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サバイバル異世界  作者: ノワール
第3章 隠遁生活 紅龍連邦
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第44話 アスカ会長との会食

 会食はなごやかに進んだ。

 アスカ会長と会えた時点で、もう帰還に対して不安はない。

 ラーデ様も俺もリラックスして楽しむことができた。

 また、アスカ会長はグランテニア家と、かなり詳しい内情まで情報を共有していた。


 俺たちが消えてから、すぐにセレタさん達は帝都に戻り報告した。

 王国のリスタード家にも連絡が行き、転移したという結論になったそうだ。

 すぐに帝都、王国の主要な商人や貴族家に捜索願が出された。


 どうやらラーデ様もあまり詳しくなかったが、迷い人とは違った同世界上の転移事件というのは、過去にも何例か確認されているらしい。

 誘拐などはもちろん醜聞でしかないので、公表はできない。

 しかし転移の場合、そのまま帰らなかった場合や無残な最期を遂げた場合もあるが、中には時代の英雄や伝説になった例もあり、そういったことも考慮して公表されたとのこと。

 もちろん、帰還時の状況によっては表向き死んだことにして日陰の生活を強いられる可能性もあっただろう。リスタード家がラーデ様を悪いようにするとは思えないが、公爵家としての対面もある。


 今回は、俺がずっと一緒にいて無事帰ることができたため、上級使用人を証人として、問題がなかったことを証明できる。


「通信魔道具もございます。既に無事保護できた旨はお伝えしておりますので、後ほどご家族とお話してください」

「ありがとうございます。国に戻ったら、これまで以上にバゲランデロ商会を贔屓にさせていただきますわね」

「光栄でございます。それにしても、旅の間にずいぶん親密になったようですね」


 アスカ会長にも関係は言っていなかったが、流石に帝国一の商会の会長ともなると目端が利く。

 ふとした仕草や口調から、早々にバレてしまった。


「元々好ましくは思っていたのです。旅の間は本当に頼りになりましたわ」

「いえ、仕事が見つかったのも最初に資金に困らなかったのも、ラーデ様のお陰です」

「残念ですわ。二ホンの方ですし、私の夫にどうかと考えていたのですけれど」

「…一回しかお会いしておりませんのに、お戯れを」

「そんなに怖い目付きをされずとも、お二人の仲を邪魔などいたしません」


 顔笑顔だし口調は穏やかだが、俺は口を挟めない。

 しばらく会話が止み、それからアスカ会長はふっと息を吐き、会話を変えた。


「それはそうと、こちらにいらした迷い人の方にお会いしました」

「そうなのですか。戦争直後なのに、大統領府の方とお会いできるなんて」

「いえ、彼は民間の商会を経営している商会長です。といっても、元は大統領府から資金提供を受けた商会ですし、今も軍の監視がありました。ほぼ大統領府直下の商会と言えますね。それでも生活品の販売開発もしてましたので、帝国と連邦の商会長が集まって、今後の商取引の方針を議論する場に来ておりました」

「やっぱり(ガン)を作ったのは日本人なんですね」

「こちらでは「ジュー」と言ってましたが、二ホン人でした」

「ああ、ジュウはニホン語ですね。俺はこちらの言語に近い国の言葉でガンと言ってました」

「やはり黒髪に黒目で、なんとなくテラード様に似ておりましたわ」

「先日、そういう人を遠目に見たんです。やっぱりその人だったのかもしれない。あの、その人に私が会うことは可能でしょうか?」

「同郷ですものね。でも、今はやめた方がいいと思います。この間違いでは彼の風貌も知られています。彼の功績を考えると、黒髪黒目の人間が軍に見つかっただけで、同じ落ち人と思われ、身柄を拘束される恐れがあります」

「その人は知識があったみたいですが、私は武器なんて開発できませんよ」

「そんなことは軍には分かりません。その方…リクト様と言うんですけど、彼は軍の金で豊かな生活をしています。完全に取り込まれていますが、テラード様が同じように遇されるとは限りません。見た目も似ていますから、誰に通報されるかも分かりません。帰還の手配が済むまで宿から出ず、人目を避けておいた方がいいでしょう」

「分かりました。…確か、王国や帝国を悪い国だと思ってるんですよね」

「軍がそう広報し、この国の一般市民にはそう思われています。取引のある商会の者などはこちらから侵略した真実を知っていますけど、おおっぴらに否定したら理由を付けて逮捕される場合もあるんです」


 紅龍連邦は大統領を国家元首とし、元は独立国だったいくつかの国がまとまってできた連邦国だ。しかし近年軍部の権力が増し、今は大統領も軍出身であり、法律を変えて独裁体制を築いている。幸い、王国も帝国も軍事力があったために一方的な侵略は受けていないが、危険な国である。


「私たちの世界でも、戦争はありました。しかし現代の日本はあくまで防衛するための軍事力しか持たず、数十年に渡って平和を貫いてきた国なんです。なのに武器を開発するなんて…」

「変わった方でしたね。会議で戦争の話になった際も、人の良い方で争いごとなんて好きじゃないって言うんですけど、連邦が侵略するのには何も疑問を持たないみたいで」


 俺たち日本人からすれば、もはや戦争は遠い世界の話と思う人も多い。どこかの国では今も戦争はあるが、日本が巻き込まれるとは思ってもいない。地球でいう「西側」が正義で、連邦もそっち側に該当すると思っているんだろうか。


「同じ日本人として、話をしなければいけません。なんとか場を持てませんか」

「そうですね…。テラード様を軍の近くに行かせるのは危険ですし、帝国の商会である私のところに来ることは許可されないでしょう。懇意にしている連邦の商会に頼んで、そこへ招待はしてみます。ただ、来てくれるかは分かりませんし、軍の監視を外せるかも不明です。できるとしたらそれが限界ですね」

「十分です!ありがとうございます!」


 同じ日本人が帝国や王国がいい国だと話せば、きっと理解してくれるはずだ。軍との関係があるから開発を止めることはできないだろうけど、それ以上の知識の流出を止めてもらうだけでも価値がある。


 早くアステリード王国に帰りたいところだが、このまま帰るわけにはいかない。

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