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二つ返事で返すくらい即決な件




 また、今日が終わった。


「また明日なメノルー」

「ちゃんと宿題写させろよ」

「休んだりしたら覚えてろよ」


 クラスメイトの女子3人組は私のカバンを蹴り飛ばして帰って行く。


「はぁ……やられたらやり返してもセーフな世になれば少しはマシになるんじゃないかな。うん」


 典型的ないじめを受けている私は紅葉(モミジ)メノル高校1年生、現在15の未成年。趣味はバットでサンドバッグを殴り倒すこと。今年レベルの低い学校に滑り止めで進学し結果周りのヤンキー共に過度な嫌がらせを受けている。


 全く!


 私が何をしたって言うんだ、おばあちゃんが人は変なところで根に持って攻撃してくるから気をつけなぁと助言してくれていた。おばあちゃんの言いつけがよく分かるよ。


「デスゲームの主催者になりたい、あいつら全員ミキサーか硫酸の中にぶち込んだらきっと面白そう」


 口先だけはとても立派、検索してはならない言葉というものをたまに検索しては人体についてを勉強している私は実際に見てみたいという人間性がズレたものを持つ。厨二病とやらじゃない、興味と探究心からだ。


 でもまぁもし願いが叶うなら嫌いな奴全員バットで殴り飛ばしていきたい。


 もっとちゃんとしたとこに進学できてたらきっと父さんと母さんは褒めてくれたのに……なんて思いながら彼女たちが廊下から姿を消すのを見つめていたら___


「初めまして紅葉メノル。えーと、えー、お__僕は帽子屋。もし君がこの境遇を心から変えたいと思うなら僕が……君の悩んでいることをってあー!きっしょ!無理無理!!俺に丁寧に接しろとか無理なんだって!」


 私の目の前に現れた中華系のアニメコスプレをした少年は小さい紙を地面に投げつけてその治安の悪い顔を近づけてきた。


 アニメから出てきましたよ、って感じの少年の目は白くて赤いラインがすごく特徴的。白のチャイナに黒のチャイナズボンは通販サイトとかで売ってるような安モンじゃなくてもっとしっかりした感じの作りだ。これが実在するアニメのコスプレなら完成度たっけなぁオイ。


 てか校内になんでこんな不審者が……と思いながら目の前にちらばった私の教科書をかき集める。


「で、私に何用です?コスプレ演劇部の勧誘ッスか?そんなもんうちの学校にあったっけな……」

「違う。ガチもんだよ、マジで魔法少女アリスとしてしばらく戦ってくれりゃアンタの叶えたい願い、叶えるよ」

「え、ほんとに?マジ?どっからどう見ても怪しい勧誘なんだけど」


 怪しい人、発見……こういう場合ほ即座に職員室にと思ったら__


「そーだよな、疑うよな。まぁちょっと黙って見てろ」


 少年が私の手に触れる。

 その瞬間、さっき美女(笑)共から殴られた痛みが全て消えた。なにこれ新種のマジック?そんなことできるんだ。


「うわ、すっご。消えた……痛くないんだけどなにこれ」

「反応うっす……まぁいいや。他人に回復魔法かけんの苦手なんだよな……全部治った?他どっか痛くない?」


「う、うん。どこも痛くない……現実なんですか……これ」


 魔法が本当にこの世にあるとは思わなかった、ここはちゃんと現実か?


「現実だ」

「マジか。じゃあなり__」

「ちょっとタンマ、話を聞いてから考えてくれ。即決はマジで騙されるぞ」


 即答で魔法少女になろうとしたが言葉を遮られた、こういうのってすぐに即答するのが普通じゃ……と思いながら少年、帽子屋の言葉を聞いてやる。


「何?なんか怖いことでもある感じ?」

「言っておくけどそう簡単に願いが叶うわけじゃないよ。死と隣り合わせだしスコア……化け物を1万ぶっ殺さなきゃ叶わねぇ。1晩歴代5匹が最高だからすんげぇ時間かかるぞ」


 まだまだアニメに関してはニワカに近いが魔法少女もののアニメはよく裏があったりして大抵酷い目にあうのが落ちだ……。なんか内部のことめちゃくちゃ包み隠さず話すんだけどこの使い魔?みたいな人。


