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じゃんけん大会(1)

 


 ___二人の戦いの審判を請け負ってから、どれくらいの時が経っただろうか。


 一日か、二日か…何回日が昇って何回沈んだか数えるのすら億劫だ。


 …あれ、この世界の日の経過とかは元の世界基準で良いのか?

 ……もういいか、考えるのがめんどくせぇ。


 俺はあれから再び地面に腰を落とし、胡座を掻きつつ、頬杖をつきながら目の前の試合を眺めていた。


 そう、()()()()()による、真剣な()()()()()()()を、だ。


「……飽きてきたな…」


「「お前(貴様)がやらせているのだろう!?」」


 ポツリと呟いた独り言が耳に入ったのか、じゃんけんをしていた二人の女性は愕然とした表情を浮かべ、こちらに向かって食って掛かるようにツッコんできた。


「いや、だって…ここまで長引くとは思ってなかったし…」


 頭をガシガシと掻き、ため息混じりに言い訳じみた愚痴をこぼす。


 だが、確かに事の発端は己であるため、強く言えないのもまた事実であった。



 *  *  *


 時は戻り、男が空を仰いだ少し後。



『して、我らの死合の審判、請け負うな?』


『ま、断れる訳もあるまい。儂らに殺されぬ為には、そうせねばなるまいからな』


「…………」


 俺は視線を二匹へとやってから、この後のことをどうするかと目を閉じて黙考を始める。


 長命のくせしてせっついてくる辺り、さっさと始めて雌雄を決したいのだろう。


 俺が押し黙っている間、律儀にも二匹は答えを待ってくれているが、そう長く持たないのは感じ取れる。

 ドラゴンさんとか人間みたいに指をトントンしてるし、狼さんに至っては時間が少し経つにつれて不穏な雰囲気ぶつけてくるし。


 怖いからやめてほしい。切実に。


 やがて自分の中で最適解を組み上げれば、ふー、と息を吐いて再び二匹を見やった。


「分かった、俺も殺されたい訳ではないし請け負ってやる。が、一つ条件を出させてもらう」


『ほう? 脆弱な貴様が儂らに条件とな』


「おう、これは俺の身を守るためでもある。審判が死んだらさっきも言ったように誰が審判するんだってなるからな。そのための条件だ」


『ふむ…して、その条件とはなんだ』


「あぁ、その前に…とある事を前提として組んでるんだが、これが無ければこの条件も崩れるから、一応聞いておきたい。お前ら「()()」はできるか?」


 こちらの問い掛けに対し、狼は首を傾げ、ドラゴンはその意味と先を考えるように黙考をする。


『人化、とは…?』


「あー、あれだ。お前さんのその姿が元の姿としよう。人化は読んで字の通り、人に化けるんだよ。一時的な変化みたいなもんか?」


『成る程な、お前の言いたいことは理解した。我は出来るぞ』


『む、儂にも分かるよう、説明せんか』


 ドラゴンの方はこちらの提案の意味がどういうことなのか、ちゃんと理解をしてくれたようで何よりだ。


 うんうんと満足げに頷いてから、未だに意味と意図が分からず、不満げな表情をしている狼の方を向く。


 どうでも良いが表情豊かだよな、こいつら。


「簡単な話だよ。お前らのスケールでまた死合を始めりゃ、俺は余波でぶっ飛ばされるかそのままお陀仏だ。だから()を付けて戦ってもらう」


『ヒトなるものになれば、我らの力はヒトの体に合わせて大幅に抑えられる。お前を巻き込むような不要な被害は周りに出ぬ、ということだな。』


「そういうこった」


 満点の回答に拍手を送ってから、狼の方を再び見やる。


 ようやくこちらの意図を理解したのか、話を聞いているときは、ふむ…と頷いていたが、唐突に視線を逸らし始めた。


 怪訝に思い、ジッと見てれば今度はプイッと顔を横に逸らす。


 あっ、コイツ…


「…もしかして、人になる(すべ)がねぇとか…?」


『…………』


 俺の言葉に対し、視線と顔を逸したままで冷や汗をだらだらと掻き始める狼さん。


 おいマジかお前。


「長く生きて、尚且つ狼王とか超絶カッコいいもん持ち合わせてたら、それとなくあるんじゃねぇのか、そういうのって…」


『し、仕方無かろう! 得手不得手は誰にしてもあるものであろうが! それに何故、儂が斯様な虫けらの姿にならねばならん! 生きてきた上でそれが必要となったことは無いわ!』


 詰められてからなのか、声高に食って掛かる狼さん。何なら開き直ってすらいる始末だ。

 …何か子供を相手にしてる気分になってきたな。


 そんな様子を隣で見ていたドラゴンはというと、くつくつと笑っているくらいだ。

 あんたからも何か一言あれば良いんだがな…。


 そんな思いを込めたジト目に気が付いたのか、ドラゴンはニヤニヤとした笑みを顔に浮かべたまま狼に問い掛けた。


『クックックッ、ちゃちな技すら出来ぬ、哀れな哀れな犬っころに我が掛けてやっても良いぞ? 人化の魔法をな』


『くっ…抜かせ羽付きが! 貴様なぞに借りなど作らぬわ! そもそも、此奴の言う事など聞く必要もあるまい!』


「んじゃ審判権限でドラゴンの不戦勝な」


『んなっ!? それはズルいぞ!?』


 俺の言葉に愕然とした表情でツッコんでくるが、華麗にスルーを決め込む。


 狼さんといえば、完全に旗色が悪いのを見て取り、ぐぬぬ…と唸って釈然としない様子でドラゴンから魔法を掛けられていた。

 この時のドラゴンはムカつくくらいに良い笑顔をしていた。


 絶対暫くはこのネタで弄るだろうな、良い性格してるし。

長くなりそう…というか、なったので分割します。

私の小説、基本的に長くなりがちだな…(汗)

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