつき度が通常の三倍だぁ!」
ベッドに飛び込もうとしている妹・凛。
「通常の三倍だったら俺は窒息死だ!」
すかさずベッドから非難。凛はベッドにダイビングした結果、角に頭をぶつけた。
「ふぎゃぁ!痛すぎるぅ!」
「勢いよく飛ぶからだよ。そんな派手に起こされると俺はお前の朝飯作ってやらないぞ」
「なぬ!それは聞き捨てならない台詞……可愛い可愛い妹に虐待をするの!お兄ちゃんは!」
「お前に何をしても法律は無罪を証明してくれるさ」
「そんなことないもぉんだ。法律は私の味方なのだ!はっはっはっ!」
「その笑い方は完全に悪役だな」
そう言いながら、俺は凛に背を向けて着替えを始める。
「おぉ、お兄ちゃんのヌードシーン……これは貴重ですなぁ~」
「おっさんかよ、お前は。早く着替えろ。もう六年生なんだから自分でできるよな?」
着替えを終わらした俺は凛の相手を軽くしながら自分の部屋を出て行く。
凛は俺についてきている。まあそんなことはどうでもいい。その前に朝食を作らなくちゃ。親は蒸発しちゃうから俺は家事全般やらなくちゃいけない。すっげぇ面倒くせぇったらありゃしない。
これが日常なのだから……尚更辛い。唯一の肉親がこのバカ騒ぎしている凛だなんてな。だけど、凛がいなくなったら、俺は今度こそ一人ぼっちだ。いてくれるだけでも有難く思わないと。
はぁ……早く飯食って学校行くか。
「うん?」
なんとなく時計を見てみる。今日は部活がないから八時に家を出るべきなんだが……
「な、何だと!おい、凛!」
「なぁに、お兄ちゃん!」
これがゲームや小説なら、間違いなく遅刻ルート。だが……もっときつい。
「今、朝の四時じゃねぇか!」