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クリエスタ

ちょこっと急ぎ気味に書いたので、色々と伝わりづらいとことかあるかも…ご了承をば……。

「やっぱデケェ街だな、此処」


 俺達は昼食を食った後、クリスの案内の下で街を散策していた。


 この街は『クリエスタ』と言うらしく、意味は希望だとか何だとか言ってたけど、聞き流してたから、もしかしたら違うかもしれん。

 ……まぁ、良いか。


 どうやらこの街は、国王が住むような城は無いが、領主の住む館を中心に円形で形成されている様だ。

 そしてピザのように区画分けがされているとのこと。簡単に例えるなら、フ○イナルフ○ンタジーⅦのミッド○ルみたいな感じ。


 昼食を取った一区画が、食材などを扱う場所とすれば、今居るこの区画はどうやら武器や防具、道具に雑貨などを売る所らしい。


 感じられる熱量が、先程の比にはならない程には高い。

 うん、ファンタジーな世界に来た感覚がより強くなったな!


「此処は他の街に比べても、人口の多さや大きさでは有数の所だからね。繁栄に伴ってここまでの規模になったみたいだよ」


 フフン、と自慢げに胸を張るクリス。

 お前は街の代表格の一つで、お前の街ではないんだがな…。


「その繁栄には少なからず、お前らのような転生者が関わってそうだけどな」


「あれ、誰かから聞いた?」


「いや、ただの予測だったんだが……」


 どうやらマレビトなる転生者は、この世界ではかなり前から居たらしい。節操なしにも程があり過ぎる。

 日本で起こってた神隠しや、海外とかの失踪事件の大半、此処のクソ女神による仕業なんじゃないだろうか…。


 自身の嫌な予測に、引きつった笑みを小さく浮かべながら、クリスに先導を任せて店を回ることにした。


 最初は剣や槍など様々な種類を置いている武器屋。

 冒険者御用達の店らしく、店内は武器を新調したり、愛用する得物のメンテナンスでやって来た者達で賑わっていた。


 やっぱり腐っても俺は男であるので、興奮を覚えながら陳列する武器を眺めたり、店主らしき人や、買い物に来ていた冒険者と話したりして、この世界の武器の扱いや用途を知っていく。


 一度高まった興奮が冷めやらず、俺も試しに、比較的軽い剣を一振り握らせてもらったのだが、流石この世界の一般人よりも劣る俺、持つので精一杯だった。振るのとか無理。


 次に訪れたのは、鎖帷子や騎士のような甲冑などが売られている防具屋。

 ドラ○エとかで見るような防具を前に、武器を見た時と同様の感動を覚える。

 鎧系は土台無理な話ではあるが、軽装とかならまだ俺でもいけるか…?と、しげしげと眺めていたが、生憎手持ちが無いに近しい状態だ。

 そして、そこを店主に買う気が無いと見抜かれてしまったのだろう。咳払いの後、追い出されてしまった。無念。


 あ、鍋のフタが売られてたのは個人的にポイント高かったです、ネタとして。

 フ○ムゲーではお世話になったなぁ…最強防衛手段のパリィで…。


 道具屋もファンタジー世界溢れる物ばかりであり、マジでおもちゃ屋にやって来た男の子ばりに興奮が抑えれなかった。いや、これがホントに楽しいのよ。


 同伴者達は何故か何とも言えぬ、生暖かい視線を送ってきていたが。


 因みに道具屋、ポーションとかだけでなく、疑似魔法を発動できる物とか、エンチャントされた物とか売ってて感動したんだが、それらは魔力を扱えた上で、初めて扱えるらしい。


