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人生悪役令嬢がままに的な話~婚約破棄され追放される悪役令嬢を国境まで送った騎士の話

作者: 山田 勝
掲載日:2025/12/07

「エルフリーデ様、この先が国境です。どうかご無事に」


「皆様、お疲れ様でした」



 公爵令嬢とお付きのメイドを国境付近で下ろした。

 国外追放だ。

 俺は騎士のカドル、名前の通り平民だ。


 一応、護送隊長でもある。



「カドル殿、殺さなくて宜しいのですか?」

「ああ、これで良い」



 実は殺すように言われた。


 全員平民出身者で編成された護送隊だ。

 しかも、王命でもない。近衛騎士団長の子息が耳元でささやいた命令だ。


「触らぬ精霊にたたり無しってね」



 王都に帰ると、王太子から叱責された。



「何故、殺さぬ。慈愛の令嬢マリアをいじめた女だぞ!」


「申訳ありません」


 とここは胸を張って毅然と言った。


 やはり、公式に処刑すると公爵家との関係で軋轢が決定的になる。

 そして、平民騎士の暴挙で俺たちが処刑される未来を予測した。

 その日のうちに左遷を宣告された。


 責任者の俺だけだ。


「カドル殿、これは理不尽では?」

「いや、宮仕えは理不尽の連続だ。これが良い事につながるかもな。お前達も去就を考えておけよ」



 当然、俺の婚約者からは婚約を破棄された、


「カドル、貴方とはこれまでよ」

「うむ。平民が男爵家令嬢と結婚できる機会なのにな.意気地がないな」


 婚約者からは今までの贈物を目の前で焼かれた。

 これは辛かった。


 妹ニーナも男爵邸を追い出されて兄妹二人で生きて行くことになる。



 男爵殿は王太子派だ、

 それで成り上がるつもりらしい。



 それから数ヶ月後。


 俺は市場の見回りをしていた。衛兵隊になった。



「よお、カドルの旦那、酔っ払いを家につれて行ってくれないか?」

「おう、店主、任せな」


「もっと飲ませろや。ヒック!」

「あ~、はい、はい、嫁さんの前で言ってみやがれ」

「ヒック、そ、それは勘弁!」


 酔っ払いを家に帰す日々だ。



 そのうち、公爵令嬢の復権が庶民にまでささやかれてきた。


「大変だ。今の王太子、失脚するってよ」

「外遊から帰ってきた陛下が調べ直しを請求したって」

「生活良くなるかな」



 何でも王太子殿下は北の塔に幽閉。

 マリアは修道院。

 その他の側近候補の貴公子たちは屋敷で生涯幽閉。



「お兄様の追放はなくなるのでは?良かったですね」

「ニーナ、それはない。悪い事が起きるかもな」


 公爵令嬢が面識のない一平民に気を使うワケがない、

 せいぜいお付きのメイドや従者程度だろう。


 しかし、陛下の一粒種の王子を幽閉、

 これは公爵家の力が強いからか?


 もしかして、王子は公爵家の力を抑えたいからあの暴挙に出たのか?


「まあ、俺の考えることではないけどな」



 その後、王太子派は連座で粛清や左遷された。


 俺まで来ないだろうと期待していたが、やはり来た。



「カドル!北の国境警備隊に配置を命じる」

「受けたまりました」



 妹は不満を言う。

「お兄様、あんまりです」

「いや、これで良い事があるかもよ」



 北の国境警備隊に赴任した。蛮族との最前線だ。


 農民は住んでいない。牧畜が行われている、

 要塞都市があるが、王国はここを戦略上の重要拠点とみている。


 まあ、つまり福利厚生が充実しているのだ。


「お兄様、お肉が、毎日食べられるわ」

「ああ、しかし、野菜が少ないな。畑作ろうぜ」



 ここで、俺は任務を忠実に遂行した。

 軍学校出の騎士は貴重だ。


「カドル!一隊を率いて側面を討て」

「了解であります」



 蛮族も馬鹿ではない。側面を突かれるのは分かっている。

 伏兵がいるか?


「適当に戦って、後ろから来たら適当に逃げるぞ」

「了解」



 何度か策が的中した。

 俺は最悪の場合を想定しているから、外れても全滅はない。


 二年で3割が死ぬ戦線で生き残り。


 功を急ぐ同僚たちは戦死し。

 自然と俺がこの地の一軍を任されるようになった。


「お兄様、出世だね」

「ああ、でも、これが良い事とは限らないぞ」



 目立つと王都から何か来るかな。

 と思ったら何か来た。


「カドル殿、王都に召還だ」

「御意」


 ニーナはどうするか?

