表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王コペオの独裁日記  作者: BrokenWing
3/19

地球の技術

          地球の技術



 ユリを待っている間、吾輩も、皆と一緒にプールで泳いでみるが、これはダメだな。

 水温が低すぎる!

 魔力で身体を温め直したので問題はないが、やはりこの者達とは生活環境も合わないようだ。

 もっとも、その後、吾輩の魔法でプールに大波を起こしてやると、皆、大喜びだったが。


 そうこうしているうちに、また人間の声が聞こえてきた。今度は雄のようだ。


「うわ~、ユリちゃんに頼まれて来てみれば! これ、蝶番が吹き飛んでるじゃないか! う~ん、今はこれで応急処置だな。しかし、誰がこんな事を? って、人間業じゃないような?」


 吾輩は、岩陰に身を潜めながら、その様子を伺う。

 この男も、ユリと同様、青と黒の全身スーツ。ふむ、あれがこの世界での、人族の一般的な服装なのだろうか?

 吾輩は、こいつからも何か情報を引き出せないかと考えたが、止めることにした。

 うむ、こいつにまで、一から吾輩の事を説明し直すのは、かなり面倒だ。こいつらは、吾輩の事を、コウテイペンギン族と勘違いするようだしな。

 また、ユリ以上にアホである可能性だってある。それに、吾輩はユリを待つと決めたしな。


 男は、ぶつくさ言いながら、あの格子戸を紐で縛って帰って行く。中を確認とかはしないようだ。


 その後、する事がないので、あいつらが吾輩にかけた、転移魔法の事を考えていると、ユリが帰ってきたようだ。

 う~む、あと少しで、何か解けそうな気がしていたのだが、今はこちらが優先だ。


 ふむ、服装が変わっているな。

 真っ黒なコートに、黒のパンツ。あの世界での人族とは、色のセンスは違うが、基本は大差ないようだ。そして、何やら大きなバッグを抱えている。


「コペオちゃん、只今~。今日のお仕事、いえ、ここでのお仕事は終わったわ~。じゃあ、行きましょうね~。あ、悪いけどコペオちゃん、この中に入ってくれる~?」


 ユリは、その大きなバッグを開ける。


「ふむ、如何にも危険な感じだが、貴様からは、吾輩に危害を与えようという気配は、全く無いな。しかし、ユリ、何故、吾輩がそこに入らなければならぬのか、理由を教えてくれぬか?」

「そうね~……」


 ユリの説明は、納得できる内容であった。


 ふむ、この世界では、吾輩のような存在は目立つので、それを隠す為だと。

 もっとも、吾輩程の魔力があれば、吾輩にその気が無くても、すぐに周囲にはばれるのだがな。

 そして、何よりも重要なのは、吾輩の姿では、このペンギン達と勘違いされてしまい、その場合、彼女に危険が及ぶようだ。

 詳しい理由は教えてくれなかったが、彼女も急いでいるようだったし、吾輩も、早くこの寒い部屋からは出たい。


 彼女からは、嘘を吐いている波動が全く感じられなかったので、吾輩も、大人しく従う事にする。

 郷に入れば、郷に従えということで良かろう。


「では、皆の者、短い間ではあったが、そなた達の事は、覚えておくぞ! そして、あの件、約束はできぬが、待つが良かろう!」

「「「「ありがとう! お達者で~!」」」」


 ペンギン達が腕をぱたぱたさせる中、吾輩は、そのバッグに入る。


「皆、元気でね~。ミミーちゃん、マイト君とは仲良くして、早く卵産むのよ~。あ、キャンディーちゃんと、ペンタもね~。じゃあ、さようなら~」


 ふむ、ユリも挨拶をしているようだ。

 しかし、彼女はここが職場ではなかったのか? 少し大袈裟な気がするが?



 その後、数十分程か? 途中、心地よい振動を感じ、うとうとしてしまう。


「コペオちゃん、お疲れ様~。着いたわよ~」


 ユリがバッグを開けて、吾輩を抱え出してくれる。

 吾輩は周囲を見回し、魔力とかの探知もするが、どうやら異常は無いようだ。この近くでの魔力反応は、彼女だけだ。もっとも、十メートル程離れた場所からは、複数の反応があったが。


