表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/43

閑話 想いは物に込めて巡りゆく

交換会って良いですよね、何が出てくるか分からないワクワク感もあって。私は一度もしたことがありませんが()

「さぁ、お待ちかねの交換会だ! おら、回せ回せ!」


 食事を終えた後、少しの食後休憩を挟んでから俺はプレゼントを持ち出し、其々に早くしろよーなんて急かして促す。


 正直なところ、食事以上にこれが楽しみで今日やったまである。


 そうして各々がプレゼントを持ったのを見て確認すれば、それをグルグルと手から手へと渡して回す。


 ある程度回し終えれば、ストップの合図を出して其々の持つ箱や袋を開けさせていく。


「おわっ!? 何じゃこれは!」


「あっはは! 僕のを引き当てたんだね、ジョークグッズだよ。この世界でも売ってたから面白そうだと思ってね」


 どうやらフェミリアが引き当てたのはクリスからのプレゼントらしい。


 びっくり箱みたいな感じで、中から様々なものが飛び出していた。

 うわ、結構リアルな虫の何かあったぞ、あれ動いたりしねぇよな…?


 フェミリアは最初こそ驚いていたが、すぐに慣れたのか今は物珍しげに出てきた物を、様々な角度でしげしげと見つめていた。


 外で暮らしてた期間が長かったし、ああ言ったのも慣れてるんだろうな、タンパク源だとかで虫喰ってた覚えもあるし。

 …見た目通り部族感があるな、あれがあると。


 そんな様子を見ている間に、グラニアが手に持つ袋を開けていた。


「ふむ、これは…?」


「あ、それは僕からのだね! 一度だけ四大元素魔法を弾き返す繊維で作り上げられた布だよ、大きすぎるのは流石に弾けないけどね」


 グラニアはミレアのを当てたらしい、袋の中から布を取り出してしげしげと見つめていた。


 中々に面白く、実用性とか高そうなものだが、アイツに必要だろうか…?ドラゴンに魔法とかあまり効かないイメージが強いんだが。


 まぁ、布だし上手く加工したりすれば色んなものに化ける事だろう。


 贈り物を貰ったという事自体が嬉しいのか、グラニアは満更ではない顔をしているのが見て取れる。


 うん、この交換会を開いたのは強ち間違いではなかったらしい。


 現時点で、フェミリアもグラニアも両名とも満足しているのがよく分かる。

 ミーアは……あまり分からん。


「さーてさて、ぼっくっのっは〜♪ ……なんだろ、これ…?」


 期待に満ちた、随分と楽しげな様子でクリスは自分の持つ袋を開けて中身を取り出す。


 そこから出てきて彼の手に乗っていたのは…砂?


 何か、うん…すっごいサラサラしてて触り心地とか良さそうですね。何に使うのか知らんが…。


「ん、ミーアの。使えるよ?」


「そ、そっか、ありがとね」


 どうやらあの謎の贈り物はミーアからのらしい。


 流石にクリスも予想の斜め上の物だったらしく、面食らった様子で少し引きつった笑みを浮かべていた。


 他の面々の顔を見ても何とも言えない、微妙な顔をしており、ミーアだけが誇らしげな顔をして、ふんすと胸を張っていた。


 そして使える、との事だが、きっとクリスは何に使えるのかが一番聞きたいだろう…後は何の砂なのか、その正体も知りたいというところか。


 追求すれば?と思うかもだが、多分追求しても欲しい情報は得られないとクリスは思ったんだろうな、残念ながらその予想は大当たりだ。

 すまんな、うちの天然枠が。


 てか交換会、何処から聞きつけたのだろうか…お前、朝居なかったよな…?


「あはは……さてさて、僕のは〜、と。おわぁ!?」


 ミレアは持つ箱のリボンを解き、勢いよく蓋を開けた。


 するとボンッ、と小さな破裂音が響くと共に、中から煙が立ち上る。


 暫くの間モクモクと煙が舞ってから、濃さが薄らいでいき、中身が顕になっていく。


 派手な演出があった箱の中に入っていたのは__。


「…んぇ? 何か凄そうな()が入ってるよ!? これ何の鱗!?」


 どうやら中身は赤い、光を受けて綺麗に輝く美しい鱗だったらしい。


 中に入っていた一枚を取り出し、ちょっと興奮気味にミレアが俺に対して問い掛けてくる。

 残念ながら、それは俺からのプレゼントじゃないから答えれんのだが。


 しかし赤い鱗か、随分と()()()()()()()だな。


 そんな事を思っていれば、どうやらプレゼントの主であろう人物が口を開いた。


「ふむ、ちょっとしたサプライズとして仕掛けを施してみたが、それ以上に喜んでもらえたか。うむ、贈った冥利に尽きる、と言えば良いのだろうか? イツキは察しておる様だが、それは()()()である」