 要塞都市には学校がある。

 多分、次は悪い事が起こる。


 置いていこう。信用できる騎士の家に預け。

 俺は旅だった。


「お兄様!お土産をお願いします」

「ああ、楽しみにしておけ」




 ☆☆☆王宮


 王宮執務室で。エルフリーデ様に謁見するはずが、食事会になった。


「このお料理は親を知らない鳥。カッコウよ。散々育ての親に恩を受けたのに足蹴にして飛び立つ恩知らずの鳥よ。危うく私もカッコウになるかもしれなかったわ」


「はあ・・・」

意味深に鳥料理の説明をされた。


「記録を調べたら出てきたわ。貴方、王太子の処刑命令を無視したそうね」

「いえ、近衛騎士団のご子息、リーデック殿に言われましたが命令の形式をなしてませんでした・・」

「それはいいわ。結果が重要なの」


 

 エルフリーデ様の金髪はサラサラで肩よりも少し長い程度、瞳は瑠璃色、まるで南海の海のようだ。

 白いドレスと合せると聖女様のようだ。



 それから無言が続く。美女と食事会だが、何か楽しくない。

 メインの皿が下げられデザートが出る合間にエルフリーデ様から口火を切った。



「貴方のこと調べたわ。未来を見渡す能力があるようね」

「いえ、足下を見るぐらいです」


「でね。私はどうしたら良いかしら?もう、老王族しか残っていないわ」


「はい、3つの道がございます。

 一つ、エルフリーデ様が女王に即位して、公爵家の家名のヴォルク朝で建国します。

 これなら、他国の王子、高位貴族から婿を迎えられます。


 問題点は、旧王家はそれなりに臣民の支持がございました。乱が起きます


 二つ、エルフリーデ様は王太女に就任し、一代限りの女王陛下と宣言。現陛下に即妃を迎えて男子が生まれ成人するまでの女王とします。生まれなければ王統が途絶えたで良いでしょう」


「ええ、二つはメイドでも思い付く案ね。もう一つは?」



「はい、エルフリーデ様が自由気ままに振る舞うことです」

「・・・詳しく教えなさい」


 俺は説明した。

 そもそも早期から婚約者を指定して愛を育めとするから婚約破棄とか婚約破棄が起きるのだ。

 どうしても相性が悪いことがある。


 外から見たら解消すればいいじゃんと思うが重い政略を幼子に背負わせるのはいかがなものかと。

 他国じゃ、自分で探せ、但し侯爵家以上な。的な放任主義な王国もある。

 奥手な王子には見合い三昧だ。


 エルフリーデ様だって、憧れた殿方やお慕いしている方が全くいなかったワケではないだろう。


「あら、それでは王国はどうなるのかしら」


「まず、エルフリーデ様が幸せになるのが大事です。国家は生き物です。エルフリーデ様の一存でどうなるものでもございません・・・・誠に失礼ながら、好きな殿方とのことを考えてみたら如何でしょうか?」


「分かったわ。褒美は何が欲しいかしら?」


「はい、妹ニーナのことです。今は13歳です。出来たら王都で貴族学園に通えさせられたら幸いです」


「手配します。そうそう、貴方の元婚約者、復縁をしたいそうだけど」


「無理ですね。俺が贈ったプレゼントを目の前で焼かれました」



「今日はこれまででいいわ。またね」


 そのまま北の要塞に向かう途中に、元婚約者の男爵邸を見に行った。



「うわ。アパートになっている・・・:」


 領地を没収されて財産のタウンハウスを切り売りしているな。


 俺はスゴスゴと退散した。



 それから、10余年、俺は結婚し女の子と男の子を授かった。

 俺は子供達に気になる子はいるかと問う。


「ミリア、ルーカス、気になるお友達はいるかな?」



「お父様、スタイリー様がいいわ」

「ミリア、王都の俳優じゃないか?ルーカスは?」


「・・・うん。別に」

「分かった。一度王宮に呼ぼう。ライゼン家の子だな」

「言っていないよ!」



「フフフフ、お兄様、まだ、8歳と6歳よ。早くなくて」


「「ニーナ伯母様!」」

「伯母様、遊んで下さい」

「今日は長くいられるのですよね」

ニーナは王宮役人と結婚した。


 俺はエルフリーデ様と結婚して、王配になった。

 俺の一言で決意したそうだ。


何でも助けられたと分かってからジワジワときたそうだ。


あのとき、エルフリーデ様は、『今日はこれまででいいわ。またね』

と言った。『またね』


本当に再会するつもりだったか。もし、真意を知っていたら俺はどのような行動を取っていたか分からないが、多分、変わらないな。


「あなた」


とエルが背中に両の手の平をあてて体重を預けてくる。


良い予感しかなくて不安だが、まあ、このまま突っ走るだけだ。




 



最後までお読み頂き有難うございました。

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― 新着の感想 ―
思った通り、いい物語だった。 善行からハッピーエンドは大好物です。
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