閑話 異世界のこと
ちょっと急ぎ気味に書き上げたから、誤字脱字とかが酷いかもしれない……。
時は今から少しだけ遡り、まだ森の中を歩いていた頃。
「そーいやさ、この世界の年月日とか季節とかってどうなってんだ?」
「何じゃ、また藪から棒に」
「いや、単純に気になってよ。今が何年で、何月の何日かとか把握しとけば不都合は無さそうだろ。季節があるならそれに合わせた動きも出来るしな」
「ふむ、人間共の暦の読みは知らぬな。龍族が扱う暦ならば言えるが…」
「月日とかも違うのか?」
「そうさな、そこらは儂らと貴様らの過ごし方の違いがある。時の流れの感じ方や、数え方も必然と違いがあろうて」
「今現時点で、この世界が何年の何月何日か分からないってことか」
うーん、それはそれで不便さが感じられるような、そうでもないような…。
「んじゃ季節はどうなんだ? 此処らは結構暖かいとこっぽいが、四季みたいなのは存在するのか?」
「四季、というのは分からんが、一定周期であらば寒くなったり暖かくなったりはするの。間の期間はかなり空いておるが」
その後、フェミリアの説明で大雑把ながらに分かった事としては、此処は大陸であり、日本みたいに島国ではないこと。
星自体が自転をしており、日本と比べればかなりの期間は掛かるが、四季っぽいものを感じられるらしい。
まぁ、この大陸自体が地球で言う赤道線に比較的近い位置に存在するため、寒くなると言っても程度が知れているとの事だ。ちょっと肌寒く感じるくらいなら薄手でも外に出られるとか。
四季が遅れる程の大陸って何だよ…とは思うが、地球と規模が違うんだろう、そういうことにしておこう。
そしてファンタジーの世界ならではの物質や、元素も存在しており、それらが天候や地形などに強く影響を与えてるとこもあるのだとか。
曰く、魔法の素となる元素が多い場所では、質の良い薬草や果実、屈強で凶暴な魔物が生まれやすいだとか、とある物質が多い場所では地殻変動がよく起こるだとか、天災が頻繁に発生するだとか。
これだけ聞いていればデメリットしか無いようにも聞こえるが、ちゃんと人類や他種族の生活などにも潤いを齎しているらしい。
技術などが前世と比べるのが烏滸がましい程に発展している国や、生活水準がかなり高い村、信仰する神が本当に存在しており、そこを護っているとか。
最後に関してはあまりにも眉唾ものが過ぎるのだが、この世界は非現実が広がるとこだ、きっとあるんだろう、うん。
因みにこれらはグラニアに聞きました。
フェミリアはちんぷんかんぷんと言った表情を浮かべながら、俺と一緒に聞いていた。
こいつはこう…何か抜けてんだよな、ホント締まりが無い事で…。
「ま、大まかには分かった、サンキューな。因みに今季節的には何処に当たるんだ? まだ比較的温いなーって感じだし、春辺りか?」
「春…とは、蕾が開花する時期だったか。確かに、時の流れで考えるとその辺りになるか」
「綺麗な花とか咲く時分なんだな、いつか花見とかしてーなー」
「花見とは何じゃ?」
「花見ってのは、簡単に言えば野山とかの花が咲く木の下とかで、花を眺めたりしながら飯を食ったり、寝たり、遊んだりとかするもんだな。一人でやるのは虚しいだけだから勧めねぇけど」
いや、ホントに、一人で花見とかするもんじゃないぞ。
一時だけ気の迷いでやった事あったけど、周りが家族だったり、カップルだったり、どっかの会社の団体さんだったりで楽しそうにしてるのを見て虚しさを強く覚えるだけだから。
あ、思い出したらちょっと泣けてきた……。
「ふむ、存外に普通じゃの。普段から屋内ではなく、外で過ごしとる儂からすれば、いつもと変わらんしな」
「うむ、我も同感だな。人間と違い、魔に分類される我らは人間のように屋内で過ごすことが少ない。感動、といったものは少なそうに感じられよう」
「それは一人だからじゃねぇのか? 誰かとやりゃ、また違ったもんが感じられるだろうよ」
「そういうもんかの?」
「そういうもんだ」
ま、これをやるにしても、まず帰るべき場所が無けりゃ野宿みたいになるんだけどな。現在進行系でそうなってるし。
早い段階で宿とか確保出来るようにしねぇとなぁ…一番良いのは定住出来るとこだけど、無一文だからそれも望めねぇし…。
「そういやこの世界の通貨の単価とかも知らねぇな、そこらも勉強していかねぇと…。それに言語や文字の読み書きも…はぁー…」
硬貨や紙幣の単価が、元の世界と同じような感じであれば物凄く助かるのだが、どうせこういった場合はお約束として違ってたりするんすよね、俺知ってる、なろうで出てた。
銅貨、銀貨、金貨とかだったら感覚が掴みやすくて大いに好ましいんだが、そこらとかどうなんだろうか。
「人間共が交わす物か? そうだな、確か銅、銀、金を用いて売買をしておったな。いつぞやか、我に挑んできた阿呆なまれびとなる者が自慢気に『金貨50枚で買った装備だ、負けるはずがねぇ!』等とほざいておったのを覚えておる」
ご都合主義な世界でござった。
いや、ホント大いに助かるから良いんだけどさ?都合良すぎない?大丈夫?この世界、実はなろうの世界だったりしない?もしそうなら俺モブAとかかな、ありえんくらい弱いし。
てか、その先輩転生者であるマレビトさん、何を持ってこんな、とんでもな奴に挑もうと思ったのか。
ゲームみたいに勝てるとでも思ったのか?だとしたら、よりアホだな、うん。
ステータス確認大事。俺出来ねぇけど。
「金貨一枚で相場はどれくらいなんだろうな、日本貨幣で言うなら一万くらいか? 銀貨で千、銅貨で百とか」
「貴様の元の世界の基準は知らんが、この世界でのやり取りでは家畜の肉一つで銀貨五枚であったな」
「ふーん…その家畜の種類にも依るけど、大体俺の考えるくらいで合ってそうだな。買いもんとかは苦労せずに済みそうか」
「飯など其処らの獣畜生を殺せば幾らでも得れよう。お前が弱くとも、我らでどうとでもなる」
「焼くだけのワイルドな肉一辺倒な飯だけだと偏りまくるだろ、魚とか穀物摂れ、あと野菜な」
「注文が多いやつじゃのぉ…」
野生児丸出しな飯ばっかより、料理と呼ぶに相応しい物を食えばその感想も撤回せざるを得ないだろう。
フッフッフッ、と不敵な笑みを溢しながら俺は、いつ着くやも分からない人間の街を目指し、とんでも怪獣を連れて森の中を彷徨い歩き続けるのだった。
街を見つけ、料理の有り難さに内心で涙するのは、もう少し後のことである。