表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
姫様!魔王様!  作者: 煌黒星
アリア王位奪纂
61/68

第五十七話=破滅に身を任す

 師匠が目の前に、立ちはだかっている。いまさらではあるが、思い出してしまった。エリハイアの王宮を発つ前に王様に求められたことを、王様に命令されたことを。そしてその日に師匠から聞いたことを。

 あの時から私は決まっていた。自分の目で、自分の耳で、いったい何が本当の悪か、そして邪も……まだほかの事は言えないけど、目の前にいるあいつは、あの狂神こそが本当の邪悪なものだとわかった。

  「……ゆうしゃ君?」

 剣を構いながら前へ進んだ。師匠にこれ以上姫様を傷つけさせないように。

  「師匠、教えてください。」

  「あら、まだそう呼んでくれるんですか。」

 後ろにいる姫様に剣を指しながら、言い続けた。

  「ゆうしゃ君があれほど好いていた女子、プリスティンを傷つけたなおでも……」

  「師匠……」

 それがわかっていてもなお、姫様を傷つけた。大親友だったにもかかわらずに……私の好きな女性であるにもかかわらずに。

  「そんなにアイツが大事ですか、師匠。」

  「ッ!」

 今度は逆に、私が背後にいる狂神に剣を指した。

  「なんと無礼な……!神の御前ですよ、ゆうしゃ君。」

  「それはこちらのセリフです、師匠。姫様は、エリハイアの姫様ですよ!貴女が生まれ育った国の姫様ですよ!」

  「そんなことわかりきっている!でも、『姫』と『神』は違うと思いますよ。」

  「神だなんて、こっちは最初から認めていない!あんなのが神なら、この世界には神は不要だ!」

 剣を構える。そして後ろにいる「神」は師匠を退かして、前へ出た。

  「ゆうしゃ、ですよね。」

  「そうだけど。」

  「私からもらった力、大事にしてましたか?」

  「とっくに時間切れになってんだぞ、何を言っているんだ。」

  「いやいや、そうじゃないだろ?」

 やれやれと、首を横に振る。

  「まぁ、いつかはわかると思うから今はいいか。」

  「……なんのことだ、お前は。」

  「ちょっと、ゆうしゃ君?礼儀がなってませんぞ。」

  「あんなやつに礼儀なんて要るか!あいつのせいでエリハイアも、アリアもめちゃくちゃにされたぞ!礼儀を払うほうが難しいでしょ!」

  「あんなやつ、ですって……!?」

 目を大きく開いて、私を睨む師匠。あんなに大事なんですか、あんなに尊敬されるべきなんですか、私には到底そう思えない!

 あんなやつを善と決め付ける、あんなやつを信じつづける、あんなやつを褒め称える師匠がわからない!本当に完全にわからない!

  「ゆうしゃ君、あなたが愛弟子だと思ってもう一度チャンスをあげます。今すぐ、神様に謝りなさい。」

  「そんなの、できかねます、師匠!」

  「……本当に、残念だよ、ゆうしゃ君。」

 さっきまで怒りの目をしていた師匠だが、今は違う。今は悲しんでいる。悲しむ?そんな必要がどこにあるんですか!

 あんなやつに礼儀を払うほうが難しいって言った、それは紛れもなく私の真心だ。それなのに否定するなんて、師匠はいったい、どうなってしまったんだ!

  「師匠、教えてください!」

  「何をだ!そもそもアタシは今からもうキミの師匠じゃなくなった!これからはアタシのことを師匠呼ばわりしないで!」

  「それでもいい!だから、教えてください!どうして、どうしてあんなやつを神だと讃え、従っている!おかしいでしょ、あいつのせいで国の人たちが苦しんでいたぞ!」

  「それは必要な犠牲だ!」

  「必要なわけないですよ!!」

 師匠の答えを聞いた直後、考えもせずに反論してしまった。

  「何のために、人は死ぬべきですか!」

  「それは……!」

 答えようとしているときに、遮った。

  「何のために、家族をバラバラにする必要があるんですか!」

  「だから……!!」

  「何のために、私は大好きな師匠と敵対しなければならないんですよ!!」

  「――!!」

 それに驚いて、師匠は口を閉ざした。

 今思い返すと、師匠と一緒に居た日々は本当に楽しさでいっぱいだった。幸せだった。それだけにたまに姫様ではなく、むしろ師匠のことが好きになりそうになっていた。

 それなのに、私はそんな大好きな、いつでもかわいくて、ほっとけなくて、愛くるしい師匠と敵対するなんて……!どうしてだ、どうしてこうなってしまったんだ!

  「師匠が答えられないなら、アンタが答えろ!神と自称しているんだろ!」

  「はぁ……」

 そしてため息をこぼす。

  「すべては世界平和のための、致し難い犠牲にすぎないのだ。」

  「世界平和だと……平和のために、戦争をするなんて間違っている!仮にも一国の王であろうアンタが、それすらもわからないというのか!?」

  「あぁ、そうだ。」

  「なん、だと……!?」

 怒りで頭がいっぱいになっている。だが、それでも私は知っている。そんなので絶対に平和にならないってことを、そんなで平和になってもまた戦争が起きるだけだってことを!

 なのに、どうして彼は……!

  「世界平和のために、異論を持つ者は皆殺しにするべきだからな。」

  「アンタ……!」

  「もういいでしょ!これ以上話を続いても平行線のままです!ですからーー!」

 再び剣を構える。そして、私に向かってきた。

  「悲しいのはアタシも同じです。けれど、神様に逆らう以上、この世界に、新しく作り返される世界に、キミの居場所はないんです。ゆうしゃ君。」

  「師匠……」

 上から私を見下す師匠だが、その目には確実に悲しみを宿っている。師匠も私と同じで、あの日々を捨てられないはずだ。

 ならば、まだ説得する余地はある。いや、なくても、もしもなくても、私は説得する!師匠を取り戻すために、師匠を悪の道から救い出すために!


(つづく)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