#1 白花ふしぎは喋らない。
ちょっぴり不思議な学園生活。
ー高校に入ってすぐの春のことー
「俺と付き合ってください!!」
俺は、入学式で一目惚れした
白花ふしぎ ちゃんに告白した。
クラスも違くて接点なんてなかったし、きっと振られるのがオチだろうと半分諦めていたのだが…
「………」
「えっ?」
白花さんは、無言で頷き、なぜか承諾してくれたのだ。
え?俺と付き合ってくれるの?と訊いても、
無言でただ頷いた。
まさかの片想いが実った瞬間だった。
そこからトントン拍子で、俺は白花さんと付き合うことになった。
一緒に下校したり。たまに寄り道したり。
休みの日には一緒にどこかへ遊びに行ったりと、ごく普通の恋人同士らしい日々を送っていたんだ。
…でも。
俺には気になることがひとつ。
それは…
白花さんが喋っているところを
1度も見たことがないということ。
「なぁ逸月、英語の課題やった?」
「…え。あれ提出今日だっけ?」
俺の名前は、黒崎逸月。
特にこれといった才能や個性もない、ごくごく普通の男子高校生だ。
成績は中の下、運動も平均くらい。
普通オブ普通を極めたような男。それが俺。
「最悪…金木〜ノート見せて…」
「ガリガリくんで手を打とう」
「わかった奢るから…」
そんな俺にも、一応、彼女がいるのだ。
「黒崎〜。彼女来てるよ」
「えっ」
無表情だけど、どこかあったかい目をした女の子。
白花ふしぎちゃん。
「ふしぎちゃん!どうかした?」
「………」
「ん?…あっ、これ俺のハンカチ…わざわざ届けに来てくれたの?ありがとう」
「………」
「ううん」、と言わんばかりに首を横に振る。
これはふしぎちゃんの「NO」や、「どういたしまして」の合図。
付き合い初めて約半年。未だに俺はふしぎちゃんの声を聞いたことがない。
それは、俺に限ったことではなくて。
「白花さん?」
「ああ〜休み時間ずっと本読んでるあの人か…」
「そういえば話したことないよね」
「美人だから高嶺の花って感じで話しかけにくいしね〜」
少なくとも、この学校内でふしぎちゃんと喋ったことのある人は一人もいないらしい。
ふしぎちゃんは、成績も運動もなかなかにできる所謂優等生に分類される子だ。
でも、授業中普通に居眠りしてたり、何なら屋上でサボってボーッと空を眺めてたりと、とにかくふしぎちゃんはよくわからない。掴めない。
その名の通り、不思議な子。
これは、そんな不思議な俺の彼女と、
ちょっぴり変な生徒達との、
学校生活記録の物語である。
初投稿となります。
はじめまして、ぜろつーです。
ちょっと不思議な青春、日常、ほのぼのラブコメを目指して書いていこうと思っています。
誰か一人にでも気に入って貰えたら嬉しいです。
これから何卒よろしくお願いします!