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冒険者ギルド

 街道から一歩、冒険者ギルドの中へと入った瞬間に空気が変わったのを一般人の俺でも感じられた。


 外の喧騒に負けないくらいガヤガヤとしており、あまりにも広すぎるくらいの建物の中では、それでも所狭しと言うように人が雑多としていた。

 酒場も併設されているのだろう、テーブル席では酒と幾つかの食事を前に談笑している男達や女達が見られる。昼からご機嫌なことだ。


 二階にも行ける階段もあったが、上の階も下に負けず多くの人が居るようだ。席がなかったのか柵により掛かり、立ち飲みをしている者が居るのが見える。


 何組かが、談笑を止めて入ってきた俺達を見たが直ぐに興味を失ったのか会話に戻っていた。

 いや、数名ほどはアホ面晒してこっち見てんな、主に男が。


 まぁ、十中八九その視線は俺ではなく後ろの二人に注がれてることだろう。見た目だけならモデル顔負けの美人さんだしな。


「んーと、受付は…と」


 人がごちゃごちゃし過ぎて前へ進むのもやっとの思いだったが、苦労して進んだ甲斐があってか、目的の場所へは何とか着けた。


 これと関係無いが、進む際に俺の足踏んだやつ、後でタンスとかに小指ぶつける呪い掛けてやるからな。覚悟しとけ。


「冒険者ギルドへようこそ、今日はどういったご要件ですか?」


「あぁ、えっと、身分証みたいなもんって此処で作れたりするか?」


「はぁ、身分証ですか? 確かに作れなくはないですが、それでしたら冒険者証をお作りになった方が早いかと思われます」


「あ、それはパスで、死にたくないし。」


 俺は手を前に出し、その話を拒否する意志をありありと見せる。


 受付のお姉さんはこれまた「はぁ」と少し困ったような声を出していた。


 仕方ないじゃない?だって前世で自分で自分を殺す、自殺という手段を選んだとはいえ、死んだときの感覚とか色んなものとか知っちゃったし覚えてるんだもの。もう一度それ味わいたいとは思わない。


 それにろくな死に方とか無さそうだもんなー…この世界…。


「あ、俺は身分証みたいなのだけで構わないし、冒険者証とか要らねぇが後ろの二人は発行してくれ。その方が利便が付きそうだしな」


「んぁ? 儂らがか?」


「む、我は構わんが…」


 親指を立てて後ろの二人をグッと差せば、それに気付いた二人は少し不思議そうな顔をする。


 事前の打ち合わせも無かったので仕方ないだろう。


「は、はぁ…では出土や個人の情報などをこちらの書類にご記入の上、こちらの水晶に手を置いて下さい」


「んぁー…お前ら文字書けるか?」


「「………」」


 うん、ダメそうですね。


「すまんが代筆を頼む」


 半ば予想してた通り、二人して押し黙るのを見てからお姉さんに頼んだ。

 もはやお姉さん自体、えぇ…みたいな顔してたけど、諦めてくれ。俺はこの世界の住人じゃないし、後ろの二人は人間じゃないんだ。


「で、ではお名前から」


「イツキ」


「フェミリアじゃ」


「グラニア」


「イツキ様、フェミリア様、グラニア様ですね。では次に出身を」


 ぐ…やはりここでもそれが必要なのか…。


 出身地が何処なのか、これはどうやら登録する上で避けて通れぬ道らしい。前世でも住民登録とかでも必要だったし、ある意味では普通だけど…だけど、なぁ……。


「……彼処って何て森だっけか」


「あの森か? ふむ、何て名で呼ばれておったかの…」


「確か『黒樹海(こくじゅかい)』だったか」


「こ、黒樹海!?」


 受付のお姉さんが愕然とした表情で声を上げる。


 その声が耳に入ったのか、辺りに居た冒険者達が何事だと言うようにガヤガヤと少しずつ集まって来た。

 こちらには来なかったものも、酒の肴程度にはなるかと耳を立てている感じもある。


 こ、これはちょっとヤバいというか、マズい気がするな…。


「あ、あー、えっと、何だ。あ、そう! 結構辺鄙なとこの出だからさ! 目印になるようなものがあれくらいしか無くてよ! そういうこと!」


「え、あ、そ、そういう事だったんですね! 大きな声を上げて失礼しました」


 そんなやり取りを聞けば、集まっていた冒険者達は「何だ、そんな事かよ」と言いたげに散らばっていく。


 た、助かった……。


「? 彼処から出て__」


「あーーっと!! それ以上はいい! あんな辺鄙な名前もない村から出れただけで十分だろ! また蒸し返してくれるな! 退屈過ぎて死にそうだった日々を思い出すからな!」


「お、おう…何じゃ、唐突に元気になりおって…」


 こんのアホめ…俺の努力を水の泡にするような発言をすんじゃねぇ……。


 あまりの勢い付いた遮りと、気迫が込められた視線を俺に向けられ、たじたじに言葉を返すフェミリア。


 グラニアの方は押し黙ったままなので、きっと意図を理解してくれたのかもしれない。


 そうじゃなくても、このアホと違って黙ったままで居てくれるのは正直有難い。


「ハァ、ハァ……んで、出身だったか。今言った通り、名前もない村出身なんでな、言いようがないんだ、すまん」


「畏まりました。では手続きが少し大変になりますが、この部分は省いておきましょう」


「助かる、他に何かあるか?」


「そうですね、職業はどうされましょうか」


「職業? …冒険者なら前衛、後衛みたいなあれか?」


「はい。戦闘職、魔法職などのあれです」


「ふーーむ……」


 RPGゲームやTRPGゲーム、漫画にアニメにラノベやなろうを含めた小説で、パッと出てくるような職を考える。


 戦闘職で前衛なら確実に戦士や剣士だろう。後は騎士とか。

 魔法職ならそのままだろうな、属性付与(エンチャント)師とか居たりして。


 いや、俺一人で考えても仕方ないな…。


 そう感じた俺は、再び押し黙ったまま立つ後ろの二人の方を向いた。


「お前ら、戦闘とかで得意な技みたいなのは何だ?」


「ぉん? そうじゃな…儂は切り裂いたりじゃな」


「我は燃やせるぞ、灰燼に帰せる事が可能だ」


「街中ではぜってぇに使うな、今此処で誓え」


「む、むぅ…分かった、誓おう」


 あまりにも物騒過ぎる単語に脊髄反射レベルで言葉を返してしまったのだが、これは俺悪くないと思います。

 (むし)ろファインプレーだろ、これ。


「で、では戦士と魔法使いにしておきますね…」


「悪いな。んで続け様に聞くけど、俺は何だ?」


「「審判兼我ら(儂ら)の荷物」」


「だ、そうだ。荷物番って職はあるか?」


「あ、ありませんね…」


 それで良いのか、みたいな視線で受付のお姉さんが見てくるが、良いんです。戦闘とか出来ないし、お荷物なの自覚済みなので。


「んじゃ交渉人みたいなのはあるか?」


「えぇ、それなら近しいものが一つありますね」


「あんのかよ…ならそれで良いや。職は決まったな、後はこれに手を置けば良いのか?」


「はい、それであなた方の体内魔力量を読み取り、証を発行する形となります」


「へぇ、便利なこって」


 こういったのがあるから、門兵だけで出入り口の警備が済んでるのかもしれないなと半ば感心を覚えながら、俺は水晶玉にそっと手を置き__

ちょっと長くなりそうだったので分割させてもらいます。


鑑定の水晶とか良いですよね、ほんにゃか〜はんにゃか〜って。特に?あ、はい、サーセン。

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