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推察と動向

こっちではお久しぶりです。

一ヶ月ぶりの更新ですね、ホント長らくお待たせしました…。

 グラニアの龍形態での移動速度は恐ろしいまでに速く、馬車で移動すれば一日半〜三日は掛かる距離を瞬く間に進んだ。


 この間、グラニアが速すぎるからなのか、それとも相手が接近に気付けてないのか、はたまた準備が出来てないのか__大方前者だろうが__これと言った妨害も何も受けずに済んでいた。


 そういやかなり焦って視野が狭かったが、いつの間にか飛んでいる間、空気による抵抗で俺が苦しくなったり飛んでいったりしてしまわないように、ミーアが風魔法を俺に掛けてくれていた様だ。


 途中で気付いたので存分に頭を撫でて、褒め倒したら顔を少し赤らめて照れてた。かわいい。



「よし、此処らで良いだろ。グラニア、フェミリアと交代だ」


『何故だ? このまま飛んで行けば良かろう』


 このままの速度を維持すれば、街までもう数秒もすれば着くだろうという所まで来れば、俺はグラニアの背をぺちぺちと叩いて、フェミリアと交代を促す。


 当然のことながらグラニアからは抗議の言葉が飛んでくるが、俺は首を横に振って否定した。


「いや、この巨軀(きょく)で、尚且つ空だと流石に目立つ。この騒動を仕掛けた奴等の妨害もそうだが、王国を発った時みたいな混乱は出来る限り避けたい。ギルドから敵と間違えられて攻撃されたら堪ったもんじゃないし、何よりも煩わしく感じるだろ、お前」


『…一理あるな。ほれ』


 一瞬だけ思考を巡らせる為に間を空けたが、それで言いたいことの全てと、起こりうる事象を直ぐ様に想像することが出来たのだろう。


 グラニアはコクリと頷いてみせてから、ぐるりと一回転し、そのまま人間形態へと変身してみせた。


「おわぁ!? っ、ぶへっ…!」


『無茶をしおる、今のこやつはあの結界内に居た時ではないのだぞ』


 飛んでいた途中で変身したので、進路方向へとぶっ飛ばされるが、入れ替わりで元の姿へと戻ったフェミリアが上手くミーアと、情けない声を漏らした俺をモフン、と背で受け止めた。


 吹き飛ばした張本人は何の悪びれも無い表情で悠々と着地していた。


 やれやれと言いたげに顔を横に振ってから、全員が背に乗ったことを確認したフェミリアはグラニアに負けず劣らずの速度で走り始めた。



 街に入るための門が見え始め、着くまでもうすぐ、といったところで女性の声が耳に飛んできた。


「そこの、止まりなさい! これ以上街に近付くならば、私の魔法で消し飛ばし__って、あなたはあの時ギルドに居た子じゃない!」


「あれ? あんたらはあの時の魔女姉さんと狩人兄さんじゃん。何してんだ? こんなところで」


「それはこっちのセリフだ、あんちゃん。ド派手なデカい動物に乗って何してんだ」


「所用で王国に居たんだが、この街が襲われたって聞いてな、文字通りすっ飛んできた」


「へ、へぇ…」


「ここから王国までそれなりの距離があるはずだが……やっぱ大将の知り合いは大物しか居ねぇな…」


 あっけらかんと答えれば、引きつった笑みを浮かべる二人。


 そんな様子を見て首を傾げるが、そんなことをしている場合ではない事を思い出せば二人を見やって。


「街に向かってんなら一緒に送る、そうでないなら仕事頑張れ!」


「私らは此処で防衛網を敷いて外から迫ってくる魔獣を抑えてるわ!」


「ちゃっちゃと街に入って大将の手助けをしてやってくれ! その方がよりこっちの助けにもなる!」


「あぁ、此処は無駄に広いものな、りょーかい!」


 二人に焚き付けられてなのか、俺の了承の言葉を合図とし、まるで弾かれるようにしてフェミリアは走り出した。


 街の門を悠々と超え、街中へ入ると同時にグラニアが人間体へと変身させ、本日何度目かの宙空への放り出しにそれぞれが綺麗に着地したり、無様に地面をごろごろと転がったりする。因みに俺は後者だ、当たり前だろ。


