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サバイバル異世界  作者: ノワール
第2章 魔道具と機械 ドラクレア帝国
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第22話 連邦の迷い人

仕事が忙しくなり、あまり書き溜めもできませんでした。今後は更新が不定期になりがちだと思います

「やはり帝国の耳と言われるグランテニア。一筋縄では行きませんね」

 ザスト隊長が呟いた。

 グランテニアは帝国の諜報、情報を司る家だと聞いた。リスタードで隠されていたことを当然のように知っていたのだから、かなり遠方まで網があるのだろう。


「お嬢様、如何なさいますか」

 ガトーさんの問いかけに、ラーデ様は俺を見た後、考えるように俯いた。


 ややあって、もう一度俺を見て言った。

「テラード、あなたはどうしたいですか?」

「最もリスタード家にとって良い結果になるようにしたいと存じます。お世話になりましたので。とはいえ、待遇が落ちるようなことがないことを希望致しますが」

「先程の条件のままテラードを差し出す必要はないかと。最初から最大限の手札を切ってくるはずがない。まだ譲歩は引き出せます」

「そう・・・。そうですわね」

「派遣される軍の規模や圧力を大きくしてもらうのはもちろんですが、何より開発段階の品の情報を全て奪われるなどというのは論外です。帝国の技術なら、先をいかれてしまうかもしれません。いかに我らへの利益を確保するか・・・」

 確かにそうだ。どうせなら最大限役に立ちたい。

「どうせなら、引き出せるだけ譲歩を引き出して頂きたく存じます」


 ガトーさんとザスト隊長があれこれと話し合っていく。俺は分からないので口出しはせず、黙って聞いていた。

 しばらくはラーデ様も口を出さなかった。


「ふむ、やはり共同開発で権利は半分ずつまで要求出来れば最高ですかな。身柄を渡す分、現段階でこちらで開発している分については渡さないか、八割確保したい」

「領では市民を避難させたので、戦闘は膠着状態でも開発が止まっています。ある程度の権利を取られても、こちらで開発を進めた方が得策かもしれませんね」


 すると、ラーデ様が口を開いた。

「お待ちになってくださるかしら。前提を変えましょう。テラードの身柄はこちらへ確保するように」

「・・・そうなると、どう交渉してもかなりの権利を向こうに渡すことになります。そもそも、向こうの要求の最重要部分が身柄の引き渡しです。逆に言えばそれを容認しなければ、一切の交渉が出来ない可能性もありますが・・・」

「正確に言えば、彼らが欲しがっているのはテラード自身ではなく、新技術ですわ。情報提供と共同開発を確約すれば、身柄はこのままで交渉成立するかもしれません」

「しかし、かなり条件が悪くなりますが・・・」

「やはり、領の為とはいえ、領民であるテラードを差し出すのは納得できません。わたくし達、貴族が身を削るのが筋でしょう」

「ラ・アストラ。貴方様がそう仰るのであれば、従いますが・・・」


 ガトーさんやザスト隊長はそれ以上は何も言わず、結局、その方向で内容を詰めていった。

 もちろん俺としてはリスタードで働き続けたいが、大丈夫なのだろうか。





 そして夕食の時間になった。


「では、彼の身柄は引き渡せない、と?」

当主様は目を細めて確認した。口元には薄い笑み。

「共同での研究開発で合意して頂けませんか?彼自身が我が領での生活を望む限り、売るような真似はできません」

「ふむ・・・テラード君、理由を聞いても?」

 またも同席していた俺に質問が来た。

「この世界に来てから、ずっとよくしてもらっております。可能な限り、リスタードのお世話になりたいですし、お役に立てるならリスタードのお役に立ちたく存じます」

「君がこちらに来れば、戦争におけるリスタードの役に立てるわけだけど?」

「ライアルラーデ様がそれをお望みならば従いますが、ご指示がない限りは・・・」

「ふふふ、なるほど。いや、立派な忠誠心だ。尊重するよ」

「ありがとうございます」

「まぁレーテの頼みだ。実は最初から、出した要求をどこまで飲むかなんて、大して重要ではなかったのさ」

「・・・な!で、では何故」

「ラーデ。旦那様にはあなたの勉強がてら、交渉術を試してもらっていたのよ」

「勉強?」

「アステリードの貴族女性は家のことや社交だけでは務まりません。時には政治や執務に関わることもありますから」

「ま、初めてだろうから仕方ないけどね。最初の交渉ではろくな話はできていなかったし、この席では一人のために領の危険を排除する手段を遠ざける。正直、駄目駄目だね」

「・・・申し訳ありません」

「確かに彼の身柄を渡しては、未知なる開発から得られる利益は消失する。けれどね、敵の戦力をしっかりと見極めないと、利益以前に領や国が消失することもありえるよ。」

「・・・敵の戦力について何かご存知なのですか」

「諜報については帝国の右に出る国はない。王国は連邦の新兵器の恐ろしさを甘く見ている。そのまま我々が同じような戦力で連邦に攻め入ったとしたら、返り討ちになりかねないほどにね」

「そこまで・・・。では、援軍も難しいと?」

「いや。すぐに分かることだから教えてあげるけどね、我が帝国では既に銃の生産に着手している。連邦から秘密裏に入手した情報でね」

「そ、そこまで・・・」

「発案者にも接触したんだけどね、どうも連邦からかなり高待遇を受けて、日々楽しんでいる上、王国や我が国は悪しき国だと思い込んでいるようだ」

「やはり、迷い人なのですか?」

「どうやら大森林から命からがら抜け出して、フェイグテスの方に行ったらしい。あの辺りは貧しいから、他の国に行こうとして、たまたま連邦の方に行ったようだ」

「そして、その特殊な知識に目を付けられたわけですね」


 つまり俺の同郷ということだ。火縄銃なところを見ると、日本人かもしれない。会ってみたい気持ちもあるが、こうなれば敵同士だ。簡単にはいかないかもしれない。

 しかし、火薬を生成するなんて、理系の知識がかなりある人物ということだ。俺と違ってもっと色々な物を開発できるかもしれない。


「とはいえ、こちらも連邦ほどではないがある程度の数は確保できている。安心したまえよ、援軍が到着すれば連邦を押し返すこともできるだろう」

「ありがとうございます」


 ひとまず、ラーデ様はほっと息をついた。

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