「自分で自分の鱗を剝いだのか?」


「そんな訳無かろう。自然と剥がれ落ちた物に過ぎん、しかし強度は保証する。並大抵の刃ならば突き立てた側が折れ、魔法の類は傷の一つすら付けることが叶わないだろうな」


「うわぁ…とんでもない物を貰っちゃったや……」


 うん、明らかにお前が贈ったもの以上のが返ってきたな。


 きっとミレアの用意したものはこの街の中でも、かなり上質な物を取り寄せたのだろう、見ただけでもそれが分かるくらいには質が良かった。


 だから、まぁ、うん、あれは『技術の産物』、これは『自然の産物』みたいな区切りをして、気にしない方向性に持っていくって形で良いと思うぞ、落ち込むな若人よ。


 と、グラニアとミレアのやり取りを見ていたら、服の裾を掴み、くいくいと引っ張る感覚を覚える。


 誰だ?と思い、振り返ればそこにはミーアがラッピングされた箱を片手に持ち、こちらを見ていた。


「ん。ミーアのは、イツキから?」


「んぁ? あー、まぁそうだな、貰う側で残ってんのはお前と俺だし、お前が持ってんのも俺が持ってきたやつだな」


 こてん、と首を傾げて問い掛けてくるので、貰ってない側を洗い出し、尚且つミーアの持つ物を見てからこくりと頷いて肯定する。


「そっか」


 ミーアはそれを聞けば、心なしか、ほわ…とした雰囲気を纏い、表情を少し綻ばせた…気がする。


 そして、トテテと少し離れた部屋の隅へ持っていけば隠れるようにして箱を開けだした。


 そんな大層なもんは入れてないんだがな…と苦笑を浮かべていれば、他の面々もそんな様子に気が付いたのかミーアの動向を見守っていた。


「おぉ〜…これは、良い」


 そして中に入っていた物を取り出せば、何かを理解して感想を溢しながら早速取り付けた様だ。


 ちょこっと小走り気味に戻ってきた彼女の前髪には先程までなかった髪留めが着いていた。


「へぇ、似合ってんじゃねえか、中々良い感じだな」


「ん、良い感じ、ぶい」


 男性が着けても違和感が無い、シンプルな見た目と装飾だが、持ち手付近には緑色の小さな石が嵌め込まれており、とても綺麗で一目見て気に入ったのだ。


 元々緑色が好きだったから選んだというのもあるが、うん、ミーアが着けても違和感は無いどころか、とても似合っている。


 俺が感想を言えば、表情に大きな差異は見られないが、とても嬉しそうな雰囲気でブイサインを立てていた。

 気に入ってもらえて何よりだ。


「うむ、とても良いではないか。贈った者が阿呆だとは思えんな」


「同感である、よもやこの様なセンスがあったとはな、にわかに信じ難いが…」


「お前らの中にある俺への評価、随分と厳しめだな、おい」


「ごめん、イツキくん。僕もちょっと思ってたや、だから合わせるためにジョークグッズ買ったんだけどなぁ…」


「会って間もないけど、僕もちょっと擁護はしづらいかなぁ…」


「おう、君らも気前良く随分な評価をくれるじゃないか、良い度胸してるな。屋上行こうぜ…久しぶりに…キレちまったよ…」


「この宿は屋上には出れないよ?」


「いんだよ、形式美みたいなもんだ」


 大○洋や○太郎の様な言葉を吐くが、やはり伝わらない奴等には伝わらないか…。


 面白いからちょっとでも気になったやつはどうでし○うとサラリーマン金○郎を見ような。


 俺は小さく肩を竦めてから流すことにした。


 はてさて、俺が一番最後に残ったわけだが、今持っているプレゼントの贈り主は『あの』フェミリアだ。


 何となく予想は出来てしまうが…まぁ、取り敢えず開けてみねば判断は出来まい。


 そうして俺は箱を開け、中身を確認する。


 果たしてそこに入っていたのは__何だ、コレ??


「……あのー、フェミリアさん? これは一体何なのでしょうか…?」


「む、見て分からぬか? 誰がどう見ても()()()()じゃろうが。希少で、尚且つ逃げ足が早いから獲るのにちっと苦労したがの」


「買わずに狩ってきた、と。ハハハッ、誰が上手いことを言えと」


「言ってるの君だよ」


「外野、うるさい」


 クリスからの野次にぴしゃりと言葉を叩き付けて、箱の中いっぱいに入った肉の塊を再び見下ろす。


 うーん、実に新鮮で良いが…どうするの、これ。

 飯食った後だぞ、俺ら。冷蔵庫的なのあんの、この世界?


 そして何かグラニアが意味有りげにニヤニヤとしていた。


「…聞いても答えなさそうな気がするが、一応聞いておく。何か隠してそうだな、グラニア」


「いや、何、我は知らぬぞ? フェンリル族のしきたりや習慣などはなぁ?」


「しきたり…? 習慣…?」


 聞いてもちんぷんかんぷんである、そもそもフェンリル族どころか、他の種族のしきたりや習慣や掟とか知らんしな。


 人間ですら様々な派閥や隔たり、しきたりがある。

 習慣に至っては家族の数だけあると言っても過言ではないくらいだ、つまり数だけで馬鹿にならない。


 結論としてわからない事が分かったと言う感じだな。


 因みにしきたりとかを聞いてみようとフェミリアの方を向いたが、何故かグラニアのニヤニヤしてた理由を聞いてからハッとした様な表情をした後、ずっとこちらを見てくれなかった。


 うーん、何かモヤるな…まぁ、また別の日にでも聞けば良いだろう。


 深くは聞かず、流す形でその話を終え、其々が貰った物を其々が管理できる場所に置いてから、俺達は同じ位置へと戻り、再度歓談に戻った。


 その日の部屋の明かりは、夜が深まり、果ては更けても長く灯り続け、楽しげな会話が絶えず聞こえてくるのであった__。

イツキ「なーんか忘れてる気がする……」

アクセサリーを渡すのはまたいつの日になるのやら…先はまだまだ長くなりそうです。


では皆様、メリークリスマス!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