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サバイバル異世界  作者: ノワール
第2章 魔道具と機械 ドラクレア帝国
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第28話 連邦撤退とエンジン

 膠着状態の王国軍と連邦軍の横から帝国軍が進軍し、戦闘状態になってからおよそ二週間。

 帝国軍が銃を使ってくるとは考えてもいなかったと思われる連邦軍に対し、数では劣る銃を効果的に利用した帝国軍は華々しい戦果を挙げ、見事に連邦軍を元の連邦領まで追い返してくれた。

 リスタードも少し遅れて解放され、現在王国は戦勝ムードでお祭り騒ぎらしい。

 これから避難民も続々と戻るだろう。


 戦費を帝国に支払わなければならないし、経済的にはこれから大変だが、とにかく戦争は一応の終わりを見た。

 俺達もみんなで祝杯を挙げた。


 帝国はさらに帝国と連邦の国境にも軍を展開し、領土を拡大した。

 まだ戦争の終結というわけではないので賠償金などは取れないが、ひとまず以前と同じ、互いに監視しつつ小競り合い程度の戦闘に落ち着くと予想されている。


「レングテックに行きます」


 帝国での生活も三か月近くなったある日、従者を集めてラーデ様が宣言した時、季節は夏真っ盛りの一月の終わりだった。

「今なら舟でレングテックに渡れるし、秋までなら氷に覆われた海をガレッド車で渡ることもできます。冬になれば海が吹雪いてしまって通行が困難になりますから、いい機会なのであちらの国にも渡りをつけてこいとの指示が出ました」


 公爵は仕事の鬼か。

 幸い、大事なく戦争は落ち着いたが、公爵家を出た時点ではそんな保証はなく、連邦の新兵器の前に、親子は今生の別れすら覚悟しているよな悲壮感があったというのに、戦争が終わった今、さらに離れようとしている。

 俺はお会いしたことはないが、ラーデ様の母親は王都にいたはずで、戦争が始まる一か月前から会っていないはず。

 通信はしているのだろうが、寂しくないのだろうか。

 それとも、国から離した方がいいと思われる理由が何かある、というのは考えすぎだろうか。


 異世界の色々な国に行けるのなら、俺としては嬉しいものだが、ニール達リスタードの人たちがどうしているのかも気になるところだ。民間人に被害はなかったと聞いているが。


「出発は明後日です。明日は休みにしますので、帝都を楽しみましょう。明日の夜はブラッド様が宴を開いてくださるそうです」

 従者も参加していいそうだ。各々の帝都で出来た知人も呼んでいいとのこと。

 俺以外の従者は貴族だし、当主様の意向で俺達も客人扱いなので、色々な出会いがあった。きっと楽しい会になるだろう。

「それと、テラードは開発室へ。ブラッド様も含めて、進捗状況を確認します」


 魔道具との融合になったので、俺はもうほとんど口を出せることがないが、当主様も来ると言うことは、一定の成果が出ているようだ。




 エンジンがある。

 なんと、武骨で大きいし形も悪いが、エンジンが再現されていた。


 その横でボラトスが目の下に隈をつくりながらでドヤ顔している。

「科学と魔道具の融合という発想は素晴らしい。というよりも、魔道具は魔素で動くものだったから、燃料に着目していなかったんだね。魔素貯蔵量の多いルビエトという鉱石を粉末にして、火薬と混ぜて調合してみたんだ。そして魔素と火に反応して爆発する性質を付与した。結果、とても燃焼効率のよい粉末ができた。ほんの少しの魔素と粉で大きな爆発を起こせる。あとは爆発を吸収して動力に変える性質の魔道具を制作したわけだ」


 先日見かけた、密閉状態でも火が燃え続ける現象だが、この世界では化学現象でも燃焼が起きるが、魔素でも燃焼が起きる。だから密閉状態で空気がなくなってからも、しばらくは燃え続ける。密閉した中の魔素がなくなれば火も消えるが、かなり長い時間燃え続けるらしい。


