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冒険者ギルド(2)

 ___……ん…?


 あれ?えっと……()()()()()()…?


「……故障か?」


「い、いえ、そんな事はないはずなのですが…」


「んー…よし、ものは試しだな。フェミリア、一回やってみてくれねぇか」


「仕方ないのぅ…」


 若干嫌々な感じが見受けられたが、俺の指示に従って同じように手を置く。


 すると水晶があまりにも眩しいくらいに光り輝き__()()()()()()()()


「へっ…?」


「む? おい、これな玉ころ、砕けおったぞ」


 あまりの予想外な出来事に、呆ける俺と受付のお姉さんと偶々近くに居た冒険者の方々。


 グラニアは面白いものを見たと言うように俺の後ろで腹に手を当てて笑ってやがるし、水晶玉を砕いた張本人に至っては、眉を潜めて怪訝そうな顔をしながら俺に対し、粉々の元水晶玉を指差していた。


「お、おおお、おま、おまままおま、お前、何してんだ!?」


「どわっ?!」


 流石に、これには驚いた俺はフェミリアの肩をガシッと掴み、ぐわんぐわん前後に揺らして問い詰める。

 どれだけ俺が動揺してるか?言葉見りゃ分かるだろ、それくらいだ。


「それくらいにしておけ、イツキ。アホが目を回しているぞ」


「え? あっ…」


「んぇあ……」


 グラニアに指摘をされ、ハッとしてから揺らすことを止める。


 グラニアに言われた通り、フェミリアは唐突に肩を掴まれて揺らされたからか、軽く目を回し、情けない声を漏らしながら答えれない状態になっていた。


 ここまで積み上げた建前が、いとも簡単に、容易く、綺麗サッパリなまでに潰されてしまい、焦りのあまり軽くパニックに近い状態を起こしていた俺は、ここで漸く冷静になったからか唐突に周りが見え、声も聞こえるようになってきた。


「おい、あれって…」「魔力鑑定水晶が割れたって!?」「んなもん初めて聞いたぞ!」「あの女がやったみたいだな」「てことは一緒の奴らも…?」


 なんて言葉が耳に届いてくる。他にもあーだとかこーだとかそーだとか。


 ざわざわと周りが再び騒がしくなってきており、出来事は瞬く間にギルド内に広まってしまった。


 ヤベェ…今度こそ誤魔化しが効かねぇぞ…。


 この流れは多分あれだ、最初から初級冒険者とかじゃなくて一足飛びに上位冒険者に近い状態で登録されるやつだ。

 そうなればどうなるか。田舎から出てきて、初っ端から無双する系のなろう小説とかを読んだことあるやつなら、この後のことは容易に予想できるだろう。


 勇者の生まれ変わりだの、末裔だのと持て囃されて散々持ち上げられるか、()()()()()()()()()()()である。


 前者ならまだ良い、そんなんじゃないと言うなり何なりして逃げ出せば良いからだ。重責負わされようものなら死ねる。


 だが、後者となればどうだろうか。この街を領土とする国が本腰を入れてくれば、逃げるどころではない。


 そうじゃなくても上位の冒険者なんかに登録されてみろ、あれやこれやとつけて呼び出されたりとか、重すぎる責任を負わされたりだとか、危険しかない任務に行かされたりだとか、しがらみだらけで自由なんて程遠くなる事受け合い間違いなしだろう。


