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そうだ、街へ行こう

「しっかし、ホントに此処は何も無ぇのな。(ねぐら)の一つもあるもんだろ、普通」


 何故か熾烈な戦いに近い、じゃんけん大会が行われた場所から随分と離れた、荒れた地を歩きながら、愚痴に近い言葉を零す。

 何も無い、というよりも()()()()()の方が正しそうだが。


 その愚痴を耳にした、この場を荒れ地にしたであろう()()の二人の内、赤い方が口を開く。


「ん…まぁ、寝食は確かに我らにも必要とはいえ、お前達程ではないからな。あの体のままであれば、食わず飲まずでも暫くは動き続けることも、戦い続けることも可能だ。それに本来の塒は別の場所にある」


 あまりにも種族離れした話を聞かされた俺は少しげんなりとした表情をしながら、かなり離れた位置に見える森を目指して歩き続ける。


 あの森はこいつらが飯を獲る際に行っていた場所だ。

 方向が此方だったからそうだ…と思う。


 何故に森を目指しているかって?簡単な話だ。


 森には動物_かは定かじゃないが、生物は居る。とすれば、そいつらを狩る奴等が居る、筈だ。

 もうこの際、生物がファンタジー特有のモンスターや魔物でも良い。重要なのは()()()の方だ。


 モンスターや魔物の居るところにハンターや冒険者在り。これは最早お約束みたいなものだ、自然の摂理みたいなものだ!違わないか!?


 …まぁ、正直なところ、さっさと生きた人間に会いたいってのが本心だ。

 今のところ会った生物と言えば、とんでも怪獣な二匹だけだし。


 因みに今更ながらだが、ニ匹には暫く人間の姿で居てもらうことにした。


 人間の姿での行動にある程度慣れるためなのと、周囲に余計な威圧とか与えないという表向きで話を進めた。ホントのとこは仮にこいつらが暴れても余計な被害をなるべく食らわずに済ませたいってとこだが。


 しかしこの二匹も器用なものである。

 ドラゴンはまだ魔法自体を覚えていたから分かるが、狼の方は最初の方こそ不安を覚える動きだったが、今となっては普通に動いてる。完全に慣れているようだ。


 威圧感とかも感じないので、上手く周りに溶け込ませてるのだろう。流石と言える。


「ところで聞きたいんだが、マレビト…つったか。俺以外にも異世界だかどっかから来てるやつは居るんだよな」


「あぁ、儂の知る限りでもそれなりの数は来ておったかの」


「へぇ…てことは同郷と会える可能性があるってことか」


 ふむ、同郷が居るならば心強いものがある。多少なりともこの世界のことやルールなど、先輩には是非とも聞ける限りの範囲で全て聞いて、知っておくとしようか。


「その望みは叶わぬであろうな」


 一人うんうんと腕を組んで頷いていれば、その考えを見事にぶち壊してくれたのは白の方だった。


「あん?…何でだよ」


 そう言えば思考を読まれてるんだったな、と今更ながらに思い出しながら俺は顔だけ振り向いて問い掛ける。


「少なからず異邦人であろうまれびと共は、この世界には無い力を持っておる。聖剣だのとか言う物を持っておったり、天恵だのと自称するよう分からんもんを扱ったりの」


「……あぁ、成る程な。理解した。つまり()()()()()()()()訳か」


 そりゃそんな強大な即戦力、みすみす逃すわけがない。現れた、もしくは国にそいつが訪れたのならば、全力で手元に置いておきたい筈だ。

 そして人間ってのは良くも悪くも欲に忠実なとこがある。自身に好条件、好待遇であれば、それを断る理由などあるだろうか?いや、無い。反語。


「うむ、そういう事じゃな。貴様の足りない脳でよく理解出来たではないか」


「うっせえ、余計な世話だ。…んで、ある程度の自由が効くはずの冒険者でもそうなのか?」


「例外に漏れなくの。貴様の言うように、本来であれば自由に動けとる冒険者とやらの他種族殺しまくりな職も、まれびとの力であれば苦なく上へと上れると聞いておる」


「冒険者全般を物騒なイメージに変えるの止めていただけませんかね、ホント。ロマンが無くなる」


 風評被害も良いところだ、冒険者だってちゃんと薬草採取したりとか遺跡調査的な事をしたりしているはずだ。この世界の冒険者は知らねぇけど。


 ハンター?……まぁ、何かしらやってんだろ。俺はモン○ンしてた時は素材のために狩り尽くしてたけど。


「しかし、ドラゴンの方は途中から接してくれる様にはなったが、お前までこうして会話できるくらいになるなんてな。最初とは大違いだ」


「うむ、貴様の図太さに負けたわ」


「同感であるな、我ら相手によくここまでの態度を取れるものだと思ったものだ。肝の座り具合であれば、お前は間違いなく逸材と言える」


「何とも嬉しくねぇ評価だな、おい…」


 くつくつと後ろで二人が笑っているのを聞きながら、ため息を一つ溢しつつ俺達は森へ向けて歩みを進め続けた。



 *   *   *



「こいつはまた立派なもんだな、生態系が豊富そうだ」


 あれから数時間ほど歩き、漸く踏み入れた森の中の景色に思わず言葉を零す。


「うむ、この辺りでは有数の生態系を誇っておる。魔物も精強であるでな、貴様ごときであれば油断すれば刹那であの世行きじゃの」


「まぁ、力のないお前はまだしも、冒険者とやらの階級でそれなりに上位であろう者の(むくろ)も落ちてたりしていたな」


「一気に怖くなる事を言うの止めてくんねぇか、マジで。これ以上入り込みたくねぇんだが」


 てかそんな恐ろしい森でひょいひょいと生物を狩ってたのかよこいつら、規格外さを改めて思い知らされたわ。


「カカッ、向かいたいと言ったのは貴様であろう。ほれ、さっさと行かぬか!」


 尻込みをする俺の背を狼のやつが思い切り平手で叩いてくる。


 クソいてぇ。


「あー、クソッ、せめて守ってくれよ?何もできねぇんだから」


「気が向いたらの」


「ま、それとなしにやっといてやらんこともない。我の貸しは高くつくぞ?」


 こ、こいつら……。

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