「〜〜…、ってて…よし、事前に話したように手筈通り、事を進めるぞ」


 体のあちこちから発せられる痛みの声に耐える様な形で、体を擦りながら俺は号令を掛ける。


 先ずは街の様子の確認だ。そして同時並行で情報を収集する。

 襲撃された、アンデッドが現れた、という情報だけしか俺達は知らない。つまり情報があまりにも不足しているのだ。


 無知は罪だと何処かの誰かが言ってたような気がするが、実際どんな種類だろうと「戦う」という行為をする上で情報ってのは必須になってくる。


 何処で、誰が、何を、どうしているのか。これを知らずして今手元にある戦力や、限りある手を割くのは馬鹿や無能のすることだ。

 お前らだって戦略系ゲームの一つや二つしてきたことあるだろ、それと同じだ。


 仮に戦略系をやったことが無いやつでもRPGゲームを想像すれば楽だ、どのキャラがどういった役割を果たせるか、それを知らなきゃ最適のパーティーなんてまず組めねぇだろ?


 つまり「知る」という事は、何よりも事態に対する解決の最短ルートだ。

「情報」があるから、「全容」を知れ、そして「自分」と「敵」を知れる。


 これらが揃いさえすれば後はパズルゲームの如く適所に適材を嵌めていき、果てに自分の定めた「勝ち」がもぎ取れる。


 まぁ、あーだこーだと長ったらしく考えを述べたが、殆どはノベルやら漫画やらドラマやらの受け売りだ。一度は見たことあるだろ、こんな文言。


 取り敢えず今は一個団体として、固まって動き、どれだけ小さい情報でも構わずに掻き集めるところから俺達は始めた。


「そういやアンデッドってのは、こうも簡単に街中に出たりすんのか?」


 俺は整備された石畳の道を走りながら、街の様子や状況を確認しながら他の三人へと問い掛けた。


 人間社会を最近になるまで知らなかった三人に聞くのはちょっと無理があるだろうが、少なくとも俺よりかはこの世界の事情に詳しいし、何より残念ながら今頼れる情報源はこいつ等しか居ない。


「いや、普通では有り得ぬだろうな」


「うむ、異常と言えよう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「…やっぱそうか」


 そこまでの返答は期待してなかったが、俺の予想は良い意味で裏切られた。


 いや、普通に考えれば浮かぶか。何も人間社会に的を絞らなくても、そこで生活圏を獲得している奴等の基準に当て嵌めれば良いだけだ。


 こうも簡単な事が浮かばない辺り、あまり意識はしてないが、やはり何処かで焦りを覚えているのだろう。


 少し苦い表情を浮かべながら、俺はこの後の行動を考えつつ話を続ける。


「襲撃を掛けてきた馬鹿が何処の誰かは知らねぇが、取り敢えず今は犯人探しよりも先に救助を優先するぞ。俺は戦力として数えんな、アンデッドが出たらお前らに任せる」


「そこらに関しては、最初(ハナ)から貴様に期待などしとらんから安心せい。儂らは儂らで勝手に判断して八つ裂いてやるからの」


「目敏さでは我等四人の中でも群を抜いてお前が勝るからな、術者を見付けたら言うが良い。呪言の一言すら吐かせず、瞬時に焼き尽くしてやろう」


「ん、ミーア、頑張る。頑張って、吹き飛ばす」


「相変わらずお前らが頼もしい限りで安心するな。んで、ミーアよ、頑張るのは良いが勢い余って街を壊してくれるなよ…?」


 ふんす、と珍しくやる気溢れるミーアに、念の為として釘を刺しておく。

 水を差す様で悪いとは思うが、こいつ等のデタラメさ加減は俺が一番知ってるからな、下手すればマジで街が消える。


「しかし、やけに攻撃的だな。この魔法に思うとこでもあんのか?」


 ミーアはともかく、二人の言葉が普段よりもやけに刺々しく、気が立っているようにも感じられたので少し不思議に思い、問い掛けてみた。


「先にグラニアが言っておった通り、十中八九でこの騒動に使われておる魔法は死霊術の類じゃからな、偶発的に起こる事象ではない。これは術者が()()()()()()()()()()()()じゃ」


