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サバイバル異世界  作者: ノワール
第2章 魔道具と機械 ドラクレア帝国
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第24話 ヴィータ教会

「ここの教会は法王国の総本山に次ぐ大きさで、装飾も非常に評価が高いです。テラードさんはヴィータ教の信者って訳ではないでしょうけど、寄っていきませんか?」

「いいですよ。故郷でも古い教会や大きな教会は観光地でした」


 ヴィータ教の教会はどこでも入り口の横に巨大な女神像がある。大きなステンドグラスには天使が何体も描かれ、入り口は重厚な両開きの扉。屋根の上には巨大な鐘がある。なんとなく意匠も地球のキリスト教に似ている気がする。動物などにはあまり共通点はないのに、人間やこういった意匠は似ているというのは何故なのだろうか。

 中に入れば広いフロアに太い柱がいくつも立ち並び、上を見上げれば吹き抜けとなっており、鐘が見える。と、鐘がひとりでに鳴りだした。恐らく魔道具なのだろう。

 正面には白の聖女シャーリーの像があり、そのすぐ前に教壇。そこから放射線状に椅子が並んでおり、結構な数の信者が祈りを捧げていた。右手の指を揃えて心臓の位置にあて、左手は腹に添える。そして背筋を伸ばし、目を閉じ祈りを捧げるのだ。

 白の聖女像の横には、白の聖女の守護騎士である英雄ステイオンと、百年戦争を終わらせたグランデニアとアステリードそれぞれの始祖王、彼らと共に戦った英傑達の像が並んでいる。


 以前教会で教えられた教えは簡単に言うとこうだ。


 この世界の全ては大いなるヴィータ様がお創りになられた。

 まず空と大地を創り、次に川と海を創った。いろいろな動物を創り、それから最後に人を創った。

 そして守護竜を地に遣わし、自身は天界から見守っている。これが創世神話。


 それと、この世界で重要な神話の一つが、百年戦争における聖女シャーリーと英雄ステイオンの伝説だ。


 白の聖女は今から千五百年ほどの昔、人と亜人が争って百年に渡る大戦争をしていた時に女神様から遣わされ、守護騎士とともに二人の始祖王を導き、百年戦争を終わらせて、人と亜人の融和を果たしたとされる。

 といっても、その後も幾度となく人と亜人は戦争になったし、差別や偏見がなくなるまでは非常に長い時を要したらしいが。


「あら、テラード?」

 呼ばれて横を見ると、リーメ・マーシャがいた。

「リーメ・マーシャ!こちらに避難してきていたんですか?」

「いえ、私は戦争前にたまたまこちらの教会に出張に来ていたのです。あなたこそどうして」

「そうだったんですか。俺はライアルラーデ様と一緒にこっちに。リスタード教会の子供達は大丈夫でしょうかね」

「それは大丈夫でしょう。もう男手以外はほとんど避難しているはずです。多くは南の地方に避難していると思いますが、他国も含めて各地のヴィータ教会で庇護を受けられます」

「そういえば、たった一日で女性や子供はリスタードから避難できてましたね。手際が良すぎて驚きました」

「紅龍連邦は敵国の者を捕虜にしません。もし都が落ちれば待っているのは略奪と虐殺ですから」


 停戦から長い時が経っても、避難の段取りと訓練は欠かさなかったらしい。今リスタードに残っているのは軍関係者と男性の生産業関係者などばかり。王都も似たような状況だが、王都から南には連邦軍がいて逃げられないため、多くはフェイグテスの教会に避難している。今は国交があるため帝国にも多くの避難民がいる。

 こういうとき、教会は避難民を全て受け入れる。連邦はヴィータ教会ではないが、教会に敵対して法王国が出張ってきたり、帝都の教会を荒らして帝国まで敵に回せば連邦も戦力を分散することになる。

 恐らくは教会にまで手は出してこない。


「でも家や財産も仕事も残して避難しているわけですしね。早く戦争が終わらないと、どんどん生活の立て直しが大変になります。私も公爵家の領に色々置きっぱなしです」

「そうですね。教会もこういった際の臨時予算が常にありますが、長引けば財政状況は厳しくなるでしょう」


 幸い俺たちは結構な資金を持った上で避難してきたが、誰もがそうであるわけもない。


「帝国やグランテニア家と、その辺りの支援の話もしていましたよ」

「そうですか。では、後は女神さまのご寵愛を祈りましょう」


 リーメは聖女像に祈りを捧げた。俺とシャーレさんもそれに倣う。


「そういえば、何故祈るのは聖女様に対してで、女神さまは外におわすのですか?」


 ふと気になって質問してみた。以前いたリスタードの教会でも、ヴィータ様に祈りを捧げるときは聖女像に祈りを捧げていた。


「大いなる女神であるヴィータ様は常に世界の全てを見ております。我々が直接ヴィータ様に願いことをしてお手を煩わせてはいけません。ヴィータ様が我々に何かを伝える時は聖女様に神託が下されますし、我々の願いは聖女様にゆだねれば、必要な時にヴィータ様に届けてくださります。必要なければ聖女様と使者様がたがその手をお貸し下さります」

「なるほど。そういえば、今も現役の聖女様というのがいらっしゃるんですよね」

「ええ、基本的にはグレーイル法王国の教会本部にいらっしゃいます。何人かは帝国や王国にもいらっしゃいますよ。外遊や視察、慈善事業などお忙しくされてますので、なかなかお会いにはなれませんけどね」


 この世界では旅は簡単ではない。リスタードからここまでも、軍用のガレッドと公爵家の優秀なガレッド車で、十分な食料と金を持ち、ザスト隊長が水場を完全に把握していて、かつガレッドに食べさせる草に困らない草原が続いた旅だったが、それでも隊員達はガレッドの世話や管理でかなりの時間を取られていた。軍人である彼らがいなければもっと日数がかかっていたはずだ。


「大変な役目でしょうね」

「皆さん使命に燃えていらっしゃいますね。あまり無理はさせないようにしてますが、お止めする方が大変です」


 しばらくリーメ・マーシャと話した後、夕食を富裕層向けの店で摂り、グランテニア邸に戻った。部屋に戻る途中、セレタさんに呼び止められる。


「テラード、明日からはお嬢様のお世話と、グランテニアの開発部にも顔を出すようにしてね。随時意見が欲しいって。王都の開発に携わっていた者も既にこちらに向かっていて、数日後には到着するみたい」


 恐らくグランテニアの当主様と公爵で手配されていたのだろう。


「分かりました。今日はお休みをありがとうございました。でも、お嬢様のお世話って何をすればいいんですか?」

「とりあえずは私やシャーレの指示に従ってくれればいいよ。それにグランテニアの使用人の方達もいるから、そんなにはないし。まあ話相手くらいに考えてれば大丈夫」

「そ、そんなもんでいいんですかね・・・」


 夜は街で買ってきたカミェを一人で傾けて、早めに寝た。

 なんだかんだで観光はわくわくする。少しはしゃいでいたのかもしれない。


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