 アクセサリー類の小物は、物に依っては魔力を高める効果を持つのもあるらしいが、値段がべらぼうに高く、安易に手出しが出来ない。

 そしてグラニアやフェミリアに後から聞いたが、魔力を高めるものも、元の潜在魔力や、質?などが高くなければあまり意味を為さないのだとか。


 力と魔力無しの奴に厳しすぎんか?この世界。


 無力無能には世知辛いなぁ…。



 *  *  *



 そうしてだいぶ時間は掛かったが、この区画を見て回ることが出来た俺達は、次の区画へと向かってゆったりと歩いていた。


 取り敢えずあの区画を歩いた感想としては広い、マジで広すぎる、あり得ん。

 どうして商業区画をただ歩いて回るだけで半日も消え去ってんですかね。俺が子供みたいにはしゃぎ回ったせいか。


「アッハハハ、やっぱり君は面白いね、気に入ったよ」


 俺の姿が面白おかしかったのか、終始クリスは笑っていた。

 対してグラニアとフェミリアの二人はというと、微妙な顔付きをしていた。


 何だその「一緒に居るのが恥ずかしい」みたいな表情は。


「いや、全くもって一言一句その通りなんじゃがな…?」


「うむ、童のような無邪気な笑みを浮かべて行動するのは良いが、我らを巻き込むでない。人目も憚らず、というのは図太いお前だからこそ出来るものだ…」


「失礼な、童心を忘れないのは良い男の条件だ。それを惜しみもなく出せる俺は、紛れもなく良い男だぜ」


「その通説はお前の世界での話ではないのか…?」


 ううむ、この素晴らしき考えが伝わらないとは勿体無い…ファンタジーの世界で生きるなら浪漫は大事だろうに。


「うんうん、やっぱり仲が良いねぇ、君達は。特に君の図太さが際立って知れるよ」


「お前も本格的に、俺に対する遠慮ってもんを取っ払ってる辺り、図太さを強く感じられるけどな」


 ニコニコと笑みを浮かべ続けるクリスに対し、小さな溜め息と共に悪態をつく。

 そんなやり取りを繰り広げている内に、辺りの景色が変わっていた。


 先程までは商業を主とした建物が軒を連ねていたが、やって来たこの区画は住宅街を思わせる建物が多かった。


 人の往来は勿論あるが、喧騒は然程感じられない。

 看板を見れば、文字は読めないが絵も一緒に載っており、寝具に人が寝ている物が描かれている。


 そう、此処は宿泊施設が多数ある区画だ。


 この国に居る冒険者達も利用するが、主な利用客は、当然ながら俺らのような旅の者である。

 ちらほらと周りの人らの格好を見れば、行商人らしき人から旅の冒険者っぽいのまで色々と居る。


 身なり格好を見る限り、そこそこに良い所らしい。


 うーん、お値段とか高そうね。


「心配せずとも良いよ、旅の人や行商人とかにはそれ相応の値段が出されるけど、この街の冒険者だったら定住出来る家が手に入るまでは、無償で部屋を貸し与えられるんだ」


「へぇ、随分とサービスが良いんだな。人員補充が目当てとかか?」


「考え方が目敏いね、商人とか向いてるんじゃない? ま、君の言うとおりだよ。冒険者って職は、安全とは最も離れた職だからね、人は幾ら居ても足りないくらいさ」


「結構なことだが、俺はその恩恵に有りつけはしなさそうだな」


 苦笑を浮かべながら俺はヒラヒラと指で挟んで持つ自分の身分証を揺らす。

 後ろの女性陣は冒険者登録を済ませているので、費用が掛からないのは有り難いがな。素材を売った金があるとは言え、流石に三人となるとキツいものがある。

 いっその事、此処へ来る前の様に野宿し続けるのもありかもしれんな。金策とかしなくて良さそうだし。


「色々と便宜を図ろうとしたのに、それを断ったのは君自身だろう?」


「お前にこれ以上の借りを作るのが怖いつってんだ、後で何請求されるか分かったもんじゃない」


「あ、酷いなぁ、街では結構信頼される部類の人間なんだよ? 僕って」


 分かりやすく、これみよがしに拗ねてみせる相手に小さく肩を竦める。


「なら俺とは正反対だから相容れないって事だろ、確認が出来て何よりだ」


 そういった反応は異性にやるから効くもので、同性にやっても効かんぞ。…効かんよな…?


 あまりにも釣れない反応をするどころか、嫌味ったらしい態度を取られたのにも関わらず、クリスはいつものニコニコとした笑みを浮かべる。


「全く、君はホントに()()()ね。じゃ、その好意に甘えて僕は一度離れるよ。また明日ね」


 そう言葉を残し、ヒラヒラと手を振ってクリスは来た方向を戻って行った。


 彼の姿が人混みに紛れ、見えなくなるまで三人はその背を見ていたが、完全に視界から消えたくらいにフェミリアが口を開いた。


「世話になったのはこちらであるに、貴様のあの、追い返すような言葉は無かろう。それに貴様が優しいとはどういうことだ、虫けら共の思考はようわからんの」


 彼女の言い分は最もだ、そしてそれは()()()()()()()()()()()


 だからこその対応だ。


 この街では代表格の有名人と、ぽっと出のよく分からん無名のやつ。

 一緒に居続ければ、確実に不要な迷惑や、ありもしない噂を流されたりと不利益を被る事になる。


 人間とは得てしてそういうもんだ、昔も現代もゴシップというものは人の不幸を蜜とする奴には極上の物。

 あいつを快く思わない奴が、此処に居ないとも限らない。

 世話になれど迷惑をこれ以上、恩人であるクリスに掛けるわけにはいかない。


 それに、そう言ったやからに、餌を与えるのは癪な話だろう…?


「ま、人間社会には色々あんだよ、色々とな。それよりほら、さっさと行こうぜ。拠点とする宿を見つけねぇとな」


 その言葉と共に、俺は二人の背を押して宿探しに繰り出す。


 いつかはこの街を出ていくことになるだろうが、暫くは此処で過ごすのだ。望むならあまり高くなく、しかして質の良い所が良いなー…。

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