「今を生きる者としてあるまじき、(おぞ)ましい行為だと言える。そもそもに魔法は魔物や魔獣、()いては魔族、我のような龍種にとっては生活…というよりも感覚の一部として扱っておる。つまり、元より魔の物が扱う技法だ」


「陰と陽で表すならば、魔の物(儂ら)は陰の方じゃな」


「うむ、そして人種にとって魔法(これ)とは道を踏み外した技と言えるが、これはその中でも更に踏み外した外道と言わざるを得ない技だ。魔法を扱う我々でも嫌悪感を抱きはすれど、間違っても扱おうなどとは思わん」


「里長も言ってた、死者の体や魂を操る術を使う者は、等しく(ろく)でもないって」


「…ま、そうだろうな。やっぱ認識は異世界だろうと何だろうと、どこでも共通ってわけか」


 まさかミーアも乗っかってくるとは思ってもなかったが、其々(それぞれ)の返答を聞けば、前世での知識を合わせて思い馳せるように少し押し黙り、小さく頷きながら納得をする。


 動く死体(アンデッド)を己の意志や思考で、思うがままに操れるならば、それは戦場に置いては最強の駒と言える。

 兵糧も要らず、休息も疲弊なども考えなくて良い、理想の兵だろう。


 だが、道徳的観点から見れば、その手法は外道のそれと呼ばざるを得ないものだろう。

 そんなものはクソ喰らえと倫理観を投げ捨てた者以外の、大抵の普遍的な思考を持つ者であれば嫌悪するものだ。


 そして今回の騒動を引き起こした者は、その二つの思想の内、前者である頭のネジが飛んだ(クソイカれ)野郎と。


 因みに、こんな悠長に感じられる雰囲気で、この世界の認識を得たり、お喋りをしたりとしつつ暫くの間走っているが、実のところ道中では何気に何体かのアンデッドに出会(でくわ)している。


 物陰から唐突に出てこられた時はマジで心臓が止まるかと思った。じわじわ来る日本のホラーはまだマシだが、海外の驚かせる系のホラーとかお化け屋敷とか得意じゃねえんだ、俺。


 これを読んでいて、分かってくれる同士よ、いいねをくれ。何ならコメントで「分かるわ〜」とか送ってくれ。


 まぁ、そんな露骨な文字数(いいね)稼ぎは路端にでも投げ捨てて置いて__それ以外の実害は特に負うことも無く、逆に俺達に出会う度、炎で消し炭にされたり、爪で細切れにされたり、よく分からん魔法で最初から無かったかの様に消されたりと、見てるこちらとしてはアンデッド側が結構不憫だな…と感じるのではあるが…。


「あん…? ありゃ…あいつら、あんなとこで何やってんだ…?」


 ぜーはー、と息も絶え絶えになりながら走っていれば、視界端にチラリと見知った姿が写った気がしたので、そちらを向く。


 どうやら見間違いでは無かった様で、その人物達はある建物を背に、数にして約二十体程になるアンデッドの群れと切った張ったを繰り広げていた。


「やー、これキッツいね。運動不足だと思ったことはないけど、流石に体力不足が痛感できるかな…!」


「無駄口叩けるならまだ行けるよ! ほら、早く手を動かしてくれないかな、僕の方に結構流れてるんだけど、ね!」


 建物の前でアンデットを相手に切った張ったを繰り広げているのは、冒険者として最高ランクの称号を持つクリスと、勇者のミレアであった。


 二人の周囲には、弱点となる聖属性の魔法を当てられたのであろうアンデッドや、剣技によって細切れにされたアンデッドの物と思われる肉片が散らばっており、結構な数を屠っているのが伺える。


