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サバイバル異世界  作者: ノワール
第1章 新たな人生 アステリード王国
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第8話 貴族の屋敷

異世界の言葉を色々設定していますが、雰囲気程度なので気に留めないで大丈夫です。

 そもそも、なぜ荷物ごと出されたんだ。もしかして、もう帰ってくるなって意味なのか?行くあても何もないんだが・・・。


 ガレッド車の中に入ると、少女の向かい、老執事の隣に座らされた。嫌だなぁ。怖いよ・・・この人怖い。


「あなた、お名前は?」


 少女は微笑みながら名前を聞いてきた。


「テラード・セイジと申します。ラ・アストラ」


 この世界では名前が先で家名が後だ。本来ならセイジ・テラドなのだが、最初にアスト達に誤解されてからというもの、テラードが名前でセイジが家名になっていた。

 実際その方が洋名っぽくなるので、この世界ではテラードで通している。


「そう、よろしくね、テラード。わたくしはライアルラーデ・クレス・レ・リスタード。リスタード・レ・リドーアの次女です」


 公爵令嬢かよ。

 王権制度のこの国はアステリード王国と言って、アステリード王家の元、元の世界の感覚で当てはめると、公爵(リドーア)侯爵(ルーグ)伯爵(ケイデス)子爵(クラーデ)男爵(ディーフ)と階級がある。さらにもう一つ下のボレドという階級もあるが、当てはまるものがなかったので、

便宜上俺は士爵としている。


 名前や家名、敬称などは頭の音によって位が表現される。ア行の音が最も高貴で、ラ行、カ行、それ以外と階級が下がる。


 最上は女神ヴィータを表す《ア・ラ・アステル》。

 ラ・アステリードが王家、その次が公爵家相当の《レ・リドーア》。


 リスタード家、という意味ならレ・リスタードでいいが、公式な場では《リスタード・レ・リドーア》が『公爵位のリスタード家』という意味になる。

 階級が分からない場合や、あまり公にすべきでない場合、また格式ばった場でない時は《ラ・アストラ》という敬称で呼ぶ習わしだ。


 身元不明の迷い人たる俺からは、雲の上の存在なことが、この三ヶ月で分かっている。それこそ、その気になれば殺しても咎められないほどだ。

 リーメ・マーシャの態度からして理不尽な御方ではなさそうだが、とりあえず機嫌を損ねないように注意しなければ。

 本人は優しくても老執事が冷たそうだしな。


 先ほど俺を拘束した、ガトーと呼ばれている老執事は、長い白髪を後ろに流し、首の後ろでまとめている。ザスト以上に体格がよく、身長が高いので、この世界での執事服と思われる服が恐ろしく似合っていない。面長の顔に鋭い切れ長の三白眼。今もガレッド車に同行し、俺の隣で背筋を伸ばしている。


「あまり緊張なさらなくてもよろしくてよ。マーシャがああ言ったということは、何かしら面白いところのあるお方なのでしょう。ああ、もし何もないつまらないお方だとしても、悪いようには致しませんからご安心なさい」


 そう言って微笑む。


 あんたはいいんだけどガトーさんが怖いんだってば・・・。


「あなた様の故郷の世界は、どんなところですの?」

「はい、リスタードの姫君(ララ・レ・リスタード)。魔法がなく、科学の発達した世界でございます。ガレッドに曳かれずとも鉄の車が自ら走り、鉄の機械が空を飛び、電気の力で夜も常に光に満ちた世界でございます」

「まぁ!記録にある迷い人と違って、文明が発達した世界なのですのね。魔法がないのに、どうやってそんなことを実用化したのかしら」

「車は、車体の中で小さな爆発を恐ろしい速度で、恐ろしい回数起こします。その力で動力を発生させ、車輪を回します。空飛ぶ機械はヒコーキと申しまして、翼がございまして、その形状に秘密がございます。一定の速度を超えると、風の力で鉄の塊が浮き上がるのです」


 この辺りのことはリーメ・マーシャにも、様子を見に来たグレアムにも話していた。

 これまでの迷い人は、それほどこの世界より進んだ文明はもたらさなかったらしい。

 地球でも第二次世界大戦以降、特に二千年代に入ってからの発達は目覚ましいものがあった。そもそも同じ時間の流れなのかも分からないが、最近の文明を持ち込んだ迷い人は俺が最初なのかもしれない。それか、またさらに違う世界の人間だったか。

 リーメ・マーシャはそれほど興味を持たなかったが、グレアムは興味津々で、何度か話を聞きに来ていた。仕事が決まったら飲みに行く約束までしていたのだが・・・。


 そして、公爵令嬢様も興味を持ったらしい。きらきらと輝く笑顔で話を続ける。眩しい。マジで惚れてまう。


「なんてこと!とても魅力的なお話ですわね。それは魔法で再現できないものかしら?」

「この世界の魔法に対する知識が不足しておりまして、申し訳ございませんが判断致しかねます」

「そう・・・。しかし、古い文献の迷い人以上に、面白そうなお話ね。ガトー、あなたしばらく面倒をみておあげなさいな。魔法も教えなさい。マーシャの話では就職先に困っていたとのことでしたし、多分、わたくしに何とかして欲しかったのでしょう。マーシャが良しとしたなら、人間的な問題も心配はいりません」

「かしこまりました。下働きとして働かせつつ、勉強させます」

「よろしくね」


 とんとん拍子で就職が決まってしまった。喜んでいいのかも分からない。

 飛行機を作れなんて言われても困るぞ。休みはあるのか。グレアムと飲みに行きたいし、教会の近所以外に観光もしたいのだが。


「勿体なきお話でございますが、なにぶん元の世界でも専門家ではございませんので、お役に立てる自信がございません」

「何事もやってみなければ分かりませんわ。他にも役立つ知識があるかもしれません。それに、下々の方の生活を助けるのも、高貴なる(ブレシージ・)者の務め(ラ・アストラ)です」

「お心遣いに感謝致します。誠心誠意、お役に立てるよう頑張ります」

「ご安心を、我が君。どんな無能でも、このガトー、必ずや立派に使いこなしてみせましょう」


 だから、怖いんだよガトーさん。すげースパルタでこき使わされそう。

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