47 ストラトキャスター・シーサイド⑤
閃光と、衝撃が走る。
それはどれだけ遠くに飛んだだろうか。
俺が放った弾は、ファニが誘導したその先。
俺たちのいる高台からキャラバンを越え、ずうっと先の岩山の中へと消えていった。
「ぐっ……!」
そしてその直後、急激な落下感に襲われる。
当然だ、本当に落下しているのだから。
「『フロート』」
地面にぶつかるか否かというその時、ファニはそう呟いた。
すると驚くべきことに、落下する速度がみるみる遅くなっていった。
地面に接地するころには、ほとんど浮いているような感覚になっていた。
『フロート』、確か聞いた話では、貴族が使うことのできる、上級魔法のはずだ。
正直驚きだった。まさかこんな魔法まで使えるだなんて……。
「いたッ」
そんなことを考えていたからか、少し呆けてしまって、地面にしりもちをついてしまった。
ズボンに砂利が入ってきて、少し痛い。
「……あ、あのさレン、もう離してもらっていいから」
「あ……? あ、あぁ、悪い」
ファニに言われて、俺はずっと彼女に抱き着いていたことにようやく気付いた。
とっさに巻いた腕を離すと、彼女はどこかバツが悪そうに、俺から離れて、その場に立った。
「わ、悪い。不愉快な思いをさせちゃって」
「え、あ、いや……別に、嫌ってわけでは……」
「え?」
「あ、姐さん、大丈夫ですか!?」
ファニの呟きが聞こえなかったもので、聞き返そうとした瞬間、そんな大慌ての声が聞こえた。
それがロロンのものだと気づくころには、すでに彼女は俺たちの目の前に駆け寄ってきていた。
「ゴホン……私は平気だよ」
ロロンに対してファニは、どこか――何に対してかはわからないが――誤魔化すように咳払いをして、続けた。
「それよりロロン、サンドワーム共の動きは?」
「あ、そ、それが……」
ファニの問いに対して、ロロンは答える代わりに明後日の方向を見た。
つられて彼女と同じ方向を見ると、そこには先ほどと変わらず、サンドワームの群れがいた。
ただ、どこか様子がおかしい。
先ほどまで大げさなほど放っていた殺気を感じない。
それどころか、『なぜ自分がここにいるのかわからない』と混乱しているかのように、その長い頭をもたげ、右往左往しているようだった。
その様子は、まさに文字通り、憑き物が落ちたかのようだった。
キャラバンのほうを見ると、そこに群れているサンドワームたちも同じような様子だった。
オゾブさんたちを襲うこともなく、ただウネウネと動いていて、盗賊共がそれに困惑している。
「あの分なら、オゾブたちもなんとかやれそうだね。ふぅ……なんとか、鉄火場だけは越えたかな」
その様子を見て、ファニはひとまず息を漏らしながらそう言った。
それが指し示すことはひとつ。
盗賊の頭目――つまり、サンドワームを操っていた本丸を、仕留めることができたということになる。
「じ、じゃあ成功ですか!? や、やった」
「はぁ……なんとなったか……」
ロロンが喜んでいるのを見て、思わず俺もそんな、安どのため息を吐いた。
とりあえず、一番の懸念事項は解決できた……そういうことでいいんだろうか?
「……いや、まだだ」
すると、ファニが重い口調で、そんなことを呟いた。
「どういうことだ? サンドワームの制御が切れたってことは、盗賊のお頭はやっつけれたってことじゃ?」
「そう思いたいのはやまやまなんだけど……なんだか、簡単すぎる気がして、嫌な予感がする……」
それは、確信できるような理由は特にない。言ってしまえば勘と呼べるようなものであった。
とはいえ、俺はそれに対して、『考えすぎだ』なんてことは、とても言えなかった。
彼女とて大勢の人間をまとめ上げるボスだ。
そんな彼女が、こういう大掛かりな戦闘を、経験していないはずがない。
今までの経験から、恐らく彼女は直感で終わっていないと感じているのだろう。
「レン、ロロン。お願い。頭目を本当に仕留めたか、確認しに行きたいんだけど」
だからだろうか、彼女はそんなことを俺たちに言ってきた。
「……わかった、行こう」
それに対して、わざわざ断る理由もない。
俺はそれだけ言って、ようやく立ち上がった。
「よし、急ごう。ロロン!」
「わ、わかりました!」
ファニがロロンに呼びかけると、彼女は大急ぎでシルビアの背に乗った。
馬車はすでにぶっ壊れてしまって、すでに乗れるのは、ロロンの愛馬一頭のみであった。
あんなに吹っ飛んだのにピンピンしている。ずいぶんと丈夫な馬だ。
「背中に三人なんで狭いですけど、頑張って乗ってください!」
ロロンのその声に応えるように、ファニは急いで馬の背に飛び乗った。
「行こう、レン」
「あぁ」
そう言われ、俺もファニの後ろに座った。
振り落とされないようにしないと。
さて、盗賊の頭目は、しっかりと無力化できたのだろうか?
わからない。もしできていなかったのであれば、今度こそは確実に仕留めないと。
そんなことを考えていると、ロロンがシルビアに呼びかけ、そして猛スピードで走りだした。
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