 だが、屠る屍が増えるほどに二人の疲労は着実に積み重なっているようで、今にも押し切られそうに見えた。


 流石にこれ以上はキツいか、とクリスとミレアが声に出さずともそう思った矢先、眼の前に居た亡者の群れが一気に消し飛んだ。


 あまりの一瞬の出来事に、理解が追い付かない二人は呆けた様子で、固まった姿勢のままぱちくりとしていた。


「お前ら、そこで何してんだ?」


 アンデット達が消え去ったのは何も偶然ではない。


 イツキがフェミリアとグラニアに頼み、二人に被害が被らない程度に抑えてアンデット達(あれら)を一掃した。


 そして安全が確認出来た今、俺が近づいて二人に声を掛けたのだ。


 二人は俺の姿を見るや否や、呆けた様子を止めて抜いていた剣を納めた。


「はぁ〜、助かったよ。流石にちょっとキツかったからさぁ」


「体力には自信があるけど、今回のは応えるよね…」


「体力勝負をするなら別に此処じゃなくても良さそうだけども…後ろのがそうか」


 発生してから休憩無しで戦い続けていた印象を受けさせる二人を見てから、視線を後ろの建物へと移した。


 壁や装飾などはそこらの建物と変わりないが、屋根付近に()()()()()()()()()()()()()のを見るに、これが【教会】、もしくはそれに準ずるものだと察するのは難くない。


 人は未曾有の災害だとかよく分からんもんに対して、祈りを捧げたり、信仰の対象に縋ったりとかするものだからな。


 それに扉とか頑丈そうだ、今回のような襲撃に対して籠城するには持って来いだろう。


「あ、誰かから何か聞いてたりする?」


「いや、ただの予測だ。この街に入ってからアンデットとお前ら以外に会ってはない。此処は無駄に広いからな、他のとこの対処に追われているか、もしくは……」


「大丈夫、此処の人達は皆強いから。そう簡単にやられたりしないよ」


 俺の言葉を途中で遮るようにしてミレアが声を上げた。


 俺はその言葉を聞いて押し黙り、少し考えを巡らせる。


「……そうだな、悪い。取り敢えず俺等は他にも救援が要りそうな奴とか、生存者を探してみる」


「ん、頼むよ。現状、僕たちの方は手一杯だからね、あちこち回れなかったから助かるよ」


「そうだね、ホントなら分身とかしてあちこち助けに行きたいけど…勇者、と言ってもあれこれスキルを使えるわけじゃないから歯痒いや…」


避難場所(教会)を守れてんだ、十分だろ」


 それ以上に活躍されていたら、本当に同じ種族(人間)か疑うレベルだから。


 いや、分かるよ?勇者とか言うんだからステータスがバケモンなのは。


 ただそれでも…ね…?うん。


「あぁ、そうだ。ついでとしてこれも伝えておく__」


 そうして一度別れる前に、俺はこの後の行動や考えなどを二人に共有するべく、手短に、しかしなるべく分かりやすく説明する。


 それを耳にした二人は目を丸くしていたが、少し逡巡してから頷いてみせた。


「分かった、僕の方でもなるべく間に合うように動いてみるよ。他に人は要りそうかい?」


「あぁ、頼む。ある程度片付いてたり、落ち着いてそうなとこから最低限の人数を残した上で動いてくれ。んじゃ、また後でな」


 伝えるべき事を伝えれたイツキは、そのまま二人に手を振ってから早々にその場を後にした。


 そんな彼と、彼女らの背を見送りながらミレアはぽつりと言葉を溢した。


「……彼、よく自分のことを無能だとか、考える頭が無いって言ってるけど、僕、絶対嘘だと思うんだ…」


「あはは、それは僕も同感だよ、ミレア。同じマレビトである僕でも()()()()()()くらいには、イツキくんって相当頭良いよ」


「畏怖? 尊敬とか、そんなんじゃなくて?」


「うん、彼の頭の良さは、地が良いとかじゃなくて、多分【理解力】にあると思ってるんだ。何でもかんでも飲み込みが早すぎるんだよ、気味が悪く感じられるくらいに」


「成る程ね…だから()()()()()()にも気付けた、ってところなのかな?」


「きっと、ね。…さ、僕たちもそろそろ動こうか? いつまでもこうしてたらサボってると思われて、イツキ君に怒られちゃうよ」


「そうだね、僕も彼にだけは怒られたくないや…」


 二人して本人の居ぬ場であれこれと好き勝手言ってから、彼に明かされた作戦や考えを遂行するために、自由となった二人は再び街のために動き始めた。

この作品を楽しみにされていた方、ホントに待たせて申し訳無い…。

遅筆が過ぎる程だけど、こんな作者でも許して頂けれるならば、今後とも飽きることなく是非お付き合いをお願いしたく……。

なるべく更新ペース上げれるようには頑張るから…うん……。

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