「自然から派生する魔法で戦うけどさ、もし闇の魔法が発言した場合相性悪けりゃ早くて1年で死ぬ。死ぬまでに願いを叶えるしか生きる道が無くなるからな……その上日常生活でも結構不便になる運が悪けりゃ早死するだけって感じー」


 え、なんかそこ隠して魔法少女騙して絶望させるのが普通じゃないの。殺し合いとか仲間の裏切りとか……全部説明してくれるのはありがたいけどすごく、なんか……ね。

 こんなんでいいのか魔法少女を勧誘するやつって、もっとブラックしなくていいのかよ。


「それ話していいやつなの?もっとなんか、こう……悪のナンタラがどうとかで殺し合いとか……」

「ない。一切ない」

「まじか……ホワイトすぎる魔法少女……」

「まーね。労働環境が変わってさ、狩りは基本管理人であるやつが1人つく。狩りは毎日参加する必要はない、基本自由出勤って感じで完全週休二日制、祝日込で。希望者は全然戦っていい、自分のペースでって感じ」

「なにこれ、バイトの面接?」


 こんな感じで魔法少女ってなるの?は?え、はいなりますって言って後で実はこんな感じでやるんですーじゃないのか。魔法少女って労働環境とかそんな……すご。


「深夜12時から最短3時で最長5時だからそこんとこよろしく。一応月に2万の給料が貰えるけど手渡しだから確定申告とか自分でって感じ」

「給料出るんかい!!」

「一応ね」


 給料出る魔法少女とか聞いたことない。バイト感覚でやれるってこと?私が知ってる魔法少女と全然違う!!違いすぎるんだが。


「死んだらなんも残らない、生きてかなければ無事願いを叶える。で、メリットの方なんだけど」


 すっごく緩い場所のバイトの面接に来た感じだ、志願理由とかサラッと聞いてあとは全部店の形態話して終わりのアレ。唯一受かったバイト先の場所と似てるんだけど。


「睡眠以外必要なくなる、痛覚がバグる、身体能力が個人差はあるが人間より上がる。魔力供給の茶菓子は食う必要あるけど基本それ以外は摂取する必要は無い。人間と絶対液体交換はするなよ」

「相手がいると思う?今の状況見て」

「……いるわけないな、ごめん」


 さりげなくディスるのやめて頂きたい、一瞬黙って私の顔見るのほんとに殴り飛ばしても許されたと思う。失礼だろ。


「アリスは首さえ落とされなきゃ死なないから死んでも首を守ること」


 帽子屋がそう言った瞬間__


「帽子屋くんー、それ死んだら無理やって!!おっちょこちょいやなぁ」


 また知らない関西訛りの男の人の声が聞こえてきた。かなりおちゃらけた感じで結構若そうな……誰だよ。


「うるせぇ……おい女王盗み見すんじゃねぇ!!」

「は?女王?」


 突如帽子屋が大声を上げて何も無い場所に何も無いとこからナイフを取り出し、容赦なくぶん投げた。何してんだこの人、って思ってたら頭上で「悪かったわ帽子屋」と謎の青年の声が……女王って女の人じゃ。


「今の誰」

「俺の上司。ポンコツ。全ての魔法少女と住民を統治する馬鹿。女王っていうけど男だよ」


 上司をボロカス言って粛清されないのか……まぁ大丈夫だからこの人が生きてるんだろうけどなんか、アットホームすぎるね。1ミリもブラックな所を感じられない、魔法少女も時代の流れで変わっていくって感じか、凄い。


「んー。説明の義務は果たした。この誘い断って全然いい、むしろ断って___」

「やる。魔法少女やる、願い叶うんでしょ?絶対やるわ」


 美味しい話誰が逃すか。

 ストレス合法発散できて願いが叶うとか超得しかないじゃん。ばんざーいってやつ、魔法も使えるし。


「わ、分かった……じゃあ俺と手を繋いでくれ、約束を交わす紅葉メノル」

「おけ。じゃよろしく」


 手を繋いだと同時に意識が朦朧とする、こいつやっぱクロロホルム的な何かで誘拐する気だったか___


「あー、これが……なるほどなぁ」


 最後に聞こえた声は帽子屋と名乗る不審者の懐かしそうな声だった_____

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