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「と、言うわけで〜こちら新しい友達の姫華ー」

「わあ、びっじん」

「よ、よろしく。佐々木姫華です」

「よろしくー。私は佐藤凪。凪って呼んで」


 佐々木さん改め姫華はクラスカーストに抵抗は無いらしく、すぐに凪とも仲良くなった。凪も事前に私が色々相談してたからかこちらも変に気負うこと無く打ち解けた。


 突然のBクラスのお嬢様系美少女の来客にクラスメイトは最初おどおどと挙動不審だったが、まあそこは元々クラス序列をあまり気にしない人達だ。もうすっかり遠慮が無くなって矢継ぎ早に質問責めにしている。


 姫華も今まで付き合ってこなかったタイプの人たちに始めは驚いていたようだが、嫌がってはないようなので放っておいている。多分元々が傅かれて距離を置かれるよりワイワイと楽しむのが好きなタイプなのだろう。


 そんな微笑ましい姫華と違ってクラスメイトは普段接する機会のないお嬢様に男女問わず興味津々だ。些か彼女に群がる人数が多い気がするが、まあいなすのも社会勉強だ。頑張れ。



「あと生徒会の秘書? をする事になった」


 姫華を放置して凪に昨日決まった事を告げると、さっきまで騒がしかった教室が急に静かになった。


「え、何」

「……は。杏奈、マジで言ってる?」

「ん? うん。会長がそう言って……」


 ポトリ、と誰かの手の平からスマホが落ちた。と同時に湧き上がる悲鳴。


「お前、何した?! 早く謝れ! 殺される前に土下座して会長に詫びてこい! プライドより命の方が大事だぞ!」

「イィヤァァアアア!! このFクラスは安全だと思っていたのに! もしかして会長来るんじゃない?! 早くどこかに隠れないと!」

「杏奈! 防弾チョッキ着てるか?! 万が一の為にスタンガンも持っとけ! 最後に自分を守れるのは自分だけだぞ!」


 このクラスからSが出るのに、誰一人喜ばずに悲鳴を上げる親愛なるクラスメイトよ。皆私と同じ心境でなんだか安心したよ……。


「普通、羨ましがられるか嫉妬されるものなのだけど。……変わったクラスなのね」

「まあ、あまり権力とか興味ないからね。楽しい青春を過ごすことに全力を注ぐタイプの人たちだから」


 わあわあと騒ぐクラスの中で、姫華は可笑しそうに笑っていた。







「じゃあ、逝ってくる」

「頑張って。骨は拾うよ」

「何かあったら言うのよ! わ、私だってあ、杏奈を助けるんだから!」

「わあ、良い子」

「ありがとう姫華、頑張ってくるよ。そして凪ドライやな。姫華をよろしくね」

「わかってるよ」


 放課後、私は二人と別れて生徒会室へ向かう。姫華のいじめについてはまだ解決していない。休み時間はこちらのクラスに遊びに来ているが、放課後はこの前みたいに囲まれないよう、凪に寮まで送ってあげてとお願いした。


 凪も元々そのつもりだったらしく、クラスの男女数名を誘って歓迎会をしてから帰るとのこと。まあ、一人より複数の方が安心だもんね。……でもそんな楽しそうな行事、私がいる時にしてくれてもいんじゃね?


 若干のジェラシーを感じつつ、重い足取りで生徒会室の扉を開いた。



「ああ、君が桜木さん?」

「はい。えー……と、あなたは」


 ごめん。全く名前が出てこない。というか分からん。


「はぁ、生徒会に全く興味が無いというのは本当のようだね」

「すみません」

「下心よりは良いさ。さて、俺の名前は如月真(きさらぎまこと)。副会長だが、おそらく君と関わる事はあまりない」

「えー、と。なぜですか?」


 自己紹介されたので握手の為腕を上げたのだが、初っ端から仲良くしないぞ宣言。気まずくてそーっと下ろした腕に気付いた如月さんは、その手を取って握手してくれた。あれ、嫌な人かと思ったけど良い人か?


「すまない、言葉不足だったな。生徒会の仕事とは学園運営を主としている。が、柊会長は普段書類仕事はしていない。彼は我々のトップだが、どちらかというと治安維持やトラブルがあった際の武力行使がメインだ」

「……武力」

「君は昨日柊会長の推薦で秘書の立場になったのだろう? ならば生徒会というより柊会長個人付きという立場になる。我々も自ら柊会長のお気に入りに雑務を頼もうとはしない。だからお互い生徒会という名前はあるが、実際関わる事は少ないだろう」

「…………」


 うわあ。


「何、僕の話?」

「っわ!」

「いえ。彼女は今後我々でなく、柊会長の下に着くと伝えたところです」

「そう」


 不意打ちの声掛けに心臓がバックンバックン鳴っている。


「桜木、行くよ」

「はぁ」

「ビックリした?」


 背を向ける会長に近づけば、猫のように瞳を細めてニンマリと嗤う。その悪戯が成功したと喜ぶ表情に、思わず半目になった。


「当たり前です」

「何故? 君は人の気配を探れるじゃない」

「……何の事でしょう。普通、人は気配とか分かりませんよ。現に私はいきなり背後から現れた会長に、心臓を止められそうになりました」

「普通、ね。まあ確かに、先程はホントに驚いていたみたいだけど」

「次からは止めて下さい」


 集中すればどんな人が何人どこにいるとか分かるけど、この世界で普段からそんなことしている筈がない。単純に常に気を張るなんて凄く疲れるし、そもそも私はそういう生活を求めているのだから。


 なのでさっきはシンプルに驚いた。意識してなくても普通の人なら近付かれれば分かるんだけど、会長は気配を消しているから分からなかったんだよね。流石に殺気があれば反応できるけど、この表情見るに単純に楽しんでるんだろうな……。愉快犯め。




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