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サバイバル異世界  作者: ノワール
第1章 新たな人生 アステリード王国
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第1話 気付いたら森の中

初投稿です。

7話のヒロイン登場までほとんど男だけ。

序盤はただの遭難です。

 ふと眼が覚めた時、俺こと寺戸誠司は落ち葉で埋もれたように、土の上に寝ていた。

 頭の中が覚醒していく。体を起こす。周りを見たら、あるのは木だけだった。


 森の中だ。


 どういうことだ?ハイキングや登山、アウトドアの趣味はない。そもそも山だの森だのに出掛けた覚えもない。

 いつものように仕事をして、昼休憩中に仮眠を取っていたはずだ。


 混乱したまま、とりあえず立ち上がり、歩き始める。


 誘拐?考えられるのは眠っている間に、あるいは薬などで眠りを深くされ、誰かに連れてこられたことだ。

 しかし、俺を誘拐する理由が思いつかない。政府要人でも金持ちの息子でもない。ただの二十八歳の一般人だ。ブサイクとは思わないが、取り立ててイケメンでもない。

 それに、手足を縛られてもいないし、監禁するならどこかの部屋だろう。森に放置するとは考えられない。

 殺すのが目的?それも、思い当たる恨みはないし、思いつかないだけだとしても、まだ生きていることがおかしくなる。


 スマホはなかった。財布もない。時計とハンカチ、小銭入れ。持ち物はそれだけだった。


 わけもわからないまま、草や枝葉をかき分けて進んでいく。

 スーツに革靴で森を歩くもんじゃない。動きにくいし、歩きにくい。何よりも蒸し暑い。

 上着を脱ぎ、形が崩れるなぁ、と思いながら腰に巻いて袖で縛りつけた。


 というか、どこの森だろう。富士の樹海とかだったら真面目に遭難だ。自宅や職場の近くに森なんてないし、どのくらい眠っていたのかもわからないから、どのくらいの距離を移動したのかもわからない。


 喉の渇きはないし、腹も減っていないが、腹時計が正確だなんて特技もない。植物を見ても地域なんて分からない。

 妙に見覚えのない草木が多いのが不安になる。もしかして自分の生活域から、相当離れたどこかなのだろうか。


 しばらく歩いたが、木々が途切れる様子もない。本格的に焦りを覚える。

 理由はわからないが、突如何の準備もなく遭難させられた、という実感が増していき、道具もなければアウトドアの趣味もない自分に、何日生きられるか。死ぬ前に森を脱出、あるいは救助が来るか。不安ばかりが増していく。

 空を見上げても木々ばかりで、空もあまり見えない。日が差しているが、あとどれくらいで暗くなるのだろう。この森に、熊か何かの危険な動物はいるのだろうか。何一つわからなかった。


 どれくらい歩いただろうか。俺は今日すぐに状況が変わる可能性を諦めた。

 いくら考えても、ドッキリと書かれたボードを持った誰かが出てくることはないと実感したし、こうなると食料と水、寝床を考えなければならない。


 何より水だ。立ち止まって耳を澄ませてみる。どこか遠くから水の音が聞こえてくるなんてことはなかった。


 木の実や草、キノコを探す。草木は青々と生い茂っているが、木の実は全然見当たらないし、どの草が食用化も分からない。キノコは見たことのない種類ばかりだった。


 虫や小動物も見覚えのない種ばかりだ。日本ではない可能性を考えてぞっとした。生まれも育ちも都会だ。自然に馴染みがないから知らないだけだ。そう言い聞かせた。


 段々と光が陰り、夜が近くなってくる。

 夜行性の猛獣がいたりしないだろうか。

 木の上で寝ることを考えたが、野生なら猿なんかも凶暴だろうか。


 サバンナで遭難したのなら、木の上に登るのは有効かもしれないが、密林では意味がないように思えた。結局、草木に隠れるように、落ち葉に潜り込むように、拾った木の枝で少し地面を掘って、寝床を作る。


 なんとなくハーブっぽい見た目の葉っぱをちぎり、ほんの少し食べる。しばらく経って、腹を壊さなければ食用ということにする。昔漫画で読んだやり方だった。


 完全に日が落ちる前に、上着を体の上に被って落ち葉に潜り込む。

 そして、とうとう夜が訪れた。時計を見ると、夜の七時を過ぎた頃だった。夏なのか熱帯地方なのか。ただ、やはり日本ではないようだ。春も終わる頃ではあったが、こんな時間に日の入りだったはずはない。


 暑いのは地域差や環境の違いかと思ったが、同じ日本では、ここまで日照時間に差はないだろう。

 水分をちゃんと取らないと、脱水症状が起きるかもしれない。


 あまりにも木々が多いと、星の光などろくに入ってこない。森の夜は、日本で普通に暮らしていたら出会ったことがないほどの真っ暗闇だった。ろくに動けない。多少見えたところで、夜の森を歩くのは危険だろうし、体力も温存しないといけない。


 既に手は傷だらけだったし、シャツには切れ目が入っていた。虫刺されで身体中が痒い。けれども、虫の音はうるさいし、どこか遠くから獣の遠吠えが聞こえたりもする。


 こんな状況で眠れるわけもなく、国をまたいでの移動なんて何日寝かされていたのか、どうやって飛行機に乗せられたのか。一体誰に、何のためにこんなことをされたのか、そんなことを考え続けた。

 もちろん予想がつくことなど何一つなかった。


 体は疲れていたが、夜の森林にたったひとり。怖くてなかなか寝付けず、何時間も恐怖と不安の中で夜を過ごした。

 冬の森じゃなかったことを幸運と思おう。それくらいしか、希望はなかった。

 腹は壊さなかったので、夕方食べた草を無理やり食べて、暗闇に震えるばかりの夜。眠りに落ちたのが何時ごろだったか、わからなかった。


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