 単に魔素を動力にするだけでは大きなエネルギーは得られず、爆発を動力にするにしても大きな爆発を継続的に起こす方法がなかった。

 燃料の開発によってその二つを融合した、これまでにない新しい魔道具が誕生した歴史的発明だった。


「この密閉された燃料庫に粉末を入れる。今のところ、爆発する粉(フレ・エグル)と呼んでいるがね。燃焼部に粉を吹き出し、魔素を供給して点火する。点火すれば爆発が起こり、動力が発生してこの棒が回転する。燃焼部に供給する粉や魔素はほんの少しでいい。ほんの少しの魔素を調節すれば、出力も調整できる。これまでの魔道具と違い、かなりの出力を維持しても、周囲の魔素がなくなるまでに数日を要する計算だ。魔素は時間がたてば回復するから、つまりは魔素切れを起こす心配がない。大発明だよ!」


 興奮してなおも色々な説明をしてくるボラトス。

 実際、この世界ではかなりの現象が魔法で実現していたが、魔素の問題で長時間や大出力の稼働ができなかった。それを魔法や魔道具の改良でなんとかしようとしていたのだが、燃料という発想がなかった。

 燃えやすい物質なんかの認知はあったが、地球と違って魔素でなんでもできていたからこそ、効率的な発電、発熱などの『エネルギーを取り出す技術』が発展していなかったようだ。


 ボラトスの興奮は止まらない。フレ・エグルの開発、さらに粉の噴射と点火、魔素の供給、そしてその調節と、それらを高度に組み合わせる機構も魔道具で制作しているのだろうが、一体とした機械として完成させるのは大変だったはずだ。

 目の下の隈が物語っている。相当に無理をしてここまでの短期間でここまで完成させたのだ。

「あとは耐久試験などを重ねて、車輪や車体、サスペンションと組み合わせれば、自動車ができる。飛行機は分からないが、機関車とやらもそう遠い話ではない。まだまだ費用もかかるし、量産は難しいから実用化は数年から数十年はかかるだろうがね」


「素晴らしいことですわ!テラード、貴方のお陰です!」

 ラーデ様も興奮している。力強く、高速回転するエンジンの動力部分(今はまだ、ただの棒だが)を見れば無理もないかもしれない。

「しかも、素晴らしいのは発見だけではない。ルビエトはリスタードやアステリード王国の山で多く採れる鉱石だからね。そして火薬の原料になる植物は我が帝国の海岸で非常に多く生産できる。自動車や機関車が実用化されれば、フェイグテスを含めた三国は資源の輸出国として多大な富を得られるだろう」

「アンブリスでございましたか?あれは寒冷地方の海沿いなら大量に生産できますものね」

「そうだ。レングテックでは凍ってしまうし、アステリードの南の海では暖かすぎる」


 アステリードの南も南国といった感じではないが、それでも内陸の地形の差と、竜の力の影響もあって、大陸の北と南では結構な温度差があるらしい。

 そのため、恐らくヨーロッパより少し広い程度の広さの大陸だと思うが、生産される植物や鉱石に大きな違いがある。

 エヴェッサ山や大森林はまだまだ人が奥まで入れないでいるし、他の大陸はこの世界の移動手段では遠すぎる。

 いずれはさらに効率のよい鉱石や燃料になる物質が見つかるかもしれないが、自動車や機関車の実用化も連邦に先駆ければ、新しい時代は王国と帝国を中心に始まる。

 少なくともしばらくは地球で言う石油産出国のように、大陸の経済をリードできるだろう。

 もしかしたら俺は、この世界での時代の大きな移り変わりを体験できるのかもしれない。


 大きな希望と、それに伴う動乱への不安と、見えない未来に心が震えるようだった。

 それは皆思っているようで、当主様やガトーさんまで表情が明るい。

「明日は盛大な宴にしよう!」


「あ、そうでしたわ!テラード!」

「は、はい。ラ・アストラ」

「明日の休みはわたくしに付き合いなさい」

「かしこまりました。どちらへ行かれるのですか?」

(エンバラ)ですぐ近くの島に視察に向かいます。護衛は最小限。セレタ達も休みにしますので、そのつもりでいらして」

「かしこまりました」


 これまで、セレタさんやシャーレさん、あるいはグランテニアの使用人のいない状況で俺だけで身の周りのお世話をしたことなどないのだけれど。

 拒否権などないので了承したが、内心は冷や汗ダラダラだった。

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