「ふむ、ここがユリの家か。何とも風変わりな部屋だし、かなり狭いな」


 もっとも、吾輩の部屋だって、あの世界では珍しいのだがな。あの屋敷は、人族の辺境地、和国でのスタイルを吾輩が気に入ったので、それを真似ただけだ。


「う~ん、1LDKしかないから、狭いのは我慢してね~。でも、内装は、このマンションくらいが、この国では一般的かしら~? あたしは、今は彼氏も居ないし、これで充分なのよ~。でも、実家なら、狭いなんて言わせないわよ~」


 白で統一された壁の中、吾輩が見た事も無い物がかなりある。いちいち聞くと、時間がかかりそうなので、それは後回しだな。


「ふむ、それは失礼したな。しかし、この部屋も、吾輩には少し寒いようだ。先程は、あの者達には快適そうだったので、遠慮しておったがな。そして、この程度の広さならば、吾輩の魔法で、一瞬で暖められよう。ユリ、異存ないか?」

「まあ、今は冬だから、仕方ないわよね~、じゃあ~、エアコンつけ…、って、え? 魔法?! コペオちゃん、魔法使えるの?! やっぱり、異世界のお偉いさんは違うのね~。ええ、お願いするわ~」

「ならば、ウォーミングエア! 吾輩の適温になるが良い!」


 吾輩の身体が一瞬白く光る!

 ふむ、いい感じになったな。


「す、凄いわ! まるで春みたい! これなら電気代が節約できるわ! もう、絶対にコペオちゃんを手放さないわよ!」

「ふむ、電気代というのは分からぬが、そなたにも適温であったならば良かった。では、早速だが、吾輩の質問に答えてくれぬか?」

「それはいいけど~、コペオちゃん、ご飯は~? あたし、もうペコペコなの~」


 ユリはそう言いながら、壁に沿って置いてあった、大きな白い箱に手を伸ばし、それを開ける。

 中を見ると、これまた吾輩の知らない物資で溢れかえっていた。

 おそらくは、これがこの世界の食料なのであろう。


「うむ、吾輩も腹は減っておるな。よし、ユリ、食事を摂りながらで良いか?」

「は~い。じゃあ~、レンチンするから…って、あ! コペオちゃんは、お魚じゃなきゃダメよね?!」


 ユリは、白い箱から何かを取り出しながら、吾輩に振り返る。


「いや、そういう気遣いは不要かもな。吾輩は、人間の食べる物ならば、大抵食せるからな」

「あら~? やっぱり、ペンギンじゃないのね~。じゃあ~、あたしと一緒でいいかしら~?」

「うむ、吾輩だって、今の吾輩の境遇は理解しておるつもりだ。贅沢は言わぬ。そなたと一緒で充分だ。感謝するぞ。だが、口に合わぬ場合は遠慮なく申すが、そこは勘弁してくれぬか?」

「は~い。じゃあ~、ちょっと待っててね~」



 食事は、吾輩の世界でも似たような物があったので、それ程抵抗は無かった。

 ピザとナポリタンとかいう料理と、スープ。後は、生野菜に味付けしたものだ。


 ふむ、かなり美味いではないか!

 この地球という世界、食に関しては、あの世界より進んでいるようだ。


 もっとも、ユリは、吾輩がスプーンとフォークを使っているのに、かなり驚いているようだ。

 まあ、吾輩には人間のような手が無いので、理解はできる。魔力で腕に張り付けているだけなのだがな。


 そして、食事中、吾輩はユリに、この世界の種族構成とか、国家の事とか、様々な質問をする。

 彼女は、それに嫌な顔一つせず、丁寧に答えてくれる。

 また、返答に困っていた事態が多々あったが、そこは仕方なかろう。

 吾輩も、彼女の能力は、ある程度把握しているつもりだ。完璧な答えを期待している訳ではない。


「うむ、大変感謝するぞ! まだまだ聞きたい事はあるが、そなたも疲れたであろう。そして、馳走になったな。美味であったぞ」

「どういたしまして~。じゃあ~、お風呂にするわね~。コペオちゃんも一緒に入る~?」

「ふむ、風呂か。それは良いな」


 うむ、あのプールは、冷た過ぎた。もっとも、人間と一緒に入るのは初めてなので、温度が合うか、少し心配ではあるが、先程の魔法で、人間との温度感が一緒なのが確認できたので、大丈夫であろう。