 何とか、何とか誤魔化せる方法は……。


 __そうだ!!


「あ、あー…コイツは戦士ではあるが、同時に体内魔力を高める修行を幼い頃からやっててな。俺も測ったこと無かったから知らなかったが、結構高まってたみたいだな!」


 いや、これだいぶ無理があるな。

 受付のお姉さんもめっちゃ凄い目で見てるし、周りの視線も痛ぇ…。


「体内魔力を高める修行だって? 聞いたことがないぞ、かの伝説の魔法使いである『ジェファー』様もそんなのは編み出せてない」


 俺の発言を耳にした冒険者の一人の男が声を上げる。

 それに同調するように周りの冒険者達もそうだそうだと口に出したり、頷いたりしていた。


「ジェファー…?」


「異邦人の一人だ。我も名を聞く程だからな、相当な魔法の使い手だろう。与えられた天恵もかなりのものだと聞く」


 いつの間にか俺の真後ろに移動していたグラニアに、コソッと小さな声で問い掛ける。

 グラニアも俺に合わせて小さな声で、疑問に対する答えを返してくれた。


 しかし、ジェファーか。随分と日本とはかけ離れた名前の人だな。外国人も取り入れてんのか?女神とやらは。節操なし過ぎるのでは?


「ま、まぁ、聞かねぇのも無理はないだろ。こいつ独自に編み出したものだからな、魔物と渡り合う上で腕っぷしだけじゃ限界もあんだろ」


「ならば魔力付与された道具や、内蔵された武器などを使えば良い」


「そんな便利アイテムがあって、簡単に手に入るんだったら毎回毎回死にかけてねぇよ…」


 こちとら恐ろしい森で装甲熊さんと出会ったんだぞ、便利アイテム片手に森のくまさん歌いながら散歩してたんじゃねぇんだわ。


 そうじゃなくても、こいつらの本来の姿での戦いで、余波に当てられたりとかして死にそうになってたんだわ。


 色々と苦労したんだぞと言いたげな雰囲気を全力で出しながら、少し遠い目をしながら言葉を返す俺に、想像は出来ずともかなりの経験をしたのだろうと察した彼は「お、おう…何か、すまん…」と謝ってきた。


 分かれば良いのよ…。


「とにかく、そう言った手段がねぇと生き残れないような場所だったんだよ、良いな」


 あまりの凄みを含んだ言葉に異を挟んできた冒険者たちはこくこくと頷くだけであった。


「……あれよな、力説し過ぎて逆に嘘臭さが消えてきとるのは中々のものじゃよな…」


「ある種、奴の特技と見るしかあるまい。あれが無ければ、先の約束を直ぐ様に違えていたところだ」


 さっきよりかは少し静かになったとはいえ、未だにざわつく周りから少し離れた位置で二人が達観しながら会話を交わしていた。



 *    *    *



「此処に戻るのは久しいな、いつぶりだ」


 パーティーを組んでいるのであろう数人の内、軽装ではあるものの、しっかりとした装備を身に纏った、先頭を歩く茶髪の男が城壁を眺めながら呟く。


 その問い掛けに答えたのは、彼の斜め後ろを歩いていた尖った魔女のような服装と、大きな帽子を被った女性だった。


「そうねぇ、大体一週間は経ってるじゃないかしら」


「一週間か、少し時間を掛けすぎたな」


「そう言うな大将、あれは俺ら_というか、あんたじゃなきゃ相手出来なかった。寧ろ一週間で終えて帰ってこれたのは相当な速さだろ」


 カラカラと(おど)けるように笑うのは弓を背に背負う狩人の様な男。

 頭後ろに手を組み、上機嫌な様子で女性の少し後ろ辺りを歩いていた。


「だがもう少し早く向かえていたら、その分早く終われてただろう。余計な被害も出さずに済む」


「それを言い出したらキリが無いわ。それに、今回の依頼の魔物だって、()()()から出てきたのでしょう? 見つけるのすら苦労するし、討伐なんて尚更よ」


「そーそー、幾ら大将が最高階級の冒険者で、天恵を持つ()()()()であっても、ある程度の限界はあるってもんよ。俺としちゃあ、大将が俺らと同じ人間だって知れて安心だけどな」


「口だけは一向に減らんな、お前は…」


 仲間である弓使いの彼の軽口に苦笑いを溢しながら、彼は街の門をくぐり抜け、ギルドへと足を運ぶ。

 騒ぎが未だ落ち着いてない、波乱のギルドへ……。

ゴテゴテした装備をした奴よりも、軽装の装備をした奴の方が強そうに見える現象、何でしょうね?

なろうとかラノベに侵食され過ぎたせいか…?

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