 小さな浴槽ではあったが、ユリは、豊満な胸の谷間に吾輩を抱きかかえ、かなりご満悦のようだ。

 吾輩も、ユリの胸の感触は結構気に入っておるので、異存は無い。

 そして、心配していた湯の温度だが、これも問題無い、いや、多分に快適であった。ふむ、人間の生活環境は、吾輩と一致するようで、これも何よりである。


 その後は、ユリは薄手の就寝着に着替え、吾輩を抱きながら、ソファーで寛ぐ。

 テレビとかいう、この世界の発明品の説明を受けながら、一緒に見る。


 ふむ、どうやらこの世界、魔法は無いが、技術レベルは、あの世界より数段上のようだ。これは、帰ったら広めてやるべきだろう。

 なので、早速ユリに聞いてみるが、彼女は、殆どその原理に関しては理解しておらず、また、理解している部分についても、今度は、吾輩にとって意味不明な単語の連発である。


 う~む、これは、吾輩には、この技術を理解する為の基礎が、根本的に欠如しているということで間違い無かろう。

 ふむ、ならば、ユリの言う、『小学校』という場所で、一から教育を受けるべきか?

 まあ、時間が許せば、それもありであろう。


「コペオちゃん、学校行きたいの~? 偉いわ~。でも、義務教育を全部終わらせるには、9年もかかっちゃうのよ~? あたし、おばさんになっちゃうわ~」

「ぬお? そんなに大変な事なのか?! やはり、生半可な覚悟では、この技術は習得できぬという事か!」

「でも~、知りたい事だけなら、何時でも知ることが出来るわよ~。あたしのスマホでもいいけど~、これは、コペオちゃんには難しいかも~? じゃあ~、隣の部屋に行くわよ~」


 吾輩がユリに抱きかかえられて移動すると、そこには、ユリが使っているであろうベッドと、テレビと同じような物があった。


 ちなみに、ベッドには、吾輩を模した柄の、巨大な枕が置かれていた。

 こやつ、早速吾輩の影武者を作るとか、結構殊勝な心掛けであるな。

 うむ、これならば、ユリを吾輩の部下に加えるのに、他の部下も反対すまい。


 おっと、今はそっちではなかったな。


「ふむ、確かにテレビからも情報は得られたが、あれは一方的であって、吾輩のリクエストには応えてくれぬであろう?」

「あ~、これはパソコンよ~。あたしがやるから、ちょっと見ててね~」


 ユリはそう言いながら、テレビの横に置かれていた黒い箱のボタンを押す。

 そして、その前の椅子に腰かけ、吾輩を膝に乗せる。


 ふむ、この位置ならば、見やすかろうという彼女なりの配慮であろう。

 ここまでされれば、ユリを吾輩の正式な部下として認めてやらねばな!

 帰ったら、早速ユリを人族自治区の長に任命してやろう。あの、アホタレ勇者共よりは、遥かにマシなはずだ!


「それで、コペオちゃんは、何が知りたいの~?」


 おっと、いかんな。こっちであった!


「そうだな、もし可能であるならば、先ずはこの世界の地図だ。済まぬが、先程のユリの説明だけでは、今一つ理解できなかったのでな」

「は~い。じゃあ~、一緒に使い方も教えてあげるから、よく見ていてね~」


 彼女は、キーボードと呼ばれる、アルファベットという言語と数字が配置されたボタンの塊を、説明しながら、一つ一つ指で押していく。


 ふむ、これはテレビではなく、モニターと。

 そして、彼女は、原理はよく分からぬが、インターネットと呼ばれる、この世界の情報集積所に、繋げようとしているようだ。


 すると、モニターに、色のついた、地図と思われるものが表示された!


「ここがあたし達の居る国、日本よ~。それでお隣の、この出っ張ってるところが韓国で~……」


 ふむ、小さな文字で、ちゃんと表示されておる。

 しかも、望めば、拡大縮小表示も可能と!


 これは凄い技術だ!

 吾輩の世界には、このように詳細な地図は存在しなかった。また、この世界が一つの球体、星であるという概念も、吾輩の世界で知っている者は、ごく僅かであろう。

 もっとも、吾輩は、あの星の遥か上空から、直接見たので知っている訳だが。

 そして、今度、吾輩もこの地図が正確かどうか、直接確認すべきだな。


 その後、ユリは、この世界の政治体系なども、そのインターネットを駆使して、吾輩に見せてくれる。

 そして、1時間後には、吾輩でもアクセスできるようになった!


「じゃあ~、あたしはそろそろ寝るわね~。コペオちゃん、約束は覚えているわよね~?」

「うむ、吾輩も少し疲れたようだ。では、遠慮なく、吾輩を抱いて眠るが良かろう」


 吾輩は、ユリの胸を枕にして、その晩は快眠したようだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